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2017ジェイソンお誕生日おめでとうSS1


「誕生日おめでとう、ジェイソン」

「たんじょうびおめでとう! あかいの!」

「ありがとな、アルテミス。ビザロ」

 テーブルに乗るのはいつもより少し豪華で量の多い食事と小さなワンホールケーキ。年齢を示すロウソクは、真面目にやると数が多いので5本ほど立てて誤魔化した。
 8月16日はジェイソン・トッドの誕生日だ。ジェイソンに誕生日を祝って貰うつもりは毛頭無かったのだが、ビザロに誕生日がいつか聞かれ答えたところそういう流れになってしまった。
 コリーやロイと一緒にいた時も、こんな風に祝いの言葉をかけてもらったものだ。もっともその時の料理はもっと粗雑で、デリバリーのピザやチキンと一緒にロイが適当に選んで買ってきたケーキを並べる程度だったが。
 
 食事を楽しむジェイソンの携帯にメールが届いたのはその数分後だった。発信元はコリー。文章は単純明快。

 "HAPPY BIRTHDAY JASON"

 今日の朝届いた差出人不明のバースデイカードは、おそらくロイからのものだろう。

 "HAPPY BIRTHDAY JAYBIRD"

 なんてメッセージを送ってくる人間はひとりしか知らない。
 メールに短く礼を返して、ジェイソンはもう一度アルテミスとビザロに笑顔を向けた。

 ◇
 
 8月冒頭の3週間、ジェイソンはゴッサムに寄りつかない。ゴッサムには良い思い出も悪い思い出も溢れているからだ。誕生日という特定の日は否応なくその日に関わる記憶を思い出させる。
 アルフレッドなどはウェイン邸に顔を見せてほしがる素振りをみせるが、いくらアルフの頼みでも聞けるわけはない。
 なので彼は8月になるとセーフハウスに引きこもる。あるいはゴッサムではなく別の場所で仕事を見つけた。特に16日は意識してゴッサムと距離を取る。
 それでも毎年なんやかんやで誰かから祝ってもらう。不思議なものだ。
 穏やかな気分でベッドに横たわるジェイソンの耳に硬質な音がした。窓のほうからだ。同時に携帯電話がメールの着信を知らせる。先にメールを確認して、それから窓のカーテンを開けた。

「やあ、littlewing!」

「なにやってんだテメェ」

 黒髪の男が上からぶら下がっている。ヒーロースーツに包まれた腕が窓をノックしていた。黒の生地に青でエンブレムを描いたスーツだ。ブルードヘイブンの守護天使、ナイトウィングことディック・グレイソン。
 初代ボーイワンダーはジェイソンの顔をみて嬉しそうに笑う。弟が窓を開けてやると、彼は両腕を伸ばしてヴィジランテを抱擁した。

「誕生日おめでとう! 今日中に言いたかったんだ、よかった!」

「テメェそれ言うためにわざわざこんなところまで来やがったのか」

「お前はこの時期ゴッサムに近寄らないからね」

 鍛えられた、細い腕がジェイソンの腰を撫でていく。青い目が熱の籠もった視線で男の顔を眺め、弟の唇を舐めた。

「生まれてきて、今ここにいてくれてありがとう。誕生日プレゼントは僕でいいだろ?」

「拒否権ねぇよな、それ」

「でも、好きだろ? よく欲しがるもんな」

「覚えてねぇよ」

「素直になる頃にはいつも意識がトびかけてるからかな? セクシーで好きだけどね」

「喧嘩売りにきたのか?」

「どっちかっていうとプロレスごっこしにきた」

「お前セリフのチョイス最悪」

 ディックがジェイソンの肩を押す。レッドフードは相手の望み通り後方に倒れてやった。背中がベッドに沈み、彼の肩をディックの腕が押さえつける。もう片方の手が服をたくし上げてきたので、ジェイソンも兄の背中に手を回してニヤリと笑った。

「まあいいや。生きてるって実感させてくれよ? dicky-bird」

 ディックはもう一度ジェイソンに口付けると、飢えた獣を思わせる淫靡な笑みを浮かべ低く囁く。

As you wish仰せのままに

 開け放ったカーテンから差し込む月光が、ふたつの影の重なる様を静かに見つめていた。

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美しくなんて死ねると思うな