story.18

「緊張を解くな!!! 何が起きてもあと3時間!! そこで全てが終わる!!!」

 世界各地より招集された名のある海兵達。総勢約10万人の精鋭が、にじり寄る決戦の刻を待っている───

 三日月形の湾頭及び島全体を、50隻の軍艦が取り囲み、湾岸には無数の重砲が立ち並ぶ───

 港から見える軍隊の最前列を構えるのは、戦局のカギを握る6名の曲者達、シルヴィア含む海賊″王下七武海″。


 シルヴィアはドフラミンゴに地面に下ろしてもらい、白狐の姿へと変えた。頭からは白い大きな耳を生やし、薄紫色の宝石の様な瞳を黄金に輝く金色へと変え、爪は黒く長い鋭く尖ったものへと変化させ、尻からは10本の白く長いふさふさした尻尾が現れた。その変化したシルヴィアの姿は、威圧感を与えるには十分だった。
 すると、シルヴィアの異変に気づいた海兵と七武海達が声を上げた。

「お、おい!! 誰だあれは!!? あんな人七武海にいたか!?」
「あれは滅んだ白狐一族の生き残りの娘じゃないか!!」
「今回センゴク元帥に特別に呼ばれて、駆けつけてくれたらしい!!」
「実に頼もしい!!」

 招集された海兵達はシルヴィアの事は聞いていなかったため、驚きの声を上げたが、事情を知っている海兵達の言葉で納得したようだ。

「フフフ、シルヴィアもうその姿になったのか!」
『ええ、いつ敵が来るかわからないから』

 ドフラミンゴの言葉に、シルヴィアは少し微笑んで返した。白ひげ達がいつ来るかわからない今、早くもこの姿になり、ドフラミンゴを守る為に戦いに備えたのだ。

「ほう・・・その姿が噂に聞く白狐一族の本来の姿というやつか・・・!! 成程、主から唯ならぬ気配を感じる」
「キシシシシ!! テメェが敵だったら、おれのゾンビにして最高戦力として使ってた・・・!! 実に惜しいぜ!!」
「フッフッフ!! そいつァ残念だったな!! まず、シルヴィアをお前のゾンビにするにァ勿体なさすぎるぜ!!」

 感心しているミホークに対し、モリアのまさかのゾンビ発言に、ドフラミンゴは嘲笑う様に言った。

 そして、シルヴィアの姿に気づいた者はこの海軍本部にいる者達だけではなかった。
 「海軍本部」のある島″マリンフォード″には、主に海兵達の家族が暮らす大きな町がある。現在、住民達には避難勧告が出ており───避難先のシャボンディ諸島からモニターによって、人々は公開処刑の様子を見守っている。そこでモニターを見ている住民が、七武海のメンバーが映った所で異変に気づき、声を上げた。

「おい、誰だあれは!!? 七武海の新メンバーか!?」

 シルヴィアに気づいた住民がそう言ったと同時に、彼女の姿がアップで映された。シルヴィアの美しすぎる容貌は、人々を見惚れさせるには十分な程だが、そう出来ないのはその白狐の姿と、威圧感の所為だった。

「いや、違う!! コイツは白狐一族の生き残りの姫君だ!!」
「何!!? じゃあ、コイツがあの噂の白狐姫か・・・・・・!!」
「以前は新聞に頻繁に載っていたけど、ここ何十年も間は新聞に乗っていなかったから、もう死んでしまったとばかり思っていたわ・・・!!」
「何だって公開処刑に参加してるんだ・・・!!?」

 モニターを見てい者達の間では、シルヴィアの話で持ち切りだった。


「──まさかあなたが生きているとは思いませんでしたよ。ここ何十年も生存を確認する事は愚か、情報の一つも掴めなかったので、もうこの世にはいないのだとばかり・・・。まあ、その原因は今わかりましたがね」

 住民達と同じく、モニターを見ている1人の青年がそう呟いた。青年は帽子を表情を隠す程まで深く被っているため、容貌を確認する事は出来なかった。その青年の呟きは、どよめきに包まれている辺りの所為で、聞いた者は誰一人いなかった。

「待っていて下さい。必ずや、あなたを救い出してみせますから」

 青年は再び誰にも聞かれずに呟くと、彼に気づいた者が震え上がる程に鋭い目付きで、モニターを一度睨み付ける様に見つめた後、静かにその場を立ち去った。その事にも、気づく者は誰一人としていなかった───


TO BE CONTINUED