着付指南「つまり僕たちは中世日本にタイムスリップしてしまったんだよ!」 「な、なんだってー」 ディックの茶番としか言えないリアクションにジェイソンが猿芝居を返したところ、ティムとダミアンが胡乱げな視線を投げかけてきた。 そんな目で見られても、ディックが言った通りの状況なのだから仕方がない。 原因はアーカムアサイラムでゴリラ・グロッドが行っていた実験だと思われる。そのため、実験に利用されたヴィランたちも仲良く中世日本にやってきていた。ベインにデスストロークにポイズンアイビーにペンギンにトゥーフェイスにジョーカー。頭が痛くなるような名だたる面々である。 帰る方法はわからず、原因に心当たりはあれど、どういう原理なのかはやはりまったくわからなかった。 また、現在地である中世日本はいわゆる戦国時代真っ只中のようなのだが、詳しい情勢はディックにもジェイソンにもダミアンにも、四人の中で最も知識が豊富であろうティムにもほとんどわからない。テンショウとかケイチョウとか言われたところで、ざっと頭に叩き込んだ(世界史の一部としての)日本史知識に直結するわけがないのだ。西暦で答えてくれ。今はキリストが生まれてから何年後だ。 そんな右も左も上も下もわからないうえ、なぜかバットマンだけが不在という絶体絶命の大ピンチで彼らを助けてくれたのは、蝙蝠衆と名乗る"ニンジャ"の一族。なんでも救世主についての古い伝承があるらしく、四人の義父が蝙蝠のコスチュームを着たヒーロー(蝙蝠衆的にはニンジャ)だと知るやいなや、アルフレッドとキャットウーマンも含めて手厚く保護してくれたのだった。 彼らの隠れ里に案内された駒鳥四人は、当然ながら現代で身につけていた服だけを着るわけにはいかず、ニンジャが使うコスチュームを支給してもらうことになる。ただし常日頃からコスチュームを身につけてはいられない。結局作戦行動時以外はどうしても別の服で過ごさなければならなかった。皆が苦戦するなか(アルフレッドは頑なに和装を拒否した)早々に着付けをマスターしたのはジェイソンだ。 着付けは、初見ではかなり難しそうに見えるものの、基本的にはバスローブに似た着方だと思って構わないだろう。衣服としての機能を有するのが大きな違いだが、原理は同じだ。体を布で包んで紐で括る。 ティムもダミアンも想像以上に覚えが早く(おそらくそれぞれ事前知識があったのだろう)早々に着付けをマスターして里での生活に溶け込んでいたのだが、問題は長男のディックだ。 「ジェイソン、帯の締め方がよくわからない」 と宣い、次男が屋敷にいる時を見計らってはひょっこりと顔を出して着付けをしてくれと言い出す始末。別にどうしても和装で過ごさなければいけないというわけではないので(アルフレッドが良い例だ)布を貰って早々に洋服を何着か(アルフレッドが)拵えたのだが、本人たっての希望によりジェイソンが簡単な指導をすることになってしまった。 嫌な予感がする、とは胸の中だけにしまっておきつつ、上手く断りたいジェイソンである。 しかし相手の方が何枚か上手で、結局指南依頼の翌日にはディックの前で和服を着てみせる流れになっていた。 「ふざけんなよ、マジで」 と呟いても、答えてくれる人間は誰もいない。 蝙蝠衆が用意してくれた里の屋敷。 ディックの部屋として使われている部屋は玄関の真裏に位置しており、深緑に囲まれた露地と小さな茶室に面した静かな場所だ。 太陽に向かって長く伸びた竹藪が日陰をつくり、縁側から吹き込んでくる風は穏やかで微かに季節の薫りを纏う。日差しや風が常に木々の隙間をぬって差し込んでくるため、季節を肌で感じながらも温度変化の不便さとは無縁という、ある種理想の立地であった。 ただし日があまり差し込まないため、夕暮れ時ともなるとすぐ明かりをつける必要がある。季節問わず午後四時を回れば、六芒星を模した組み子細工の行燈が部屋をうっすらと照らし始めるのだ。 ジェイソンがディックの部屋を訪問したのは夕食を終えた午後七時過ぎなので、当然ながらすでに照明が仕事をしている時刻だった。 間接照明の柔らかい光が部屋をぼんやりと照らし、闇に沈んだ深緑が襖の間からすこしだけ覗いている。なかなかに趣味の良い風景だ。照明の足もとは六芒星の影ができていて目にも楽しい。 本当は六芒星ではなく、"春椿"という花をモチーフにした意匠らしいのだが、あの赤い花と木組みの六芒星がどうやって結びつくのか、ジェイソンにはとんと検討がつかなかった。 「おいディッキー、準備できてるか」 声をかけると、正座で部屋に待機していたディックが顔をあげる。作戦行動中はドミノマスクで隠された輪郭が、和紙越しの蝋燭に照らされていた。濃い影の落ちる部屋で、青空のように澄んだ瞳がいやに目立っている。洗練された彫刻のような顔は腹が立つほど整っており、緩やかな弧を描いた唇すら薄暗い部屋では造り物めいて見えた。 「できてるぞ。悪いな、付き合わせて」 「そう思うなら今日一日で覚えろ。長襦袢は長着と基本同じだから省略すんぞ」 肩を竦めてみせたディックの動作が、今まで人工物めいていた造形に途端生命の息吹きを吹き込む。ジェイソンは短い嘆息の後、まず身につけていた帯と腰紐をといた。床に落ちた布がとぐろを巻く。左右の襟を持って前を開いて見せると、赤い長襦袢が行燈の明かりに照らされた。黒い着物は薄暗がりに同化してよく見えないだろう。手招きすると、ディックが正座の体勢から立ち上がり、興味深げにジェイソンの様子を覗き込んでくる。 青い目にじっとりと見つめられながら、ジェイソンは両手に持った襟をひらひらと振って強調して見せた。 「前もいったけど、着物はカッチリしたバスローブだと思え。このまま俺から見て右の襟を体に合わせて、左の襟も合わせる。大体腰骨のあたりだな。ヘソの拳一つ分下ぐらい。襟が首の後ろにつくようにしろよ。そうしたら腰紐で仮留めする。二巻きしたら結ぶ」 ジェイソンの指が腰紐をすくい、体に糸を巻き付けていく。右の親指が縄を絡げてきつく結んだ。結び目は右寄りになるよう意識する。紐の両端を持って左右逆に捻った後、あまった部分を胴体に密着した部分へ押し込んだ。 今まで黙って見ていたディックが、腰紐の部分を指でなぞる。節の目立つ人差し指が結び目を引っかけ、着物との間に小さな隙間を作った。 「けっこうきつめに結ぶんだな」 「着崩れるからやめろ」 言われて素直に指を離すあたり、教わっているのだという自覚はあるらしい。すこし不満げな顔をしたのが大層気に入らないが、ジェイソンは無視することにした。口論すると話が長くなる。 ディックはそんな彼の気持ちなどおかまいなしに、畳の上にあった角帯を拾い上げていた。 「帯が一番難しいだろ」 「いま説明すっから待ってろ。貸せ」 ディックが素直に帯を手渡す。手が触れあった瞬間、男の指がジェイソンの手の甲をなで上げていったが、あえて無視した。反応すると調子に乗る。 「帯の片方だけ半分に折って細くする。だいたい四十センチか五十センチくらい」 「うん」 「折った方は手で持ったまま、折ってない方を腰紐の上に巻き付けろ」 「これも二回?」 ディックの手が、腰に巻き付いた帯をなぞった。布の上から触られる感触がどうにもこそばゆい。一瞬だけ目を細めたジェイソンは、極力反応しないよう平静を保ち 「一巻きしたら折ったほうを帯の上にのっけて二回くらい巻く」 と短く答えた。 一回ごとに帯が緩まないよう軽く引っ張って整えてから、余った分の布を半分の長さになるよう二つ折りにする。 「これ、折る時は裏同士を合わせろよ」 「うん」 二つ折りにした方を、細い方の帯にくぐらせ結ぶ。細いほうを下に向けて強く引くと帯がしっかり結べるのであまり着崩れないのだ。 「で、細いほうが下向くから、これを右上に持ってくる。太い方をその下にくぐらせて結んだら貝の口だ。前で結んでから、帯を回して後ろに持ってくる」 「ふーん」 「お前わかったのかよ」 軽く睨み付けてやると、長兄は笑顔で首を傾げて見せた。蝋燭の明かりで彫りの深さがやたらと強調されている。睫毛の影が目立っていた。オレンジ色の光に照らされた肌が目に優しい。 「襟ってどっちが上なのかわからなくなるんだよな」 「右手が服の下に入れられりゃいいんだよ」 「なるほど。やってみていい?」 「あ?」 ジェイソンが応とも否とも言わないうちに、ディックが素早く男の背後に回り込む。さすがナイトウイングと言える素早さだが、活かすところが完全に間違っていた。彼はジェイソンが抵抗する間もなく、襟の合わせに腕を突っ込んで感心したような声をだす。 「あぁ、アルファベットのYだと思えばいいんだな?」 「そうだけど、俺の服に手ぇつっこむ必要あったか?」 「体感しないと覚えない」 そんなに物わかりの悪い男だっただろうか。口に出す前に、長襦袢の下に割って入った手が胸の先端に触れ、偶然を装った悪質な指の腹が小豆粒を擦った。予期せぬ刺激が甘くジェイソンの全身を周り、一瞬ビクリと腰が跳ねる。動いた尻はディックの腹に一瞬押しつけられ、背後で長兄が笑う気配。 羞恥で顔の熱くなったジェイソンは、いつのまにかピッタリと密着しているディックに向かって声を荒げた。 「おい!」 「脱ぐところも見たいな」 「おいって!」 左手が帯に触れ、ついさっき整えた貝の口をあっという間にほどいてしまった。シュルリと布がこすれる音。細長い布が蛇のとぐろようにジェイソンの足もとへ落ちる。腰紐の結び口は、人差し指が下からすくい上げて跳ね上げた。 弾かれて床に落ちる白布を見てディックが笑う。ジェイソンの耳元で低く甘ったるい声がした。 「ブラみたいにとれた 」首筋に息がかかり、産毛が逆立つ。鼓膜を直接震わせた声がジェイソンの背筋も震わせた。体から力が抜け、なんとか発した声はひどく弱々しい。 「てめぇ……、いい加減にしろよ、まじで……」 自分で自分が情けなくなるほど迫力のない声。耳元でディックの呼吸が聞こえるたび、自分の呼吸も乱れていく。長男の右手は相変わらずジェイソンの胸筋を弄んでおり、人差し指が充血した先端をつまみ上げて軽く引っ掻く。体全体が熱くなり、頭に靄がかかったと思っているうちに長着を脱がされた。赤い長襦袢もだらりと前が開いてしまっている。ディックの手が弟の肩を撫でると、黒の上に赤が落ちて混ざり合った。 兄がジェイソンの首すじに顔を埋め、唇を肌に押しつけながら声を出す。 「そういえば下着のつけかたもよくわからない」 「嘘つけ!」 ただ布まきつけるだけじゃねぇか! とジェイソンが叫ぶ前に、臀部の上にある結び目をグイと引っ張られた。布が肌に食い込んで、足の付け根がゾワリと粟立つ。つま先立ちでバランスを取っているあいだに、ディックの手が背中の中心をなで上げ、褌の結び目に滑り込んだ。 「あっ、おいっ、やめろっ」 ジェイソンの静止も虚しく、彼の肌の上を布が滑る。するすると下着の締め付けがゆるくなっていった。 ディックの手を押さえつけようともがいたジェイソンは、しかし胸筋を下から掬い上げるように揉みしだかれ、腕に上手く力が入らず空を掴む。 弛緩してだらしなく開いた口から自分でも信じられないほど甘ったるい声が漏れた。 「あっ やめっ やめろグレイソンっ ばかぁ 」「へぇ、やめて欲しそうに聞こえないなぁ」 服をはぎ取られたジェイソンの乳首は既に充血し、ディックが右手で摘まみ上げるとグミのような弾力がある。尖った木の実に強い刺激を与えられたせいで、男の体がビクビクと跳ね上がった。胸の先端から腰に至る電撃が全身を巡る痺れに変わり、頭と下半身に血流を集中させる。 「ひっ あっ あ あっ 」「お前は本当に胸が弱いな。女の子みたいで可愛いよ」 「べっ、別に よわ、弱くなんかぁ 」「強がってるとこも健気で可愛い 」だから嫌な予感がしたんだ、とジェイソンは胸中で吐き捨てる。すでに蕩けきった体は抵抗出来る余力などなく、ディックに足をひっかけられて簡単に畳の上に転がってしまった。頬には編み込まれたい草の凹凸を感じ、鼻の奥に緑の匂いが広がっていく。目の前で、組み子細工の春椿が畳に映し出されていた。 視線を上方に映すと、青空のように澄み切った目に情欲を色濃く映したディックの顔がある。微かに頬を紅潮させ、額はうっすらと汗ばんでいた。呼吸は荒く、口元には今から獲物を食らわんとする獣の笑みを浮かべている。ほんのりと色づいた唇が猫なで声でジェイソンを嬲った。 「床に組み敷かれてるお前って、最高にエロいよな」 ジェイソンの背筋にゾクゾクと得体の知れない感覚が這い上がってくる。脳が痺れた。なにも考えられない。外気に晒された背筋をゆっくりと人差し指でなぞられ、腹がピクリと引き攣った。くすぐったくて心地よくて、触られた部分からじんわりと熱が広がっていく。 僅かに開いた襖の隙間から虫の鳴き声が聞こえてきた。少し冷えた風が火照った体に心地よい。 頭上でゴソゴソと音がして、ディックが服を脱いでいるのがわかった。顔のすぐ横に、彼の着ていた青い上着が落ちてくる。足にもサラリと布が触れ、後方でパサリと音がした。おそらくズボンも脱いだのだろう。 あっというまに全裸になったディックが、組み敷いたジェイソンの背に体をピタリと密着させる。ジェイソンの赤くなった耳を軽く食み、外耳を舌でなぞりながら鼓膜に直接声を吹き込んだ。 「こういうエキゾチックな部屋でヤるの、落ち着かなくて外でヤッてるみたいで興奮する 」ジェイソンの臀丘に、ディックの熱い塊が押しつけられる。グイグイと前後に動く大きな蛇が、固い肉のくぼみを嬲るようにうねった。いきりたつ熱の動きに合わせ、ジェイソンも無意識に腰を揺らし同調する。やわらかい刺激がディックの背筋を走り抜けていき、肌がゾワゾワと快感に粟立った。いつもは強い意思を宿す薄氷色の目が、今は淫靡な熱に犯されディックを見ている。うっすらと浮かんだ涙が蜜のように思えて、彼はつるりとした弟の肌に舌を這わせた。少し塩気を含んだ味が口内に広がり、それがジェイソンの体から分泌された涙だと思うと、腹の底から際限なく熱が沸き上がってくる。 ジェイソンの体は涙を舐められた瞬間スイッチが入ったように小刻みに震え、い草の上にポタポタと唾液が垂れた。弛緩し、口内から飛び出した舌先が畳を微かになで上げる。四つん這いになった弟の、犬のような無様な姿がディックの興奮をさらに煽った。 大腿を打ち振るわせるジェイソンも、おそらく自分の体勢と状況に興奮しているのだろう。男らしい眉が情けなく垂れ下がり、切れ長の目はいまにもこぼれ落ちそうなほど蕩けきっている。組み敷かれた男の呼吸はどんどん荒くなり、鼻にかかるような甘ったるい吐息が鈴虫の声と混ざり合う。 畳の上で全裸になった弟を見下ろし、ディックは愛おしそうに目を細めた。 「あぁ、全部脱がさなきゃよかった……お前があんな隙だらけの服着てくれることなんかめったにないのに……あんな脱がしやすそうなバスローブみたいな構造、誘ってるとしか思えないよ」 乱れに乱れて、白い肌を赤く染めて、黒と赤の布に包まれたジェイソンはさぞイヤラシイだろう。想像するだけで体全体が熱くなり、呼吸がどんどん荒くなってくる。 そんなディックの様子を見て、ジェイソンもつられるように興奮していった。臀部の窪みを嬲る熱い塊に、自分の肉をこすりつけるようにして艶めかしく体を動かしている。 しかし口は健気にもまだ反抗するつもりのようで、蕩けきった発情声がディックの耳に心地よく響いた。 「さそっ て、ないぃ こっ、のっ へんたいっ はなせよ はなせぇ ばかぁ 」「腰振りながらよくそんなセリフが吐けるな。そもそも僕の目の前でストリップショー始めたお前が悪くない?」 背中に密着した肌がじんわりと汗をかいている。すいつくように重なり合った肢体の熱は、お互いの腰が動くたび強さを増していった。ディックの両手がジェイソンの胸筋を鷲づかみ、膨らんだ突起に指を這わせる。愛らしいビー玉を引っ掻いては押し潰し、最後に強く弾くと、汗ばんだ背筋が緊張してエビ反った。 「あっ あぁあああぁッ![]() ![]() 」悩ましげな喘ぎ声の後、ジェイソンの体ががっくりと床に崩れ落ちる。肢体から立ち上る微かな汗の芳香がディックの鼻腔を擽った。い草のにおいと混ざりあったおかげで、今まで感じた事のない芳しさだ。 ディックは思わず弟の脱力した背中を舐めあげる。無防備な肌にチュウ、と音を立てて吸い付いた。何度も何度も吸い付いているうちに、ポツリポツリと赤い花びらが散っていく。自分の付けた跡に再び舌を這わせ、微かに痙攣している肢体を存分に堪能している最中、畳に押しつけられたジェイソンが小さく呻いた。 「……ス、トリップショーに したのはっ テメェだろっ…… 」息も絶え絶え、鼻にかかるような声は、どれだけ乱暴な言葉を使ったところで恐ろしくもなんともない。甘えられているとしか思えず、ディックは上機嫌で男の汗ばんだ首筋に歯を立てた。 予告なしの攻撃に驚いたのだろう。ジェイソンの体がビクリと跳ね上がる。 「ふぅっ 」「だって黒い服に赤い下着とか、絶対誘ってるだろ」 「やらしい言い方すんなぁ ばかぁ 」「言い方が可愛すぎ。そんなに犯して欲しいのか?」 首筋から耳へ舌を這わせ、外耳を軽く咬んでから耳の中に舌を入れると、ジェイソンの体が小さく震えた。 「ちがっ あっ あぁっ ばかぁ ちげぇしっ![]() あっ あっ 」弟の手が畳に爪を立てる。ガリ、と小さな音がした。 ディックの腹に押しつけられた尻は白い山脈のような存在感がある。じっとりと汗ばんでいるせいか、それともジェイソンが腰を跳ね上げているせいか、ゆらゆらと揺らめいているわりに腹筋のあたりから吸い付いて離れない。これで誘っていないと言われても説得力にかけると言うものだ。 固い肉の割れ目に充血した硬直を宛がう。馬の首のようにいななく巨根はすでに先走りで濡れており、肌同士がこすれ合うたびヌルヌルと粘りけのある感触がした。吸い付いてくる尻の感触で浮遊感に似たもどかしい快感を伴う。いっそこのまま、ヒクヒクと可愛らしく蠢く菊花を貫いてしまいたかったが、解してもいない蕾を貫くのは流石に哀れである。 いくら弟が淫靡に腰を振り、物欲しげに喘いでいようとも、最低限の理性まで吹き飛ばせばその瞬間ジャーマンスープレックスを決められるのは目に見えているし、一週間半径五メートル以内に接近禁止と言われかねない。 かといって中世日本にラブローションなどあろうはずもなく、ディックが取り出したのは刀の手入れ用にと蝙蝠衆が用意してくれた丁子油であった。 丁子とはすなわちクローブであり、非常に強い香りを持つハーブの一種だ。香辛料として利用されることも多いが、精油には殺菌・防腐作用があり、微弱ながら麻酔・鎮痛作用もある。 独特の刺激的な香りは、仄かに甘さも伴っており、すこしシナモンに似ていた。百里香という別名に相応しく強い芳香を放ち、手のひらに油を広げた瞬間、部屋がクローブの香りに満たされる。 ジェイソンの鼻も異変に気づいたらしく、蕩けきった薄氷色が微かにディックを見上げた。 何処かで嗅いだことがあると思っているのかもしれない。香辛料として比較的メジャーな代物であるから、たとえばカレーや肉料理などにもよく使われるし、虫除けの効果もある。 弟と視線を絡ませたディックはニコリと笑い、ジェイソンの色づいた唇に吸い付いて火照った口内に言葉を無理矢理押し込んだ。 「後ろ、今解してやるからな」 油まみれの右手がリンゴのような尻の窪みに這い寄り、ぬるりとした指で溝をなで回す。ヒクつく後口は指先が触れる度歓喜に震え、粘膜ごとディックに吸い付いてくるようだ。 ジェイソンは 「んぅ 」と悩ましげに呻いた後、鍛え抜かれた体をさもたまらなさそうに揺らめかせていた。 蝋燭に照らされた室内で、肌についた傷がうっすらと見えている。背中の右上から左下にかけて走る傷痕は、おそらく彼がロビンだった時のもの。バットケイブを訪れた時、健康的な肌に真っ白な包帯を巻き付けていた小さい弟の姿をディックは忘れたことがない。 勝ち気な薄氷色の、まだ幼さが残る大きな瞳は、痛いだろうにディックに対して決して弱音を吐かなかった。パトロールを少し休めというブルースに対しても決してうんと言わず、結局パトロールを一日も休まず、傷を無理矢理治してしまった。 ――僕のリトルウイング、もっと甘えてくれてもいいのに そんな思いを込めて、薄い傷痕に舌を這わせる。ぬらぬらと光る唾液がジェイソンの肌に張り付いたが、それだけでは満足できず、ディックは結局肩口に強く吸い付いて何個目かの花弁を散らした。 熱の籠もった菊花を丁子油まみれの指で優しく解しながら、背中に噛みついて次々と跡を残していく。稀に痛みを訴えるよう弟の体が蠢いたが、抵抗はないのでそのまま行為を続けた。まだ足りないと言わんばかりに、背中のあらゆる場所へ口付けを落としていく。 汗ばんだ肌を舐めあげながら油を手のひらに追加した。刺激的な甘い香りが強くなる。 淫花に押し込んだ中指を折り曲げると、ふたつのゴムボールが床から跳ね上がった。 「あっ あぁあっ![]() ![]() ![]() 」ジェイソンの声はもはや甲高く擦れており、泣き声のようにか細い。 指を入れられた当初は痛みのような違和感があったのだが、既に何度か経験のあるジェイソンの菊芯はオイルで解された瞬間すぐに蕩けきり、弛緩した括約筋が貪欲にディックの指を飲み込もうとする。特大の水蜜桃を兄に押しつけると、畳に丁子油がパタパタと落ちた。 覚えのある匂いだ。最初もそう思った。こんなに強い匂いではないが、弱いものなら日頃から嗅いでいた気がする。遠い昔、一度死ぬ前に―― 途端、脳裏で思い出が弾けて体に力がこもる。 「あっ あぁあ ま、まって まって、でぃっきー、あ、あぁあああっ!!」後口に力が籠もり、立ち上がろうとして力を込めた腕が汗で滑った。ディックが首を傾げる気配がする。 彼は気づかないのだろうか。これは、この甘い匂いは。 「これっ、このっ、におい、やっ、やだっ、やっ」 この匂いは、アルフレッドが作るクッキーの香りだ。 まだロビンだった頃、パトロールが終わったあとに、ブルースと一緒に笑いながら食べた。 まだ、ただの兄弟だった頃、ディックが家に帰って来たとき、自分の分だというジェイソンをからかいながら彼が摘まんだ。 生き返ったあと、まだ距離を測りかねている家族の距離を縮めてくれた。 ブルースと、ディックと、ティムと、ダミアンと、アルフレッドとの思い出の匂いだ。 家族の香り。 なのに、そんな香りの中でみっともなく喘ぎながら兄と絡み合って情欲まみれの夜を過ごしている。 恥ずかしい、恥ずかしい恥ずかしい恥ずかしい恥ずかしい。 今までとは違う熱が顔に集中してくる。頭にかかっていた靄が晴れて、目から涙が出てきた。正気付いた体は突然現実に引き戻され、なのに体の中心はまだ熱が籠もっている。肛肉は未だに快感を訴え、熱がじんわりと身体中に広がっていくような錯覚に陥った。 こんなに穏やかな思い出の匂いに包まれているのに、それでも体は卑俗な快楽に飲まれて、狭穴がもっと欲しいと兄の指を締め付けている。 恥ずかしい、恥ずかしい、恥ずかしい! 自分の浅ましさが嫌になる。 ディックの指が後口の中で蠢き、正気に戻ったはずの体を強い悦楽が貫いた。 「はっ あぁああああぁっ![]() ![]() ![]() 」情けない悲鳴がジェイソンの意思とは関係なく喉を震わせ、腰がガクガクと震える。目の前に真っ白な火花が散り、クラクラするジェイソンの脳に直接言い聞かせる様に、ディックが耳元へ唇を押しつけた。 「恥ずかしい?」 もはやプライドもなにもなく必死になって頷く。この匂いの中で乱れるのは嫌だ。家族の顔を思い出してしまう。 「やめてほしい?」 ディックの左手が、床に散らばった帯を掴んだ。ジェイソンの目は一瞬だけ左右におよぎ、体の熱を逃すよう内膝を擦り合わせる。充血した彼の牡肉は緩やかに立ち上がり涙をこぼしていた。 この熱を持てあまし、ひとりで慰めることができるだろうか。 そもそもジェイソンの体は、もはや海綿体を刺激すればどうにかなるようなつくりではない。ヒクつく腸孔にディックの固い肉を穿たれて初めて、昂ぶった体が落ち着くのだ。 弟の沈黙をディックは見逃さなかった。 「クローブってアルフレッドがクッキーに少し混ぜるんだよね。ちょっと思い出すなぁ」 頭上から振ってきた言葉を聞いてジェイソンの顔がカッと熱くなる。気づいていてなぜディックは平然としていられるのだろう。 抵抗しようと振り回した腕は、あっというまに帯で縛られ、頭の上にまとめられてしまった。 頬が床にたたき付けられ、い草の香りがする。 背中に冷たい感触がして、甘い丁子油が背中全体に広がっていった。 視線を背後に向けると、暗がりの中蝋燭に照らされたディックが淫靡な笑顔を浮かべている。 「上書きしようか、お前の思い出。この香りがしたら僕を思い出せるように」 大丈夫、家族との思い出は他にもたくさんあるから。 囁かれたジェイソンがなにか返す間もなく、ほぐれた肛華が太いものに貫かれる。 脳天を突き抜けるような衝撃とともに、ジェイソンの背骨をビリビリと電流が走った。体が浮遊してしまうような感覚と、全ての神経が菊座に集まっていく感覚が同時に襲ってくる。 腕は拘束されているため自由にできず、腰を押さえられて逃げ場もないまま剛直に貫かれたジェイソンは、内蔵を圧迫する鉾の存在感に喉を鳴らした。 「あ゛ うあぁあああっ あ゛ う゛あ゛ぁあッ 」意味をなさない悲鳴が部屋中に響き渡る。拘束されたジェイソンの腕を、兄の手が押さえつけた。彼の手は丁子油で濡れていて、密着した肌が体温と油でじんわりと温かくなっていく。 ジェイソンの体にふりかけられた油が、密着したディックの体にも張り付いて、動くたびヌチャヌチャと卑猥な音を立てていた。体が熱い。お互いの熱が、油を通じて混ざり合って溶け合って、密着して、ひとつの生き物のように距離がなくなっていく。溶けていく。 ディックがジェイソンの耳に噛みついた。痛みを感じると同時に、ジェイソンの芯にじんわりとした悦楽が生まれる。 もっと。もっと。もっと。もっと。 「ひぁっ ひゃぁあああああっ あ゛っ あ゛ あ゛ぁ゛ うぐぅう゛うぅ゛ぅっ![]() ![]() ![]() おっ ぁっ やっ やば おまっ あっ でかっ あっ![]() ![]() ![]() ぁっ![]() ![]() ![]() 」髪を振り乱し、悦びを叫ぶジェイソンの頭上でディックが嗤った。 「さっきまで恥ずかしがってたのに、もう腰振ってる 」彼の声も熱に浮かされており、纏わり付くような低い声がジェイソンの鼓膜まで犯した。脳が痺れる。ディックのこの声はだめだ。聞くとなにも考えられなくなってしまう。尻朶に腰を打ちつけられ、内臓を抉られるような衝撃とともに汗と油が混ざり合う。ジェイソンの体からポタポタと雫が落ちて、畳に染みが出来ていた。本来排泄に使うはずの筒はディックのものを受け入れるのに馴れきって、肉の楔を離すまいと内壁が絡みついてくる。オイルにまみれた野菊が膨張しきった上反りを締め上げ射精を促していた。 組み敷かれ、手を拘束されたままのジェイソンは、ディックに言われるまでもなく尻を高く突き上げて、兄の律動にあわせ自らも卑猥に腰を振る。鍛えられた肉体が皮膚の薄くなった傷痕を中心に朱色を描き、舌を突き出した口が唾液を垂れ流しながら雌犬のように淫靡な鳴き声をあげていた。 ディックの巨竿を刺激する肛肉はまるで生きている洞窟のようだ。纏わり付いて締め付けて硬直が吐き出す青白い液を待っている。繋がった先に心臓が移動してきたような感覚がディックを襲った。一突きするごとに立ちくらみのような愉楽が弾け、体の中の血流がドクンと大きく波打つ。絡みつく熱い肉壁を感じながらディックが低く喘いだ。 「あっ あぁっ ジェイ ジェイソン 僕のリトルウイング 可愛い 可愛いよ ジェイ 可愛い 可愛い 可愛い 」「あっ んっ んっ ぐぅっ っるせ るせぇよ あ あぁっ んあぁああ![]() すごっ すごっ、い あっ んぐっ ぐぅっ![]() ![]() ![]() 」ディックの手が弟の顎を掴んだ。無理矢理振り向かせ、少し開いた唇を奪って舌を割り入れる。歯列をなぞって上あごをなで上げると、ジェイソンの腰がビクビクと激しく痙攣し始めた。弟の舌がディックの舌を追いかけ、ざらついた表面に舌を這わせる。お互いの舌を絡め合って温度を確かめると、ジェイソンが兄の舌を甘噛みし、強く吸い上げた。するとディックの方もジェイソンの唇を甘噛みし、絡め取った舌を強く吸い上げてくる。 「ぐっ んぐっ んん゛っ 」「ぁっ あぐっ あぁ゛ んっ 」もはや漏れ聞こえる声がどちらのものかもわからない。丁子油がグチャグチャと音を立てて肌と肌の間を跳ね回り、嬌艶な音がふたりの鼓膜と思考を犯していく。流れているのはどちらの汗だろうか。 体の芯を貫くつもりでディックが腰をたたき付ける度、ふたりの体を浮遊感が支配する。内腑を抉られたジェイソンは目玉をグルリと回転させ、瞳孔だけをあらぬ方向へ向けたまま全身を細かくわななかせた。ゆるやかに立ち上がった牡茎がひとりでに精水を吐き出し、畳を汚す。 途端暗渠が万力のような力でもってディックを締め付け、今までとは比べものにならない快感が男の脳天を突き抜けた。 「ぐっ、あ゛っ ジェイっ あ゛っ イク……!!」ディックの腰がガクガクと打ち震え、全身が甘い痺れに飲み込まれる。霞がかった脳で強く長く弟の内腑を抉った男は、亀頭を締め付けられて堪らず喜悦が堰を切った。 「あっ あぁああああっ おれ、おれも おれもまたいく いくっ あっ あぁあっ 」「あっ いく も、出る ジェイっ 」ディックの低い喘ぎ声とともに大きく脈打った茎胴から、濃い白濁液がジェイソンの体内にぶちまけられる。組み敷かれた肢体が妖しくくねり、喉から絞り出すような声とともに体を弓のごとくしならせた。 「イクっ いくいくいくっ うしろで うしろでいっちゃっ![]() ![]() ![]() あっ ふぁあああぁあああああああぁんっ![]() ![]() ![]() 」度重なる律動と最後の慟哭により、オイルまみれの腕から帯が外れた。えび反りになったままビクビクと全身の筋肉を痙攣させていたジェイソンは、薄氷色の目でぼんやりと虚空を見つめている。しばらくはそのまま途切れ途切れに小さな嬌声を発していたのだが、直腸に浸透してしまった飛沫の気配で正気を取り戻したらしい。 ジェイソンが未だ上手く力の入らない腕で無理矢理体を起こし、密着した体同士が引き剥がされる。そのせいでまだ暗渠に蹲っていたディックの剛直がズルリと外に這い出してきた。 大腿を伝う白に何を思ったか、弟が恨めしそうにディックを睨む。 「なんにもつけねぇで中だししやがって」 吐き出した声は擦れており、平時の迫力などもはやない。ディックは素知らぬ顔で肩を竦め、笑顔で弟の頬を撫でた。 「だってコンドームないんだからしょうがないだろ」 「勃たなくなったらどうすんだよ」 「そうしたらお前が寂しがるな」 「ばか」 ディックが弟に顔を近づけ、少し腫れてしまった唇に吸い付く。うっとりと目を細めたジェイソンは兄の背中に手を回し、オイルにまみれた体をディックの足に乗せた。まだゆるやかに充血する兄の芯柱に自分の獣を擦りつけると、感極まった様子でディックの首に強くすがりつき、長い足で腰に絡みつく。 しばらくはそうして口付けに夢中になっていたふたりであったが、ディックの穂先が再び昂ぶってきたのを察知したのか、ジェイソンが兄から顔を離す。最後に恋人の下唇を強く吸い上げた彼は、切れ長の薄氷でもって上目遣いに兄を見やった。甘えるような動作が相手の弱点だと知っているのだ、この小悪魔は。 腹の奥に燻る火に燃料が投下され、ディックの体温が急に上昇する。目の前の獲物にむしゃぶりつきたい衝動を抑え、彼はあえて弟の鼻先に口付けを落としてみせた。 「どうしてほしい?」 ジェイソンの首すじが赤く染まり、唾液でぬらぬらと光る唇が、不機嫌そうにへの字を描く。眉間の皺を親指で押し拡げてやると、やがて少年のような顔つきでクスクスと笑い、再びディックの首へすがりつく。 今までさんざん耳を責められたお返しとばかり、彼は兄の外耳道に舌をねじ込み、言葉を発した。 「もういっかい 」もはやアイスブルーの瞳にプライドも羞恥もありはしない。眦の奥にあるのは濃艶な情欲だけで、ディックの腰に絡みつく足に力がこもり、引き締まった臀丘が硬い雄に擦りつけられた。 娼婦もかくやといわんばかりの凄艶な笑みを前にして、ディックは脳に残っていた理性が音を立てて焼き切れていくのを感じる。目の前にあるご馳走に「どうぞめしあがれ」と言われたら、誰だって我慢がバカらしくなるに決まっているだろう。 弟に頬をそっと撫でられた瞬間、ディックは考えることを放棄した。 膝立ちになった男は鍛えられた弟の腰を乱暴に掴み、自分の元へ引き寄せる。「んぁっ 」と甘ったるい声が聞こえ、ジェイソンの背中が畳に打ちつけられた。赤い痕の散る肩を押さえつけ、未だ脈打つ浅ましい隧道へ再び異物を叩き込む。「んうぅぅううぅぅっ きたぁあああぁああああ![]() ![]() ![]() 」男の体がバネ仕掛けの人形のように跳ね上がり、涎まみれの紅唇が甘ったるく下劣なうめき声を響かせる。 再び膨張した質量を受け入れた彼の腸管は、中に溜まっていた射液と丁子油を愛液のごとく滴らせ生き物のように収縮した。ディックに抱え込まれた足は櫂のようにパタパタと、律動に併せて情けなく揺れる。体全体をつかって弟を飲み込もうとするかのように、ディックの体がジェイソンに覆い被さった。 兄の顔をみて嬉しそうに笑ったジェイソンがディックの背に手を回す。喜悦に飲まれた弟の顔を間近に眺めたディックは、一心不乱に腰を動かしながら恋人の唇に噛みついた。 舌を絡ませながら油と汗と唾液と、精液まみれの体を突き合わせ、どこが体の境界なのかわからなくなるほど密着したふたりの手が、お互いの律動する体を這い回る。 ジェイソンの手がディックの胸に触れると、充血したサクランボに人差し指をひっかけた。ディックの動くリズムが一瞬乱れ、そのせいでジェイソンの中が予期せぬ形で抉られる。 「あっ ![]() 」「んぐっ ![]() ![]() ![]() 」お互い獣のようなうめき声を上げながら、気が触れたように体を叩きつけあい、涎を零して涙を滲ませ、一心不乱に食い合う姿は狂気さえ感じられた。 もはや暴力にも似た長兄の衝動がジェイソンを貫き続けている。 卑猥な喘ぎ声が弟の口から漏れるたび、興奮がディックの視界を真っ赤に染めた。彼の脳裏で散る火花は体の中心で火柱となって男の肌をあわ立てる。 弟が背中に爪を立ててきた。 小さな痛みは巨大な快楽のうねりに押し流され、むしろ興奮を増長させる意味合いしか持たない。 本能が求めるまま肉洞を穿ち続け、腰の動きを早めるとともにジェイソンが裸体を小刻みに痙攣させはじめた。 「あっあっ いいっ きもちいっ あっ あっ すげぇっ いいっ いっ りっ リチャード リチャード リチャードぉっ![]() ![]() ![]() 」めったに呼ばないファーストネームを連呼して、朱色に染まった体が反り上がる。同時に、内壁が音をたてそうなほどの勢いで締まり、名前を呼ばれたことも相まってディックの脳と芯を焼き切った。 「ジェイっ ジェイソンッ あっ、あぁあああっ 」「はぁあああああぁあああああっ ![]() ![]() ![]() 」ふたり分の絶叫とともに、ディックの海綿体が弟の内部へ淫欲を吐き出した。 ジェイソンは体が浮遊するような感覚に包まれながら忘我の世界に飛び込んでいく。魂の抜けたような表情で視線をさ迷わせた後、「あ…… あ ぁ…… 」と小さく啼いた。脱力した体はディックの下でしばし細かい痙攣を繰り返したが、やがて恍惚の余韻を楽しみながら上体を起こす。「ふ、ふふっ リチャードぉ![]() 」そうして鍛えられた体に不釣り合いな甘ったるい声を吐き出したかと思えば、ディックの首すじにすがりついたまま寄りかかり、兄の体を押し倒した。 「どうしたんだ、リトルウイング?」 熱っぽい声でディックが尋ねるも、返答は色づいた唇を湿らせる物欲しそうな舌なめずり。逆光に彩られた弟の、あまりの艶やかさにディックは全身の産毛が逆立つのを感じた。 繋がったままの局部が再び熱を持ち始める。ジェイソンもそれを察知したらしく、凄艶な笑みを浮かべたまま兄の上にまたがり、ゆっくりと腰を上下に動かし始めた。 「ふっ んっ ぁっ あぁっ すげぇっ いいっ いいっ きもちっ きもちいっ あぁんっ あっ あぁっ りちゃーど りちゃーど りちゃーど りちゃーどぉ![]() ![]() ![]() 」天井を見上げて喘ぐ姿は無防備で、我を忘れた狂人のようでもあり、それ故ひどく美しかった。今この瞬間がもっとも幸せだと言いたげな笑みは汗と油にまみれ、弛緩した口の端からは唾液が零れている。部屋中が丁子の甘い匂いと、ディックとジェイソンが吐き出した精の匂いに満ちていた。 何度も腰を跳ね上げ楽しげに喘ぐ弟の胸元、充血した突起ごと胸筋をわし掴むと、悲鳴のようなよがり声がディックの鼓膜をつんざいた。 「ひぃいいいぃぃいっ ![]() ![]() ![]() まっ た イクゥウウゥウゥっ![]() ![]() ![]() 」緩やかに立ち上がった弟の杵が小さく震え、ディックの腹筋に熱水を吐き散らす。幹自体への刺激をまったく受けないまま射精に至った体はしばらく痙攣を続けていたが、情欲にまみれた瞳がぐるりと回転し、ディックを見据える。 一度緩やかになったジェイソンの腰が、再び激しく動き始めた。ディックは自分の体が、結合部分からジェイソンに吸い込まれるような感覚を覚える。精を吐き出してしまいたい衝動を抑え込み、体をくの字に曲げて弟を見た。 「んっ ジェイっ はげしっ ちょっと あ゛ まっ、まって おまえっ さっき いっ いったろっ 」グチャグチャと水音が響いている。汗と丁子と精の香りが鼻をつき、ディックが苦しげに顔を歪めた。気を抜くとすべて吐き出してしまいそうになる。 兄の腹の上で飛び跳ねるジェイソンは、無邪気な笑みを汗まみれの顔に浮かべ、ディックの苦しげな顔を見て嬉しそうに目を細めた。 「んっ んんっ![]() やだっ うしろっ まだっ うしろっ うしろでっ あとっ いっかいっ いっかい![]() いくっ![]() から いっしょっ いっしょにっ![]() りちゃーどっ おれとっ おれと いっしょにっ![]() いっしょ にぃっ りちゃーどぉっ![]() ![]() ![]() 」甘い声で言われてしまえば逆らう術はない。淫壁にうずくまる楔が強く脈打ち、一瞬の閃光がディックの体内を駆け巡る。痙攣した体が穂先から溶け出していき、全身が陶酔感の翻弄され中空に投げ出されるような感覚になる。やがて三回目の絶頂とともに弟の中へ激流を放つと、ディックの上にまたがっていた弟が一瞬苦悶の表情を浮かべた。 「あ゛ぁああ゛ああ゛ぁあ゛んっ ![]() ![]() ![]() 」短く悲鳴をあげたジェイソンが目を剥いて腰の動きを止める。脱力した体全体がひきつけを起こしたかのように痙攣し、そのままディックの上に落ちてきた。 肩で息をする弟の疲れ切った体を受け止め、ディックは穏やかな気分で目を閉じる。 汗ばんだ体を抱きしめていると、性交とは違った温かい心地よさに満たされた。まだ自分の上で放心している弟を見やり、部屋中に散らかした着物だけでも片付けておこうと手を伸ばす。 ディックの動きに気づいたのか、うっすら目を開けたジェイソンが兄の足に自分の足を絡ませた。 恋人の可愛らしい動きを感じ、ディックは思わず口に緩やかな笑みを浮かべる。 「なんだよ、まだ足りないのか?」 「ちげぇ、ばぁか」 ジェイソンの舌はまだうまく回らないらしく、甘ったるい余韻を感じさせる声音がディックの耳朶をうった。 微笑ましく思って弟の頭を撫でると、彼は穏やかに笑みを浮かべ、ディックの胸元に頬をすり寄せてくる。兄の頬に軽い口付けを落としたジェイソンが、いたずらっぽい笑みを浮かべて首を傾げた。 「いきなり発情しやがって、変態野郎」 「後半はお前のほうがスゴかっただろ」 今度はディックが弟の鼻先に口付ける。そのまま首すじに顔を埋め、丁子と精液と汗の香りを鼻腔に思い切り吸い込んだ。湿った肌に歯を立てると、耳元でからかうような声がする。 「着付けちゃんと覚えたんだろうな?」 「大丈夫、大丈夫」 へぇー? というジェイソンの声は楽しそうだが、どこか疑わしそうな色を含んでいた。口元に笑みを浮かべたまま、胡乱げな視線を向ける弟に対し、ディックが満面の笑みを浮かべる。 「脱がし方は完璧に覚えた!」 直後、全裸のディックが夜の庭に放り投げられたのだった。 [しおりを挟む] 目次 戻る |