それにしても、この海兵の数は異常だとシルヴィアは思った。幾ら白ひげ海賊団と戦争になった時の為とは言え、異常すぎるのだ。白ひげ海賊団を理由に、何か企んでいるとしか思えない。これは何かあると、シルヴィアは密かに目を細め思った。
シルヴィアがそこまで考えていると、牢獄から外へと通じる階段を登って来たエースが処刑台の上へ現れた。
「おい、見ろ!! エースが出てきたぞ!!」
エースに気づいたモニターで見ている住民達と、海兵達は騒ぎ出した。
広場の最後尾に高くそびえる処刑台には、事件の中心人物″白ひげ海賊団″二番隊隊長ポートガス・D・エースが、運命の刻を待つ──
その眼下で処刑台を堅く守るのは、海軍本部″最高戦力″3人の[海軍大将]。
本部の周りを取り囲む総勢10万人の名のある海兵達、最前列を構える曲者揃いのシルヴィア含む海賊″王下七武海″、処刑台を堅く守る海軍本部″最高戦力″の3人の[海軍大将]、今考え得る限りの正義の力が、エース奪還を阻止する為、″白ひげ海賊団″を待ち構える──
何やら電伝虫を持ったセンゴクが、処刑台に登りエースの隣に立った。それに気づいた海兵達が何だ何だと騒ぎ出した。
「諸君らに話しておくことがある」
センゴクはざわめきを物ともせず、静かに話し出した。電伝虫を通しての声は、マリージョア内にいる全ての者、そしてモニターを見ている人々に伝わった。
「ポートガス・D・エース・・・この男が今日ここで死ぬことについての、大きな意味についてだ・・・・・・・・・!!」
センゴクの言葉に、どよめきが起こった。今更何をと思う者が多くいるであろう中、シルヴィアはやはり何か変だと思いながら静かにセンゴクの話を聞いていた。
「エース、お前の父親の名を言ってみろ!!」
「!・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・!!」
センゴクの言葉に、エースは反応したが答えず、眉間に皺を寄せて下からセンゴクを鋭い目付きで見つめた。
「オヤジ?」
「何だ? こんな時に・・・」
エースが処刑台に現れ、白ひげ海賊団がいつ来るかわからないで緊張感が漂っている状況の中、分かりきっている事を聞くセンゴクに、真意がわからなくて海兵達は困惑した。その言葉には、誰もが白ひげ海賊団の船長″エドワード・ニューゲート″だと答えるだろう。
「おれの親父は″白ひげ″だ!!」
やはりと言うべきか、エースはそう答えた。
「違う!!!」
「違わねェ!! 白ひげだけだ!!! 他にはいねェ!!!」
「当時、我々は目を皿にして必死に探したのだ、ある島にあの男の子供がいるかも知れないと。″CP(サイファーポール)″の、微かな情報とその可能性を頼りに、生まれたての子供、生まれて来る子供、そして母親達を隈なく調べたが見つからない」
センゴクは、その時の様子を思い出す様に話し出した。そのただ事ではなさそうな話に、海兵達の間で先程まであったざわめきが消え、今では皆が静かに話を聞いていた。
「───それもそのハズ・・・お前の出生には母親が命を懸けた。母親の意地ともいえるトリックがあったのだ・・・・・・・・・!!──それは我々の目を・・・・・・・・・いや・・・世界の目を欺いた・・・!!」
威圧感を感じかせるセンゴクのその言葉に、一部の海兵の間では額から冷や汗が流れた。
「″南の海(サウスブルー)″にバテリラという島がある。母親の名はポートガス・D・ルージュ。女は我々の頭にある常識を遙かに越えて、子を想う一心で実に20ヶ月もの間、子を腹に宿していたのだ!! そしてお前を産むと同時に力尽き果て、その場で命を落とした」
その想像を越える言葉には、この場にいる者だけでなくシルヴィアも驚愕した。シルヴィアは純粋に思った、そこまで我が子の出産に命を掛けれる母親は凄いと。それだけエースへの想いが強かったということなのだろう。
「父親の死から1年と3か月を経て・・・世界最大の悪の血を引いて生まれてきた子供、それがお前だ。知らんわけではあるまい・・・・・・!!」
センゴクの言葉に、再びどよめきが起こった。
「お前の父親は!!! ″海賊王″ゴールド・ロジャーだ!!!!」
「『!!?』」
「・・・・・・・・・・・・・・・!!?・・・・・・・・・・・・・・・!!!」
公表されたエースの父親の名には、誰もが驚愕した。エースは俯き、悔しそうに歯を食いしばっている。その様子を見て、センゴクの話は本当だということがわかった。
そしてシルヴィアは、最初に感じた違和感はこの公表の為だったという事がわかった。センゴクは、白ひげ海賊団との戦争の為だけでなく、少しでも多くの海兵にこの事を知らせる為に、招集したのだと。
そして、その知らせはモニターを見ている者達にも伝わっていた。
「・・・・・・・・・・・・・・・!! ″火拳のエース″は・・・・・・ゴールド・ロジャーの息子!?」
「これは大ニュースだ!! すぐに本社へ!! 号外を出すぞ!!!」
「・・・・・・・・・・・・・・・!! 生きてたのか・・・・・・まだ″海賊王″の血が・・・!!!」
1人の記者は、恐怖でガタガタと身体を震わせながら言った。この知らせは、全ての人々を動揺させるには十分だった。
TO BE CONTINUED