感覚

「全員乗ったか。お前らくれぐれも問題は起こすな、起こすなら監督と行く時にしろよ。では出発」
「「「「「しゅっぱーつ」」」」」

 合宿の引率は担任だった。ユルい音頭にゆっくりと動きだすバス。今日から男バス一、二年は合宿だ。

「ど、どうしよ……酔い止め忘れてた」
「吐く時は俺に言え、指を突っ込む。瀬戸、席を変わろう」
「康くんの優しさ? は有難いけど、そんなの他人に頼めないし頼まないしそもそも吐かない方向で行きたい……」
「……康次郎のそれは優しさじゃないと思うよ」

 前の席から酔い止めが投げ込まれた。有難うお母さん、これが優しさか。私は乗り物酔いし易い、バスでの移動は命懸けだ。後方では二年がお菓子にトランプにUNOと、修学旅行ばりに盛り上がっている。絶対に酔わないで欲しい。自分が悲劇を起こす自信は勿論、悲劇が起こったらつられる自信もある。頼むお願い。
 座席決めは死ぬ程しつこかった原ちゃんをなんとかかわし健ちゃんの隣。

「えーなにユーキチャンすぐ酔っちゃうタイプ? ゲボ吐くの? 嘔吐? リバース? ゲロっちゃう?」
「その単語言わないで後ろから頭掴んで揺らさないで肩の間接外すぞ外道」
「必死過ぎてウケる」
「酔ってしまえ愚昧……や、やっぱりだめ、絶対酔わないで」
「まさかのツンデレ! ねーザキと交代してオレと話そうぜ」
「種田大丈夫か……必死過ぎてキャラ崩壊起こしてるぞ」
「煩い寝るから話しかけないで。原ちゃんの心配なんてしてない二次災害が怖いのというか原ちゃんはザキちゃんとセットじゃん原ザキコンビだろうがでこぼコンビは永久に不滅」
「結希、バカな事言ってないで早く飲んだら?」
「俺とばっちりかよ……」

 うんごめんザキちゃん、でも必死なんだよ。原ちゃんは煩いし康くんは変な方向に優しさを発揮している、既に寝ている健ちゃんは静かで安全で正解だ。私も倣ってイヤホンを着けて目を瞑る。騒ぐ二年生と原ちゃんは着いてから練習の厳しさに苦しんでしまえ。






 合宿所到着早々問題が起きた。

「全然問題じゃないけど」
「種田ちゃんこれは死活問題でしょ!」

 もう一度言うが、全然問題じゃない。
 合宿所の宿泊施設はいくつかの団体客用コテージがあり、私達はその内の一つを貸し切っている。調理師と引率の担任は本館近くの個人客用の個室だ。コテージは六人部屋と少しの二人部屋、私は二人部屋を一人で使う予定だった。しかし合宿所ホームページが古いまま更新されておらず、実際に借りたコテージは全て六人部屋。急遽二人部屋の部員を六人部屋に、というところで女子の私をどうするかとなったのだ。六人部屋を一人で使うには人数の関係で無理、担任と交代の案は「大丈夫だろ、俺はゆっくり一人でビールが飲みたい」と担任が却下。

「どの部屋も無理なら談話室のソファーで寝ます」
「もっとダメだから。俺なら本ッ当に安全だから大丈夫!」
「お前はお前で不安なんだけど」
「つーかセンパイが同室が良いだけっしょ。ユーキチャンオレと一緒で良いだろ? オレら仲良いしー」
「ちょ、違うし! 原とか一番ダメだから、絶対手ェ出すでしょ! ダメッ!」
「原は危ないだろ」
「手ぇ出す気満々にしか見えねぇわ」
「手? 原ちゃんは叩いたりしませんけど……じゃぁもう先輩原ちゃん私で。三人部屋を作る余裕はありますし。はぁい決まりーおっけーおわりー」
「俺が寝てから危ない!」
「…………なんなんですか先輩」

 と言った様子で、マネ業を教えてくれた先輩を中心に揉めている。まさかの原ちゃん全否定への疑問がどうでも良いくらい、ほんと面倒くさい。二人部屋へ私を組むだけで良いのに、何故か六人部屋の二年の大半も口を挟んでいる状況。私は気の許せる相手が一人でも一緒なら何処でも良い。しかし到着して早十分、決着は着かない。そろそろ練習開始だし早く荷物を置いて用意したい。

「うーん、このままじゃ埒が明かないし……結希が決めてくれよ。二人、誰と同室なら大丈夫?」

 顎に手をあてて困ってしまったとまこちゃんが提案する。答え解ってる癖によく言う、そんなの当然、

「まこちゃんと健ちゃん」
「俺は!? 種田ちゃんなんで!?」
「まこちゃんとは普段もお泊まり会するし、健ちゃんはすぐ寝そうだから静か」
「「「「「は?」」」」」
「お と ま り か い !!?」
「……ごくたまに、ですよ。結希とは家族ぐるみで交流があるので」

 種田家は私しか居ないからね。花宮母と仲良くなれば必然的に家族ぐるみ、物は言いようだ。「俺は瀬戸と二人部屋だったんだが」「じゃぁ四人だね」半端にあぶれては面倒だろうと康くんの申し出に答える。まこちゃんは元々一人だったので丁度良かったかも。

「えー古橋良いんならオレも花宮達の部屋ねー」
「原が一緒だと心配だから俺も……まぁ元々原と同室だし」
「それザキが一緒の部屋が良いだけ、」
「違ぇよ! つかお前はこんだけ言われる自分のアレコレを省みろ!」
「え、待って、せめて三人でしょ!?」

 先輩が叫ぶがこの面子なら何も問題は無い。まこちゃんも猫を被らなくて良いし、私も全員仲良しだ。

「いぇーい皆でお泊まり会! はぁいさっさと荷解きして練習行きましょーそうしましょー」
「心配無いですよ。本人が善しとする以上、センパイ方から文句なんてある訳無いですよ、ねぇ?」

 思わず両手を上げた私に苦笑したまこちゃんが、今度は綺麗に笑って先輩達を威圧する。こくこく頷く先輩達に、花宮恐怖政治の完全統治も近いなと思う。






「最後まで残った方クールダウン、ッ山崎さん座り込まないで! 私は配膳がありますので片付け……えと、タオルは籠、ボトルはラックへまとめておいてください。それではお先に失礼します」

 シャトルランの記録をメモし、コテージへと走る。
 出来上がっている料理を調理師と三人でせかせか盛付けし、早くも次々来る部員達に配膳する。全員へ行き渡ったのは夕食開始十分前だった。早いが遅れるよりは良いだろう。隅で一人で食べようと思っているとまこちゃんに呼ばれた。

「さっさとしろよノロマ」
「うぃ」

 気が付けば定番に成りつつあるメンバーの塊、不自然に一つ空席があって嬉しくなる。
 食べ始めて少し、ふと他の席が騒がしくなった。合宿でテンションが上がっているのだろうか。騒ぎながら小ビンを手渡している、あれが理由らしい。まこちゃんが煩いと不快そうに小さく舌打ちしておかわりへ行く。おかわり一番乗り、早過ぎるよ。

「おい、お前らも誰かこれ試して!」

 騒ぎと共に流れついたビンには「望月モチヅキさん家のホットソース」とラベルが貼られ、蓋には手書きで試の文字。農家が端正こめて手作りしたと言う謳い文句の素朴なラベルだが、辛さはタバスコの三倍、必ず一滴から試すようにと過激な注意書き付きだ。「置いてあったらしい。本館の購買に売ってて、気に入ったら是非買ってって」どうやら促販用の試食のようだ。「パクらんないの?」原ちゃんが訊くと、黙々と水と白米だけ食べていた部員が箸を止めた。

「答えは……試せば、解る」

 目力凄い。辛いので持って帰る客は早々居無い、と言う事だろうか。「「種田試せよ/試せば?」」重なった古橋瀬戸の声に、ザキちゃんが止めに入る。タバスコの三倍か……ちょっと、

「そうだね、気になる」
「えっ」
「……ユーキチャン甘党だろ? 昼メシの後いつも絶対お菓子食べてんじゃん」
「私、甘党で辛党なんだ」
「こいつ蒙古湯麺中本の魅力語ってたからな」
「「おぅふ」」
「中本?」
「罰ゲーム級の激辛ラーメン店」

 ビンを手に取り掌に一滴垂らしてぺろりと舐める。「直かよ!?」だって最初は素材そのままじゃないと。「行儀悪ぃぞ」帰って来たまこちゃんに非難される。君が手に持つアホみたいな山盛りご飯も決して行儀が良いとは言えないよ。というか、

「これ良いね」
「あれ? 辛く無いの?」
「思ったより、は」

 お気に入りのサルサデスソースと似てるけどマイルドだし、香りと風味が圧倒的に良い。「種田……すげーな」「好みの違いだよ」白米部員の感嘆を軽く否定して、鶏もも肉に垂らして食べる。料理を邪魔しない上に風味が元の味を引き立てる、やばい美味しい。「お前ほんと味覚イってんな、味蕾ねーんじゃねーか?」「カカオ100%男には言われたくない」「俺がカカオ豆みてーな言い方してんじゃねーよ」ビンを見た花宮カカオ豆真に鼻で嗤われた。
 私の反応に興味を示した原ちゃんが、ホットソースをトマトに垂らし口に入れた…………ザキちゃんの、口に。

「いっっって! みず!!!」

 口が痛いと半分泣きながら顔を真っ赤にするザキちゃんに原ちゃん大爆笑。「ザキ大げさっしょー、ユーキチャン普通に食ってんじゃん」笑う悪い男に鶏を提供する。

「原ちゃんあーん」
「えーやだ、んが…………痛い痛い痛い! ザキ俺の水返せよ痛い!!!」
「ザキちゃんに悪さした罰って言いたいけど……これあれかな、胃と腸とその……まぁ大事にならないと良いね」
「種田の反応が不満なんだが。お前は口、痛くないのか?」
「余裕。でも付け過ぎると流石に少し痛いかも「少し、ね。それ胃腸も?」
「? うん」
「そういや古橋に押し倒された時も余裕だったよね。頭と背中」
「よ、ゆうだったね」

 じっとこちらを見る健ちゃんに肩が跳ねかけた。その目が探るようで、辛いと騒ぐ二人へお茶を汲みながらそっと目を逸らす。あぁ、もう。白米部員が騒いで無かったからそこまでじゃないと思ったのに。嫌な事を考えた私の背中を、香辛料による発汗ではないじっとり冷たい汗が伝った。
 食事が終わり洗い物の手伝いを申し出るが断られた。「明日からは配膳も手伝わなくて良いよ、ご飯は任せてね」「一日中男共の面倒見るんでしょ? こっちは気にせず頑張って」笑うおばさん調理師に頭を下げる。部員は本館の大浴場へ行ったり、真面目に課題をやったり、遊んで盛り上がっている。今日の練習は移動があって楽だったので皆元気だ。タオルの洗濯やボトルの洗浄が終わりぼーっとする。20:30から一時間、勉強会と言う課題をやる時間があるがどうにも集中出来そうに無い。誰にもバレないようそっとコテージを出た。






 自然に囲まれた運動宿泊施設の端、薄暗い屋外コートで一人バスケをする。没頭する。耳に着けたイヤホンから流れる爆音は、私の呼吸音もドリブルの音もかき消している。興味が無いのに、嫌な事を考えると決まってバスケに没頭する私は変だなと他人事のように思う。
 私は痛覚が鈍い。これが記憶を無くす前からなのか、記憶と共に鈍くなったのかは解らない。この前康くんに薙ぎ倒された時も、氷嚢を当てて初めて大きなたんこぶが出来ていると気付いた。辛さに強いのも理由は同じ。辛味を感じるのは味蕾じゃない、痛覚だ。こういうのも中学時代、周囲に一線を引かれた理由だったりする。美術でザックリ手を切っても、体育で派手にデッドボールを食らっても。眉を寄せる程度で済む私を、彼らはキモチワルイと畏怖の目で見た。
 健ちゃんはどう思っただろうか。気付いた、のかな……きっと気付いたんだろうな、鋭いもん。「少し」は確認で、「余裕だったよね」は確信だろう。あれだけ二人が騒ぐのに平然と食べた私は、大きなたんこぶに気付かない私はキモチワルイだろうか。そんなの中学時代は普通だったのに、どうにも彼を気に入り過ぎているらしい。健ちゃんにキモチワルイと思われるのは嫌だ。怖い。何も考えたくない。

(あぁ、くそ)

 無心で放ったボールはリングをごろごろと回ってネットを潜った。
 記憶を無くす前も嫌な事があったり考えたりすると、こうしてバスケに没頭していたのだろうか……なんて。どう仕様も無い愚問だ。習慣で手段で逃げ道のバスケ。興味も無ければ好きでも嫌いでも無いし、勝っても負けても何も湧かない。何も無い。これだけ身体に染み付いているのに、どうやっても手に入らないバスケへの感情。前は大好きだった? それが今じゃこうだ。
 『死篭』なんて名前嫌いだ。死んでるのは才能じゃない、記憶と感情だ。感情はいくらかマシになったが、大好きだった筈のバスケにも何も感じ無い。
 でもどこかでこのスポーツを好きになりたいのかも知れない。だからバスケに執着しているまこちゃんのプレーに魅了されたんだろう。青春をぶち壊すさまに惹かれたのもあるけれど、私もバスケに……執着、したいのかもしれない。
 あんな風にまこちゃんみたいにと真似た、彼が最近練習しているティアドロップは手のかかりが甘く落ちた。苛ついて思わず跳ねるボールをバックボードに投げ一人アリウープ。跳躍力に恵まれた私は低身長ながらぎりぎりダンクが出来る。でもこれは違う、これは私のプレーだ……何も無い、私の。助けてよ。バスケやってたって何も解んないじゃん。何も思い出さないじゃん。上手く出来ても強くても、何も感じないじゃん。私には何も無いじゃん。
 リングから手を離す。着地に失敗したのか、足首に少し違和感が走り舌打ちする。軽く捻挫しただろうか。でもこれくらいじゃ痛みなんてなくて。気にせずティアドロップの練習に没頭した。

「────ッ」

 突然腕を引っ張られた。
 ブレた視界に紫が光って、あぁ健ちゃんか居無いから探しに来たのかもしれない、と頭の冷静な部分が考える。何か言ってるがよく解らない。ぼーっと突っ立っているとイヤホンを乱暴に引き抜かれた。

「なにしてんの」
「…………バスケ?」

 降ってきた溜息が怖くて、足が竦んで座り込む。思ったより没頭していたのかとても疲れた。健ちゃんを視界から追い出すべく、身体への労りなんて無視してどさりと上体を倒す。どうせ彼は気付いているんだから、どうでも良い。
 嫌な事を考えたからバスケをしていたのに、芋づる式に別の嫌な事まで考えてしまっていた。アホみたいだ。引き抜かれたままのイヤホンは、シャカシャカ安っぽい音を垂れ流している。背中のアスファルトが生温い。雲一つ無い夜空、星は少しだけしか見えない。代わりに飛行機が遠く、随分高くを飛んでいる。私もどこかへ飛んで行きたい。ここは蒸し暑いのに、なんだか寒いんだ。
 なんでこんなに怖いんだろう。やっぱりどうにも気に入り過ぎたかな。

「なにしてんの」

 そんなの私が知りたいよ。もう一度聞かれた言葉と視界に大きな手が映る。

「なにしてんのって聞、」
「疲れたから寝転がってる」
「ッそうじゃなくて、」
「か、課題面倒でちょっとサボりたくなっちゃって? それに、えと、私一応女バスだから。ほら前に毎日練習してるって言ったでしょ合宿中とは言え習慣だし抜くのはどうかと思ったんだ」
「…………花宮がここだろうって、なんか俺が駆り出されたんだけど」
「あぁ──……、睡眠時間削らせて悪かったね、ごめん」

 ──あぁ、まこちゃんにはお見通しだったのか。差し出された手は取らず勢いをつけて立ち上がる。違和感が残る足首への舌打ちを飲み込み、歩き出す。

「戻ろう、まこちゃんが待ってる」

 健ちゃんは何も言わずまた溜息を吐いた。ビクリと勝手に跳ねる身体を悟られないよう、伸びをして大きく深呼吸しぴょんぴょんとその場で二回ジャンプ。気持ちを切り替えないと。着いて来ない彼を振り返ってもう一度謝ると、やっと動き出した。
 気持ちを切り替える、リセットだ。また落胆や畏怖の目で見られるのは嫌だから。健ちゃんは友達だから大丈夫かもしれない、でも友達だからこそ覆ってそんな目で見られるのは嫌だ。リセットしよう、距離感を。






 コテージへ戻ると、談話室に居た先輩達にお仕事お疲れと声をかけられた。大事にしないためにまこちゃんが誤摩化してくれたのだろう。部屋にはそのまこちゃんが一人。「風呂」と短く言われ、コテージの微妙に広い浴室で冷たいシャワーを浴びた。足首は腫れていない、痛みも一切無いし、熱もあまり感じない。大丈夫、軽度だろう。脱衣場を出るとまこちゃんが居てポカリを渡された。

「くだんねー事ばっか考えてただろ」
「……さすがまこちゃんお見事」
「マネが合宿初日から問題起こしてんじゃねぇよ、バァカ」
「そうだね、ごめん」

 部屋に戻ると皆居た。時刻は22:30、まだ誰も寝ていない。何故居無かったのかと問われる。どうやらまこちゃんはこの面子には事実をぼかさなかったらしい。「ちょっと課題サボりたくなって、それだけ」笑うが変な顔をされた。なんだろう。まこちゃんに至っては思いっきりしかめっ面だ。「ブス、足出せ」「わぉ、さすがまこちゃんよく気付いたね」肩を竦め自分で出来るとおどけてみせたが、舌打ちされたので大人しく従う。

「お前何してた」
「何ってバスケに決まってる、解ってる癖によく言うよ。ストリートコートに居るってまこちゃ、」
「何してたかって訊いてんだ」
「だからバス、」
「そんだけじゃねーだろブス。なら何の練習してた?」
「……」
「答えろよ」
「………………ティアドロップ」
「ふはっ、笑っちまう程バカな女だな」
「……妖怪が増えたね」

 笑っちまう、なんて言うまこちゃんはしかめっ面のままだ。きっとティアドロップが彼の真似だとお見通しなんだろう。何故真似ていたのか、理由も気付いてそうだ。そんだけじゃねーだろ──別のくだんねー事も考えてたんだろ、そう言われた気がした。丁寧にテーピングされる足首を見ながら思う。
 終わった足を軽く確かめ、まこちゃんのらしきドライヤーを持って笑う。

「髪やって?」
「はぁ? 結希チャンはバカな上に甘えたのクソ構ってチャンか?」
「親離れ出来ないからね」
「言ってろブス」

 酷いな。まこちゃんの猫被りを参考に、上手く笑ってると思うんだけど。とはいえ乾かしてくれるらしい。うとうとして船を漕ぐたび、やりずらいとドライヤーで頭を叩かれた。それでも限界が来ると「ウザい、寝ろ」と言う彼は、なんだかんだ私に甘い。良いお母さんだ。そっと皆の視線から隠してくれる事も……ほんとまこちゃんは私に甘い。

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