EX1


 プロポーズを受けてから当初向かう予定だった公園へと立ち寄って、教会の鐘が街中に鳴り響いたのを静かに聴いてから、私とウーゴは昔みたいに手を繋ぎながらゆっくりと私達の帰る。行きにどんよりとしていた私の気持ちも時間を置いたからか単純すぎるせいか、帰る頃にはすっかりと落ち着いて、もう泣くこともなく素直に笑える昔の私に戻ったみたいになっていた。

「シニーは今日からぼくのお嫁さんなんだな。」

 大切なものを握りしめるように私の手に指を絡めながら、どこかくすぐったそうにウーゴは笑う。

「何か変な感じ。」

 言葉にして「お嫁さん」って言われてみると何だかとても照れくさい。つい最近まで幼なじみで次の段階では恋人に変わって、そしてついにはお嫁さんって……まるでスピード出世でもしたみたい。平から幹部に上がって、そしてその更に上になったようなそんな感じ。その場合ボスはウーゴ?ボスっていうイメージが全くないけれど、家の中だけで言ったらそうなるよね……あのウーゴがボスってちょっと感慨深い。

「確かに変な感じだな。昔だったら絶対コイツとは絶対に分かり合えないって思うけど、今はこの子じゃなきゃ無理なんだって思ってる自分がいる。不思議でたまらないよ。」

 凄く聞いたら照れくさくなるようなことを平然とウーゴは話してくれる。最後の方だけを聞けば本当に照れちゃうし少しの気恥しさだって芽生えそうだけれど、最初の頃に感じてくれたらしい「コイツとは分かり合えない」っていう部分には若干腹が立つ。私ってばそんな悲しいことを思われていたの?
 でもまぁ、そんな分かり合えないって思っていたウーゴの気持ちを変えられたっていうのは少し誇らしい。離れていた分のブランクがあったのに、気持ちの差 だってあったのに、それでも距離を詰めていって、一気にウーゴに追いついた。そしてもうウーゴに向かって走らなくたって、ウーゴはいつもすぐ隣にいてくれる。壁も隙間もなくなってくれたことが何よりも嬉しい。胸がほくほくしてくる。

「……もう走らなくていいんだね。」

 走れないことには少しの寂しさはある。でも散々走り回ったし、終わってみれば満足っちゃあ満足だ。ウーゴがそこにいてくれるなら更に満足度も膨らむし、今まで走ってくれたこの足には最早感謝しか感じない。

「時間を気にせずこうやって歩くのも悪くないだろ?」
「うん、食べ歩きが出来たらもっと最高だよね。」
「シニーらしいな。」

 そんな冗談を言えばウーゴは笑ってかくれる。楽しそうって感じじゃなくて、どこか嬉しそうに私のことを見てくれて、私まで釣られて笑いそう。自分のことじゃないのに自分にいいことがあったみたいに笑ってくれるから、今まで後ろ向きになっていた自分が恥ずかしくなってきた。
 そうだよね……いろいろあったせいでいつもの自分らしい私を忘れそうになっていた。見失ったらいけないものを見失いかけるのは辛くてたまらない。もう二度と味わいたくない……これで終わりであってほしいって願う。

(もう大丈夫……)

 胸の中で言い聞かせる。たくさん落ち続けていた気持ちはもう沈む必要性はないし、ただこの先は上がるのみ。後ろが見られないくらいウーゴがこうやって私を引っ張ってくれるから、怖いものはもう何もない。ウーゴさえいてくれればもう大丈夫。そう信じようって決めた。

「着いたぁ〜……」

 空がオレンジ色に染まってきた頃に、ようやく私達は家へと辿り着いた。病み上がり……とは違う気がするけれど、ずっとリハビリ以外は安静に過ごしてきたせいか、少し歩き回っただけでクタクタだ。前よりも体力が落ちたみたいで、ちょっとでも長い時間歩けば足がガタガタになってしまう……おばあちゃんとかってこういう感じなのかな?

「先にどうぞ。」
「あ、ありがとう。」

 まだ若いのに老いる感覚を味わってしまっている最中にウーゴは家の扉を開けてくれていて、私はそのまま流れるように玄関へと入ってゆく。さり気ない紳士さというか優しさというか……ウーゴの気遣いは自然だから、変に気を遣わずにすんなりと受け入れてしまう。いつからこういう風に優しくしてくれたかなんて覚えてはいないけれど、女の子扱いをしてくれるのはやっぱり嬉しい。
 家の中に入って何となく辺りを見回してみる。いつもと変わらないこの家のはずなのだけれど、不思議なことにどこか新鮮に見えて不思議な感じがして足がその場で止まってしまう。気持ちが変わったからかな?廊下の床も扉の隙間から入ってくる太陽の光も宝石みたいに見えるんだ。まるで生まれ変わったみたいにキラキラと輝いているように私の目には映っている。
 ずっとこの家に住んでいるけれど、今までどこか借り物みたいな感覚で暮らしていた。住まわせてもらっているから家事とか頑張ろうって家中をパタパタと走り回ったりもしたけれど、それも今日でおしまい。これからここは二人で暮らしていく家になる。だから今までの意識を一変しよう。気持ちよく住めるように頑張って家事をしようっていう気持ちで頑張りたい。新しい始まりに、まるで新学期を迎えた時みたいに気持ちが引き締まるような、そんな懐かしい感じがして背筋が伸びた。

「シニー、」
「ん?」

 玄関の扉が閉まるのと同時にウーゴに後ろから名前を呼ばれる。

「なぁに?」

 体ごと後ろに振り返ってウーゴの方を見ながら訊ねる……のだけれど、振り返ったら間を置かずにウーゴは私の頬へと両手を伸ばしてきて、そのまま顔を私の顔に近付けてきた。

「おかえり。」

 凄い至近距離で囁くようにそう言われる。

「えっと……」

 つい一時間くらい前まではこの家やウーゴともお別れをしないとって思っていたせいか、そういう挨拶をされると込み上がるものもあってすぐには言葉を返せない。あと近すぎてちょっとだけ緊張して……少しだけ固まってしまって、固まりながらもしみじみとその優しい言葉をお腹を充たすように頭の中で噛み締めた。

(久しぶりに聞いた気がする。)

 不思議だな。この家に帰ってきておかえりって言われるのは凄く遠い昔のことのように感じる。退院をして帰ってきた時だってウーゴはただいまって言ってくれたはずなのに、全くと言っていいほど言ってくれたことを覚えていない……今日まで人の言葉を聞かないくらいに余裕がなかったってことなのかな?何だか情けなさと申し訳なさでいっぱいになってくる。

「ただい」

 息と息がぶつかるくらいの距離しかない。やっと言葉を呑み込んで、それを吐き出そうと至近距離で言葉を返そうと口を開く。

「……、」

 そして最後の言葉を言おうとした時だった。ウーゴはそれを言わせずそのまま磁石のように、ぴったりと吸い付くように私との隙間を埋めてきて、突然……いや、ちょっとそういう空気にはなっていたかもしれないけれど、私の口を自分の口で塞いで言葉とか気持ちとか、それら全て呑み込んでしまった。

(いきなりすぎる……)

 いきなり始まったキスはとにかく勢いがある。いつもなら最初は触れるだけのキスをしてくれるのに、今日はそれをすっ飛ばしていきなり荒々しくて深いキスだ。当たり前みたいにウーゴの舌が口の中に入ってきて、私の舌に久しぶりに触れてきて、味わうみたいに舐め回して好き放題に暴れていた。
 もうずっとこんなキスをしていないせいか、どうしたらいいのか分からない。病院でのキスは触れるだけでそれ以上も特になかった。当たり前みたいに毎日されていた頃もあまり慣れはしなかったけれど、久しぶりだしやり方を忘れかけているしで……初めてされた時みたいに頭の中はごちゃごちゃだし、心臓なんてウーゴの舌みたいにばくばくに暴れ回っていて大変だ。完全にされるがままだし受け止めるので精一杯すぎる。

「ん、ぅ……」

 口の中がとにかくくすぐったい。背筋がゾワゾワして思わずウーゴの背中に腕を回して堪えようと必死になる。穴だらけの服を力いっぱいに掴んで何とか立ったままでいようと頑張って、酸素欲しさに無意識なまま口を大きく開けてしまうと更にウーゴは深くに舌をねじ込んでくるからたまったもんじゃない。
 離してほしい、でもやめないでほしい。正反対な言葉が浮かんでは消えてを繰り返す。酸素が欲しい、でも奪われたい……矛盾だらけでごちゃごちゃな頭の中だけれど、ぐるぐるとそんなことばかり考えてしまうけれど、最終的に思った気持ちは好きにしてくれっていう雑な諦めだった。

(待たせちゃったんだもんな……)

 これは多分ウーゴが爆発をした結果だ。私が勝手に気落ちしている間、ずっと我慢をしてくれていたのだと思う。こういうことをしたくてもずっと自分を抑えてくれていた……から今こんな風にめちゃくちゃに愛を注いでくれているんじゃないだろうか?そんな気がしてきたら、ウーゴがまるでお預けを食らった犬がやっとご馳走にありつけてがっついているようにしか見えなくて、めちゃくちゃ可愛くてたまらない。っていうか最早ウーゴのキスは犬がぺろぺろ舐めてくるやつに近いかもしれない……想像しちゃうと少しだけ気持ちに余裕が生まれてくる。

「……はっ、ぁ……」

 何十秒、何分もの間中ずっとずっとウーゴはキスを続けていた。やっと離れた頃にはウーゴも息が上がっていたようで、私のことを見下ろしながら肩で息をしている。しばらくぼーっと見つめ合いながら休むようにゆっくりと床に座り込むけれど、特に何も始まらない。

「……」

 好き合ってキスをするようになった。特別に最初から好きだったわけじゃなくて、出会ってめちゃくちゃにウーゴのことを振り回してきた頃の私はまさかウーゴとこういうことをする仲になるとは思わなかったし、ましてやプロポーズをされるだなんて思いもしなかったと思う。

「ウーゴ……」

 目の前にいるウーゴの頬に手を回して名前を呟く。指でふにふに触ってから横にゆっくりと撫でて、昔と変わらない柔らかさだなとかちょっと思い始めて、そういう細かいところまで好きだなぁって……ウーゴへ感じる愛しさには終わりがない。ウーゴの言う通りだ。
 手が届くところに好きな人がいるって凄く恵まれたことなんじゃないかな?これからずっとそんな毎日が続くっていうのは奇跡に近いことだなって、自分を取り戻した今めいっぱいに感じる。
 この人を幸せにしたいっていう気持ちが溢れてくるのは多分、愛しているからこそなんだよね?

「私、絶対ウーゴのこと幸せにする。」

 ウーゴが隣にいてくれれば、手を繋いでくれたり一緒に眠ってくれるなら。それだけで私は幸せでいられるからいつも胸は暖かい。でもウーゴはいっぱい働くしいつも忙しいから大変で……だから私が拠り所になれたらいいなぁって……照れくさいからそれを大雑把に伝える。

「だから遠慮なくこれからも甘えてほしいな……今まで以上にもっと、こういう風に体いっぱいで受け止めるよ。」

 いつまでもキスには慣れないけれど、でも感じるままの幸せは受け止める自信はある。もっとしてほしいって思うんだもん。何度も読む雑誌は飽きやすいけれど、キスには飽きる気配はしないし、その先も何度されたって多分大丈夫。触れてくれるのはウーゴだけだから両手いっぱいに受け止められるよ。

「だから……えっと、あの……」

 空気が空気だし込み上がるウーゴへの愛情からかパッと久しぶりに触れ合う姿を思い浮かべるのだけれど……考えておいてその光景が頭に再生をされると顔が更に熱くなるくらいに恥ずかしくなってしまう。そもそも私からこういう話を振るのはちょっと違うような、でもそういう気分っていうか、初めてした時みたいなそういう気分っていうか……やっぱり恥ずかしくて言い難い。
 ウーゴの頬にある手を引っ込めようと腕を動かして、視線までウーゴから離れそうになる。

「凄く大胆な告白だな。」

 でも手を離せば目の前にいるウーゴに突然手を握られて、それが叶わなくなった代わりに指が絡み合って。あっという間にウーゴの大きい手に私の小さな手は包まれてしまい、意識は再びウーゴの方へと戻っていった。

「しかもぼくのよりカッコいいとかさ……シニーにはやっぱ敵わないや、昔から。」
「わ……っ!」

 ウーゴはそう言いながら、そのまま私の腕を引っ張って自分に倒れ込む私を受け止めて……すっぽりと私のことを腕の中へと埋め込めば、くすくすと声を出して笑い始める。一度は離れた隙間はこれっぽっちも残されていないし、私達を隔てているものは着ている服だけ。薄いそれは意味もなくウーゴの体温も心臓の音も筒抜けにしてくれて、丸ごと全てを与えてくれているみたいだなって考えたらちょっとの嬉しさが生まれてきた。

「カッコいい、かなぁ?」

 それにしてもだけれど……ただ単純にウーゴに対して思うことを言ったまでなのに、カッコいいって言われるのは少し複雑だった。ウーゴのプロポーズの方が真っ直ぐで素敵だし、私のはただの欲望丸出しでかっこよさの欠片すら感じない。思わず訊ねてしまうくらい、ちょっと自分では分からない判定をされてモヤモヤする。

「カッコいいよ、ヒーローみたいで。」

 女の子に向かってヒーローとか酷くないですか?って言い返しそうになるけれど、言葉をすぐに呑み込んで、代わりに顔に気持ちが出てきてしまって、自然っていうか勝手っていうか、眉間にシワが寄っていく感じが舞い込んでくる。自分の顔はウーゴの胸にあるから見られる心配はないけれど、多分見たら吹き出される。変な顔だって言われる。シバくぞ。

(ヒーローかぁ…)

 ヒーローはカッコよすぎる。昔の私だったらそんな風に言われたらめちゃくちゃに喜んだと思うんだ。でも今の私はちょっと違うらしくて、お姫様とかそういう乙女チックな感じに思われたいとかちっとも似合わないことを考えている私がいたりして、ちょっと恥ずかしい。キャラじゃないってジョルノがいたら笑われそう……ウーゴには違う意味で笑われそうだから、この気持ちは永久に隠しておきたいな。からかわれたらちょっと立ち直れないかもしれない。

「じゃあ今日はいっぱい甘えるよ。」

 頭の中が騒がしくなってきた頃にウーゴはピッタリだった体を少しだけ離してきて、見合うように座り直したら私をゆっくりと、温まった気持ちのままに玄関の床へと押し倒していく。ウーゴも同じ気持ちになっていたみたいで嬉しいけれど、綺麗か綺麗じゃないとか衛生面を考え始めたら少し不安になりそう……でもこうやってウーゴが甘え始めたら考えていたこともかき消されてしまう。そのまますぐに倒れるように、覆い被さってきたウーゴの方に意識は持っていかれてしまって、細かい抵抗思考はなくなって、変な心配は全部柔らかくほぐれて溶けていった。

「久しぶりだし加減が出来るか分からないけどさ……それでも受け止めてくれるか?」

 自分のネクタイを緩めながら私の上着の中にウーゴは手を突っ込んできて、私もこんな知らない男の人みたいなウーゴを見るのは久しぶりで……ここが玄関じゃなくてリビングだったとしても変わらずウーゴはしようとするんだろうなって思う。スイッチが入ったらもうここがどこであれ関係ない。ウーゴは結構そういう環境を大事にする人だと思っていたけれど、我慢が出来ないと獣みたいなところもあるっていうか……ウーゴは獰猛だってミスタさんが言っていたのを思い出して、そうだなって、確かになって心の中で頷いてしまう。
 床でもいい。ちょっと背中が痛いけれど、多分始まったら気にしなくなると思う。ウーゴとしたら気持ちよさでとろとろに溶けきってしまう自信がある。

「うん……」

 私は言葉のままにウーゴへ両腕を伸ばす。小さく頷きながら返事を返して、決まった覚悟を肯定するように受け入れ体勢に入った。

「いっぱい受け止めるよ。」

 大丈夫。これは怖いことじゃないし、不幸にするものじゃないってちゃんと知っている。ウーゴとしか感じられない気持ちがいっぱい詰まった行為だってちゃんと理解しているから、もう怖いことなんて何もない。目玉をくり抜かれた恐怖と比べたらちっとも怖くない……ムードぶち壊しそうだから言わないけれどね!

「来て、ウーゴ……」

 とにかくスイッチは押されてしまった。ウーゴが欲しくてしょうがない。触れてほしいしもっとキスをされたいし、めちゃくちゃにされたい。
 私はウーゴの私で、ウーゴは私のウーゴ。そう約束をしたからこれからは遠慮なくウーゴでいっぱいになりにいける。
 私が呼ぶとまたウーゴの顔が近付いてくる。一度ゆっくりと位置を確かめるように唇に唇を落とされて、狙いが定まれば啄むようなキスをしてくれた。さっきよりは優しいけれど、さっきよりもどこか濃さがあって、甘さを感じれば口の中が幸せでいっぱいだ。少しだけ慎重に探るように肌を撫でる手が愛しくてたまらない……ウーゴの背中に腕を回して少し貪欲に自分の方へと誘い込めてみたら、ウーゴの口から気持ちよさそうな小さな声が漏れてくる。凄く可愛いし声だけで胸が充たされそう……好き以外の感想が全く出てこないくらい、私はウーゴに酔っているみたいだ。

(犬とは違うかも……?)

 さっきまでは可愛さから犬だと思っていたけれど、でもそれとはちょっと違う。ウーゴは理性が利かないと少しだけ野性的になるっていうか……目を閉じたまま受け止めていると、肉に食らいつく猛獣みたいな少しの鋭さを感じてしまう。
 多分ウーゴは犬じゃなくて、例えるなら……オオカミかな?遠くにいても綺麗で目立つような感じ。でも近付いたらどこまでも逃がしてくれないような、そんなハンターまっしぐらみたいな存在。

(食べられたらどうしよう……)

 唇を軽くかじられて、首元まで頭を下ろして舐めたり吸ったりをするウーゴを感じながら、ふと前に人間を美味しくする方法を思い出す。最近は肉よりも野菜とか胃に優しいものばかり食べていた気がしてくると、ちょっとだけ不安が芽生え始めた。美味しくなるまで待っていたとしたらとんでもない人だよなぁ……
 ……でも、なんだよね。ウーゴになら食べられてもいいかなってちょっと思ってしまう。

「シニー……シニストラ……」

 この人と生きられるなら、どんな形であれずっとそばにいられるなら、何だっていいかもしれない。

「ウー、ゴ……」

 この人の体の一部に溶け込むのも悪くないかもしれない……狂気じみた愛かもしれないけれど、そのくらいにウーゴの幸せに繋がるならってちょっぴり思う私がいる。

(美味しい人になりたいな……)

 ぽつぽつと産まれ始めた星を瞼で感じながら、胸元まで落ちてきたウーゴの生暖かい舌を感じながら、少し難しい願望を望んでしまった。


 貴方の一部になれたこと、私の一部になってくれたこと。何もかもが愛しくてたまらなくてしょうがない。
 
(走ってきてよかった。)

 ウーゴを見つけたあの日の私に花束を贈りたいくらい、感謝で胸がいっぱいになった。




出会ってくれてありがとう

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