ざあざあと世界の音を掻き消す長雨が早朝から相も変わらず降り続いている。外はまだ夕方だというのに驚く暗くアリは濡れないように小走りで本校舎と別館繋ぐ渡り廊下を渡り終えるとすぐに古ぼけた木材の香りがアリを出迎えた。少し背中に冷たいものを感じて急いで一段一段軋む階段を登る。
 美術室の前は人の気配はするのに活動中とは思えないほど静かで通い慣れてはずなのに毎回緊張してしまう。どうにか目的地である美術室に到着したアリは中にいる彼の邪魔をしないように慎重に扉を開けた。
「いらっしゃい桐生院さん。雨すごいけど大丈夫だった?」
「走ってきたから平気だよ」
「スカート、少し濡れてる」
 ほんの少しスカート端が濡れていることに気付いた凪が筆を置いてアリの前に跪くとシワのないハンカチで丁寧に濡れた箇所を拭いてくれる。
 まるで絵本の王子様のような優雅な動作にドキドキしながらアリが、ありがとう、とお礼を言うと、どういたしまして、と微笑む彼はやはり童話の王子様に見えた。
「こうして君が来てくれるのは嬉しいけど雨の日は無理に来なくていいんだよ。体が冷えて風邪でも引いたら大事だから」
「いっいいの!私が東雲くんに会いたくて来てるだけだから。あ、でも、いつもいつも来るのは迷惑……だったかな?」
 アリはしゅんと肩を落として捨てられる前の子猫のよう眼差しで凪を見つめる。ハンカチをしまって絵筆を取ろうとしていたしなやかな手が柔らかな黒髪を梳くように優しく撫でる。安心する手つきにアリはそっと目を伏せ小さく喉を鳴らした。
「そんなことないよ。僕も桐生院さんが僕を訪ねてくれて二人で話せるのは嬉しいから。君の負担になっていなくてほっとした」
「へへ、ここには私と凪くんの二人しかいないもんね」
 頬を撫でる手のひらに嬉しそうにすりすり頬を寄せるアリがそう言って上目遣いで微笑めば、今度は凪の喉が小さく鳴った。
「雨……止まないね」
「今日はもう一日降るんじゃないかな」
「……あめ、やまないから」
 そう言ってアリは遠慮がちに身体を伸ばして少し冷たい凪の唇にあたたかい自分のそれを重ねる。ちゅ、ちゅ、と啄むようなキスを何回か繰り返しているうちにアリの熱が凪に移り、生温くなった唇に再度自分からキスを求めた。
「雨音……うるさいね」
「……うん。まるで世界に僕とアリちゃんしかいないみたいだね」
 何もかも見透かしたような涼やかな瞳にまっすぐ見つめられてアリは頬を撫でている手に自分の手を重ね、ゆっくり指を絡める。
「雨が止むまでは……帰れないから」
 熱に浮かされた顔で凪を見つめ返したどたどしい手つきで凪の手を胸元に導く。凪は少し驚いた顔をするもそれはほんの一瞬のことで、甘やかに微笑みアリの淡い期待に応えるようにツンっと存在を主張する可愛らしい蕾をきゅっと摘む。くるくると服越しに乳輪をなぞる指の動きに合わせてアリが身悶えする。
「ん……凪くん、いじわる、しないで」
 刺激が足りないのか膝を擦り合わせながら催促するアリの手が凪の方へ伸びる。
「んっ。こらこら、待って。ブレザー敷いてからじゃないと背中汚れちゃう」
「汚れてもいいもん…っ」
「だーめ。こら、まだ触らないで」
 凪の下腹部を撫でるアリを宥めながら手早くブレザーを脱いで作業台の上に敷いてそこに大好きなおやつを待ちきれない子犬のようなアリを座らせてあげる。
「……わたし、はしたないかな?」
 ちゅ、とおでこに触れるだけのキスを落として凪はゆっくり首を横に振る。
「大丈夫。アリちゃんは何も心配しないでいいよ───全部全部、雨のせいだから」
 鼻先が触れるほど近くにいるお互いの声もだんだん聞こえにくくなってきた雨音が二人の秘め事を隠してくれているうちに愛を貪りたいふたつの影がゆっくり重なった。
 前開きのセーラーのチャックを下げて露わになった白キャミソールの上から凪は控えめなふたつの桃にそれぞれキスをする。背中に片手を回してブラホックを外し締め付けがなくなった乳房にキャミソール越しにかぶりついた。
「はあっ……あっ、なぎ、くんっ」
 ちゅぱ、ちゅぱ、と厭らしい音を立てながら蕾に吸い付いたり痛みを感じない程度に噛み付いたりして敏感なのか凪のひとつひとつの動きに反応するアリを可愛がる。
「ん……アリちゃん気持ちいい?」
「きもちっ、きもちぃよ……っ」
「ふふ、よかった」
 丁寧に時間をかけてそこばかり舐めるものだから唾液でべとべとに濡れてキャミソールの上からでも位置がわかるくらい蕾が透けてしまっている。
 早く他のところも触ってほしいのにアリに痛い思いをさせたくない凪の優しさは嬉しいけれど、いつもいつも焦らされて堪らない気持ちになる。肌を重ねるだけで幸せだ───その気持ちに嘘はないけれど。優しい彼は否定してくれたけどもっともっとと欲しがってしまう自分はやはりはしたないのかもしれない。
「あぁ……っ、はぁん、なぎく、」
 蕾に吸い付いたままキャミソールの下から滑り込んだ凪の薄く大きな手のひらが慎ましい胸を包むようにソフトに揉みしだく。無意識に焦らされるものだからアリはせがむように胸の感触を楽しんでいる凪の頭を撫でる。凪が胸元から顔を上げると瞳に涙を溜めたアリと目が合った。
「ごめん、痛かった……?」
「いたくにゃ、いたくない、よ……なぎくっおねが、も、下も触って」
 アリは胸を揉んでいる凪の手を掴んでびしょびしょに濡れた下腹部へ誘導する。凪の指が割れ目に触れた甘い刺激に、ぴくん、と肩を震わせた。
「ふふ、まだ少ししか触ってないのにアリちゃんの大事なところいっぱい濡れちゃってるね」
「う、ん……凪くんがいっぱいきもちよくしてくれる、から、ねっ、だから、さわって」
「まだだめだよ。もう少し濡れてないと痛いでしょ」
「うあぁん!?」
 下を触らない代わりに凪は蕾にちゅう、と強く吸い付いた。自分で触ろうにも利き手を凪に絡め取られていて甘い疼きに身体中を支配されていてアリは凪の下で翻弄されるしかなかった。
 布越しに蕾を舐めたり胸を揉んでいた凪がゆっくり口を離すと銀色の糸が引いていて、ぷつんと途切れた。甘ったるい熱に蕩けた目をした凪がキャミソールを捲り上げて直接蕾に触れる。
 突然蕾が外気に触れたことでアリは小さな嬌声を洩らす。
「ん、」
「ごめん。寒かった?」
「ううん……へいき、もっと舐めて?」
 アリの言葉に応えるように凪が胸元に顔を埋めて白い肌にいくつか華を咲かせながら白桃にかぶりついた。ずっと焦らされていたから直接受ける快感は今のアリには刺激が強すぎて舐められただけで果ててしまった。
「アリちゃん今イッたの?」
「うん……っ」
「アリちゃんが僕で感じてくれて嬉しい。いっぱい気持ちよくなってね」
「ひゃん!?」
 恍惚とした表情の凪にお腹を舐められ情けない声を上げてしまったアリが恥ずかしそうに空いた手で口を押さえる。
「声、我慢しないで聞かせて?」
「だって、へんなこえ、だしちゃったから……はずかしいッ」
「恥ずかしくないよ。アリちゃんの可愛い声たくさん聞きたいな。ね、お願い、聞かせて?」
 きゅん、と腟内が疼く。凪のお願いに弱いアリは恐る恐る手を外して凪が与えてくれる快楽に身を任せる。
 やわやわと強くもなく弱くもない絶妙な力加減で胸を弄ばれながらアリもすぐそばで揺れ動く凪の猫っ毛を楽しむ。
「アリちゃん僕の髪触るの好きだよね」
「はぁ、なぎくんは……わたしのむね、すきだよね、んんっ」
「うん好き。アリちゃんの可愛い胸もすぐ固くなっちゃう乳首もどこ触っても愛らしい声を聞かせてくれる敏感さも、アリちゃんの全部が好き」
 大切な宝物を見るような愛おしさが溢れる瞳に自分が映った瞬間子宮がどうしようもなく疼いてしまいまた達してしまった。
「ふふ、またイッちゃったね」
「んんっ……だめっ、そこで話さないで……息、が……ッ」
「またイッちゃう?いいよ、いっぱいイッてよ。アリちゃんがイクところいっぱい見たいな」
 そうだ、と言って一度アリから身体を話すと凪はイーゼルの縁に置いていた未使用の絵筆を持ってすぐに戻ると物欲しそうな目をしたアリの乳輪を絵筆で撫でた。最初はくすぐったそうに身を捩っていたアリもくすぐったさに慣れてくると蕾やその周辺を絵筆で触れるか触れないかの強さでくるくる撫でられる快感に脳が甘く痺れて思わず凪に助けを求める。
「んっんっ……それ、だめ、あたま、ふわふわして……へんになるぅ」
「気持ちいいの?」
「わ、かんない、あたまふわふわして、わかんないよぉ……たすけて、なぎくんっ」
「ねえアリちゃん。やめてほしい?続けてほしい?アリちゃんが本当に嫌ならやめるよ」
 絵筆が身体を滑るたびに喘いでしまうアリは、やめる、という言葉にびくりと肩を震わせる。凪はアリが本当に嫌なことはしない男だ。アリが一言嫌だと言えばこの脳がくらくらする刺激から解放される。
「や、やだ……きもちいの、やめないで……っ」
「わかった。いっぱいしてあげるね」
 蕾を掃除するように筆先をぐりぐりと押し付けられて喘ぐアリを見て凪は満足そうに微笑んだ。だらだらと溢れ出る愛液でショーツはもう意味をなさない。下半身を動かすたびにぐしょぐしょのショーツの感触が伝わって気持ち悪い。
「なぎくんっ、ぱんつ、ぱんつ脱ぎたいっ」
「ぱんつ?……ああ、気付かなくてごめんね。こんなに濡れちゃってたら気持ち悪いよね。いま脱がせてあげる」
「やっ、じぶんで……ふぅんッ」
 ショーツを脱がせるために凪の指が太ももに触れてしまい凪に下着を脱がされている恥ずかしさで甘イキしてしまう。凪にバレていないかドキドキしながらこっそり様子を窺うと小さく微笑まれた。凪には何でもお見通しのようで脱がせたショーツを作業台の上に置くとくぱくぱと口を開けいじめられることを期待している割れ目にフェザータッチして、まだダメ、と意地悪い笑顔を浮かべる。
「お股……スースーする」
「下着穿いてないからね。汚れちゃうからスカート捲るね」
「あっ…!やだ、お股丸見えなの……恥ずかしいっ」
 凪に大事な場所を晒している事実に羞恥心を刺激されてどこも触られてないのに絶頂してしまう。愛撫中も凪は変わらず優しい目をしているのに肉食獣の前にいるような感覚にぞくりと背中が粟立つ。
「アリちゃん、イク時はイクって教えてね?」
「ごめ……ごめんなしゃ、こっそりイキました……っ」
「謝らないで責めてるわけじゃないんだ。ただ、アリちゃんの全部を知っていたいだけ」
 寂しそうに微笑んだ凪が首筋に吸い付いて痕を残す。アリの体温と混ざって生温い唇が首筋を這う感覚にアリはまた達してしまう。
「イッ、た……いま、イッた」
「痕付けられただけでイッちゃったの?かわいい。もっと付けてあげるね」
 凪は優しいから見えない位置に付けてくれると思うけれどもし人目に触れる場所に痕を付けられたら、と想像しただけで子宮が降りてくるような気がした。
「なぎくっ、みえないとこ、に……っあっ、ふあぁ、噛んじゃ、だめッ」
「心配しないで。わかってるから」
「ふうぅ、きもち、よ、あっ、あっ、またイッちゃったぁ……ッ」
 ぐすぐすと泣き出してしまったアリの頭を撫でてあやしながら凪は胸元に痕を付けていく。この可愛い子は自分の物なんだと自分の所有物なんだとこの世の男全員に教えてあげたい。この子を抱けるのは自分だけなんだと見せびらかしてやりたい。いけないことなのにアリに触れているとそんなどうしようもなく醜い欲が顔を出してしまう。独りよがりの独占欲を誤魔化すように汗が浮かぶアリのおでこにキスをした。
「んんっ、イッちゃった……っ」
「……アリちゃんは本当に可愛いね。好きだよ、大好き、もっともっと僕を感じて」
「ひゃあ!?急に、乳首触っちゃだめえぇ」
 きゅう、と蕾を摘まれて息が上がる。するするとお腹を撫でられながら下降していく指がふと痛いくらいに腫れたクリトリスを撫でられてアリはもう何度目かわからない絶頂報告をする。
「なぎくゆ、そこ、もっと、もっとさわってえ」
「アリちゃんクリトリスぐりぐりされるの好きだもんね。ほら、ぐりぐり、ぐ〜りぐり」
「ひゃんッあっああっふぅんッらめっぐりぐり、らめぇッ」
「声、甘くなったね。わかりやすくて本当に可愛い」
「大事なとこ、いっぱいぐりぐりしちゃ、だめなのおぉ…ッだめっだめッはあぁああんッまらっイきましたあぁッ」
「うんうん。ちゃんと報告できて偉いね。偉い子にはご褒美あげないとね」
 股の間に顔を埋めて蜜壷に軽く息を吹きかけるとこぽこぽと愛液が溢れ出てくる。愛液まみれの割れ目に舌を差し込んでクリトリスにキスをするとアリが絶頂したのがわかった。とめどなく溢れる愛液を舐め取るようにぢゅう、と強くクリトリスを吸い上げる。クリトリスを舌先でつついてみたり口に含んでころころ転がしてみたり、アリの反応を愉しみながら凪はクリトリスをいじめる。
「はぁ……はッああッああうッイクイクっイクっイ、クううぅ……っふっううううッ」 
「アリちゃん声おっきいよ。みんながいる第一美術室とは離れてるけど、あんまり大きな声出しちゃうと聞こえちゃうかも」
「っ、ふうう、んーーーっんっ」
 声を出さないように口を塞ぎたかったけれど凪に声を聞かせてほしいとお願いされているアリはどうにか声を抑えようとセーラー服を強く握り締めた。無意識に両足で凪の頭を挟んでいたようで凪に笑いながら、苦しいよ、と注意された。
「だめっこえ、がまん、できないっ出ちゃうッ」
「我慢しなくていいんだよ。ふふ、先生にお願いして防音室にしてもらおうかな、なんてね」
「はぁんックリトリスなめなめされるのしゅきッしゅきッまたイキましゅううッ」
 イクイクと頭を振りながら絶頂するアリは酷く扇情的で凪はごくりと喉を鳴らした。無意識に触り心地の良いアリのお腹を見つめ挿入たらここまで届くと思われる位置を撫でた。
「アリちゃん気持ちいい?」
「きもちッきもちぃ、もっと、もっとちょうだいっ」
「アリちゃんは欲しがりさんだね。もう僕のものが欲しいの?こぉら、撫でちゃダメだってば」
 スラックス越しに凪の股間を撫でて挿入してと強請るアリを窘めて凪は再び股に顔を埋める。ぴちゃ、ぴちゃ、と卑猥な水音が室内にこだまする。どれだけ舐め続けられていたのかぐったり力なく作業台の上に四肢を放るアリの口からは厭らしい鳴き声しか出てこない。
「あっあッはあぁああッん……ううっ、あぁ、ふっ、んんんうっ、あはぁんッ」
 作業台から伝い落ちたアリの愛液で水溜まりができていた。凪はとっくにグズグズになっていつでも挿入られる準備が整っている蜜壷を撫でて確認するとようやく指を一本差し込んだ。
「あッ───はァァあああッ」
「アリちゃん痛くない?苦しくない?」
「だいじょっ、イッたぁ、イッちゃったッ……またイッちゃうよおぉ」
 少し腟内で指を動かしただけなのにきっと人より何倍も感度の良いアリはクリトリスを舐めようとした大好きな凪の頭にだいしゅきホールドをしながら達した。何度も何度も責め立てられてここがどこなのかもわからなくなってきているアリが凪にキスを強請る。凪が応えると自分から舌を絡めてきてくちゅくちゅと水音を立てながら溜まりに溜まった欲をぶつける。互いを貪るようなキスを繰り返すうちに呼吸もままならないほど体温が上がっていくのがわかった。
「ん、アリちゃ、まって、んんっ」
「やだ、凪くんもわたしだけ、感じて」
 アリは離れようとする凪の首に腕を回して何度も何度もキスをする。どうせ世界から取り残されるのならこうしていつまでも二人のぬくもりだけを感じていたい。
 細くしなかやかな二本の指がアリの腟内を押し広げるように動く。クリトリスの裏側を撫でられてぴりぴりと脳が甘やかに痺れる。
「はあ、はッあ〜〜〜〜ッああ〜〜〜〜ッ、っくう……イクぅ」
「ん。ここがいいの?ふふ、新しくアリちゃんのいいところ見つけられて嬉しい」
 凪は心底嬉しそうに笑って軽くキスをした。指を何度も出し入れされる擬似ピストンでアリは身体を大きく痙攣させながら絶頂する。
「はあっはあっ……なぎくゆ、しゅき……」
 くたくたになりながらも必死に自分に抱き着いてくるアリに愛おしさが爆発しそうになる。凪はゆっくり深呼吸をして気持ちを落ち着かせてくぷくぷと水音を立てる腟内から慎重に指を引き抜いた。アリの準備はとっくの昔に出来ているが凪はまだ納得していないのか太ももに優しくキスをしてカバンから水のペットボトルを取り出した。
「アリちゃんも飲む?」
「ん……飲ませて?」
「ふふ、甘えんぼさんだね」
 可笑しそうに微笑む凪は口に水を含んでアリの頭をそっと引き寄せて口移しで水分補給させる。上唇を軽く噛んでからゆっくり顔を離してとろけた表情のアリに向かって蠱惑的に微笑んだ。
 二人の秘め事を隠してくれている雨はまだ降り続いていて凪が言ったように明日まで止まないのかもしれない。
「雨……まだ止まないね」
「帰れるかなぁ……。ねっ凪くんもし帰れなくなったらここに泊まっちゃおうか」
「楽しそうだけどダメ。お家の人が心配するよ」
「むう、ちゃんと電話するから大丈夫だもん」
 唇を尖らせて抗議するアリが可愛らしくて凪は触れるだけのキスをした。アリの家族は本当に彼女を大事に思っているから夜の校舎に泊まらせることを許可しないだろうしこうして彼女に触れていることすら知られたらどうなるかわからない。
「凪くん……?」
 アリと引き離されるかもしれない焦燥感に駆られて思わず華奢な身体を抱き締めていた。彼女の幸せのためなら身を引く覚悟はできている。けれど、今は今だけは自分だけの彼女でいてほしいと願ってしまう。
「アリちゃん、続き、しよ?」
「うん…!あんっ、もう凪くんくすぐったいよ。はあっ!?あっあッまって、ああんッ」
 ゆっくりアリを押し倒した凪がほぐれた蜜壷に指を三本差し込んでバラバラに動かしながら胸に吸い付いた。片方の胸を下からすくい上げるように揉みしだきながらまたピンッと立ち上がった蕾を人差し指と中指で挟んで扱く。
「凪くっ……あっ、あっあっ……もう、いれて、おねが、凪くんがほしいのッ」
 アリに涙ながらに懇願されて凪はわかったよ、と優しいキスをしてベルトに手をかける。挿入る前にもう一度指を入れて腟内の具合を確かめてから凪はゆっくり挿入していく。
「アリちゃん痛くない?大丈夫?痛かったらすぐに言ってね」
「ん。へいき、凪くんがいっぱいいっぱい触ってくれたから痛くないよ。んんっ」
「良かった……っ」
 ほっとした凪はゆっくりゆっくり時間をかけてアリの腟内に根元まで沈めていく。雨は変わらず降り続いている。
「はあ……全部入った。アリちゃんわかる?僕がここまで入ってるの」
「ん。わか、るよ……お腹いっぱい凪くんを感じる……ッ」
 自分のなかに凪が入っていると思うとお腹がきゅんきゅんする。熱い昂りと凪を感じて涙がこぼれどうしようもない幸福感にアリは彼に抱き着き、挿入した後も凪はしばらく動かずにただただアリと抱き合っていた。
 このまま溶け合ってひとつになれたらどれだけ幸せだろう。でも、ひとつにはなれないから、それなら彼女に自分を刻み付けたい。そんな欲望に駆られた。
「アリちゃん動いてもいい?」
「うん。きて、きて凪くん」
 どちらともなく顔を寄せてキスをしながら凪はゆっくり長いストロークでアリに快楽を与える。動きはゆっくりおだやかなのに
「はぁん……んっ、んっ、きもち、きもちいよお凪くん」
「アリちゃん好きだよ。好き、すきだよ。アリちゃんは?」
「わたしも、好きっしゅきだよッだいしゅきッ」
 好きという単語に反応して腟内で凪の分身が大きくなったのがわかった。愛おしい凪を離さないようにアリが一生懸命凪を締め付れば苦しそうに顔を歪め短く声を洩らした。奥へ奥へと腰を進めるたびにアリが鳴いて啼いて────どこまでもお互いを貪り合い静かに堕ちていく。
 別室で活動していた美術部員たちがぼちぼち片付け始める時間になり第一美術室と第二美術室の間にある美術準備室に続々と人が入ってくる。
 二人だけの第二美術室では作業台の上で絡み合った凪とアリはひとつになれた幸福に浸っている。
「はひゅ♡はひゅ♡なぎくッ♡奥ッおくぅ届いてるぅ!凪くんのおちんちんずぅーっとわたしの子宮にキスしてるよぉ♡♡」
「アリちゃんっあんまり煽るようなこと言わないで……っ」
「だっひぇ……ずっときもちんだもん♡きもちいいんだもん♡なぎくんがきもちよくするからぁ♡とまらないよおぉ」
 凪から子種を絞る取るようにきゅうきゅう締め付けてくるアリの反撃にどうにか耐えながら凪は深く深く腰を打ち付ける。アリの下に敷いているブレザーはアリと凪の汗と愛液でべとべとになっていてもう着て帰れないだろう。
 訪れる何度目かわからない絶頂に目の前がチカチカ点滅して目眩がする。
「あっああああああッあああああああッ」
 凪にしがみつきながら果てたアリが大きく肩で息をしながらどうにか呼吸を整えようと何度も何度も酸素を求める。深い絶頂を何度も繰り返したせいで腟内は痙攣しっぱなしで凪も短く息を吐いて達した。
「アリちゃんまって、人がいるかも」
「やだっやめないでッなぎくんッ凪くんちょうだいっ」
「──ッ。アリちゃん、だめだって、いい子だから、」
 きゅうう、と締め付けながら凪に抱き着いてそのまま繋がったまま凪を押し倒してだめだよと止める凪の声をキスで塞いでアリは自ら腰を動かし始める。
「っ、く、アリちゃん……だめっだって」
「はぁっ、はっ、んんっ、んう、凪くん……なぎくんッ」
 たどたどしい腰使いにもどかしくなって凪は顔を歪める。キスをして目の前でぷるぷると控えめに申し訳程度に揺れる胸を下から掴んでやわやわと揉みしだきながらずんっと突き上げる。
「ひゃあん!?あっあッきもちの、きたあっ……♡」
「アリちゃん、アリちゃんっだめ、とまって、とまって」
「やだッ凪くんがほしいのッもっと突いてっ突いてきもちのでわたしのなかいっぱいにして……っ」
 心の奥深くに沈めていた暗くどうしようもない欲望を誰よりも大切にしたいアリに容赦なく刺激されて凪は目眩がした。凪は上半身を起こしてアリを抱き締めながら何度も何度も下からずんっずんっと突き上げて胸にむしゃぶりつく。同時に刺激されて限界まで高められたアリの身体はあっけなく果ててしまう。
「っはああぁぁぁッイッちゃううああッイッたよっ凪くんっわたひイッたあッ」
「はあっ。くッ」
「凪くんもイッたの?一緒にイケてうれしいっ」
 とろけたアリが満足しただろうと一旦休憩を挟もうとした凪に抱き着いて腰を擦り付ける。
「ああもう……いけない子だねアリちゃん」
「んっ♡だって……凪くんがほしいんだもんっ」
 ぎゅうぎゅうと凪の胸板に胸を押し付けて欲を駆り立てさせるアリがダメ押しにと凪の耳元に唇を寄せ、凪くんの赤ちゃんほしい、と囁いた。
「きゃっ!?あああっああん!?」
 ぐるんと身体が反転して天井が見えたかと思うと反動で抜けた凪の分身を一気に差し込まれてぶるぶると身体を痙攣させながらアリは絶頂した。訳が分からないままイカされたアリは状況が飲み込めないままもう一度イカされる。
「あ!?あーーーッ!?はああッふうっはあんッ〜〜〜ッあッあーーーーッッなぎくっ凪くッアッあッーーッッ」
 ぱんぱん、と腰を打ち付ける音とアリのあられもない喘ぎ声だけが室内に響いて性の匂いが立ち篭める。
「あひゅあッあッはああんッなぎくッまっひぇええッとまってえッやらッやめないでッああッイックイ♡ク♡イク♡イク♡イク♡イキましゅう♡♡あっだめっとまってまたイッちゃうッイッたイッたからぁとまっておねがっあッアッあううッあーーーーーッあーーーッアーーーーッふうぅんッ」
 連続的にイカされてアリの口からはだらしなく唾液がこぼれ喘いで喘いで喘いで喘いでただだ凪を求めた。
「……あ……っ……はっ……」
 上手く話せなくて意味のない言葉を羅列するアリがようやく止まってくれた凪に手を伸ばす。伸ばされた手に己のそれを絡めながら凪は淡く微笑む。
「アリちゃん男の人を下手に煽ったらどうなるかわかったでしょ?もう、あんなこと言っちゃだめだよ?」
「だって……凪くんが……ほしかった、んだもん」
「僕もアリちゃんかほしいよ。でも、それで君に無理をさせたくないから。君にわかってほしくて酷くしちゃってごめんね、苦しかったよね」
 見ているこっちの心が痛くなるほど悲痛に顔を歪める凪にアリはそっと触れるだけのキスをした。恐る恐るアリの様子を窺っている凪にやさしく微笑んでアリは凪の手のひらを自分の頬に当てた。
「凪くんのこと好きだから凪くんに何されてもわたしは平気だよ。それに雨だから、今日は雨だから悪いのは全部雨だよ」
 そう言ってアリは凪の手のひらにキスをした。この子には敵わないな、と思いながら凪もゆっくりと顔を寄せる。
 窓の向こうでは二人が犯した罪を洗い流すように雨が降り続いていた。