「シニーが触ってもぼくが傷付けないように、慣らしたいんだけどどう思う?」
「え?」
普通に家に帰って普通に夕飯を食べて、お風呂も済ませて自由時間になった時。ウーゴが改めるように話を突然振ってくる。
「慣らしたい?」
一瞬何を言っているのか分からなかった。だって慣らしたいってどういうこと?ウーゴが怖いって思うのは心の問題だって聞かされたし……これは慣らしてどうこうなる問題なのかな?
「ウーゴから触れば大丈夫なら……それで別にいいんじゃない?」
そう。ウーゴは自分から触るのは大丈夫だから、ウーゴから触れば私に触れられるだろうし何も問題はない。それに慣らすってちょっと変な感じがする。まるで猫が苦手な人が触れるように頑張るみたいな……私って動物か何かなの?
私が無理はしなくていいんだよって言葉を投げればウーゴは少しだけ眉を寄せる。
「いいや、無理してるわけじゃあないんだ。」
そして視線を逸らしてから、咳払いをして自分の意志を話してくれた。
「どんな誰よりもきみとこう……触れ合いたいっていうか。特別だって体に教えたいんだ。シニーなら大丈夫だって。す、好きだから……」
「……」
目は逸れているけれど話の中身は凄く真っ直ぐだ。何ていうか可愛い……好きだからって言った後に耳が真っ赤になっている。私より年上のくせに、エスコートをする立場のはずなのに照れちゃって可愛い。つい引っ張りたくなっちゃうこの感じは昔と全然変わらない。
「じゃあ……握手からしてみよう。」
私も自分からウーゴに触れるなら嬉しいし、願ったり叶ったりだ。好きな時にぎゅっと抱きしめたいし、何なら頑丈な腹筋とか触りたい。下心満載だけれど怖がるフリとかして胸に飛び込むとかしてみたい。最終的に筋肉を触りたい。めちゃくちゃ筋肉触りたい。
私が目の前にウーゴの手を出すと、ウーゴは少し考えてからそろりそろりと手を差し出してくる。
「あ、ああ……」
頷きはするものの改まると恥ずかしいのか、パーじゃなくてグーで目の前に出してきて……ジャンケンじゃないけれど、私はパーでその手を握ってウーゴの指を撫でてみた。
こんなこと昔は当たり前みたいにしていたけれど、知らぬ間の事件のせいでこんな怖がるようになっちゃったなんて、今まで本当に辛かっただろうな……
「……ウーゴさ、」
ウーゴの手はゆっくりと解れていって私の手をしっかりと握る。これってウーゴから握っているのと変わらないのでは?って一瞬思うけれど、多分ウーゴからしたら大事なことなんだろうな。歩み寄ってくれたみたいに映って見えた。
「私から触っても、ウーゴがこうやって重ねるように触れてくれたらウーゴが触ってるのと一緒になると思うんだ。」
たとえ私から触ったってウーゴがしっかり触れてくれたら、それはもうウーゴに主導権は映っていると思う。
「私は一方的に触ったりしないから安心してね?」
触れ合うって想いが重なり合った時にしかしないだから、そんなに身構えなくたっていい。そう伝えたくて言うけれど、ウーゴの顔を見上げてみたら何か凄いことになっていた。
「ちょ、ちょ待てウーゴ。おい。」
凄く眉が寄っている。何でか知らないけれど痛みに耐えるような顔つきになっているし、額から汗が流れていてやばい。
「シニーは教授じゃないシニーは教授じゃないシニーは教授じゃない……」
しかも何かぶつぶつ言っていると思ったら呪詛みたいに同じことばっか言っているし……これはお話を聞いていない感じかな?いつの間にか肘が立ってアームレスリングが始まっちゃってるし!
「痛い痛い痛い!」
何でそうなった……何だこれ。しかもウーゴの力めちゃくちゃ強い。流石筋肉が付いているだけある。女の私じゃこれには勝てそうにない。抗ったら多分骨がやばい。砕ける。
諦めて力を抜いて、腕相撲にウーゴを勝たせてあげるとウーゴはハッとしたようで。私から素早く手を離すと両手を挙げて慌て始めた。
「シニーごめん!そんなつもりじゃあなかったんだ……何か走馬灯みたいにトラウマが甦って……」
走馬灯みたいにって何か違くない?ただトラウマが脳内で再生されちゃっただけだろうに……そんなに嫌なんだな、誰かから握られるの。
「まぁ……ゆっくり慣らしていこう。」
多分焦ってもしょうがないことだろうし、もしかしたら何かがきっかけで私が触っても大丈夫になるかもしれない。
まだ私達は始まったばかりなのだから、ゆっくりでいい。昔と違って時間もいっぱいある。慌てる必要なんてないんだよね。
「そ、そうだよな!早急すぎたよ、ごめん。」
ウーゴは気まずそうにそう言うと、深呼吸をしてから自分から私の手に触れてくる。手の甲を撫でてから指に指を絡めてきて、そしてその上から空いていた手も乗せてニッと笑ってきて……可愛い。可愛すぎる。ウーゴっていつもツンツンしていなかったっけ?打ち解けるとこんな風に笑ってくれるの?めちゃくちゃ可愛いよ…癒されちゃう。
可愛すぎて思わず私も空いている手をウーゴの手の上に乗せてしまう。乗せたら再びウーゴが呪詛を唱え始めるのも何か少し面白くて、面白がっちゃいけないって分かっているけれど触れて離してをちょっとだけ繰り返してみたら私の手を叩きながらぷりぷりと怒られた。
「もうォ〜!人で遊ぶんじゃあない!」
怒り方まで可愛くて最早どうしたらいいのか分からなかった。
carino
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