story.20

「・・・・・・・・・」
「ルフィの・・・・・・実の兄ではなかったのか・・・・・・」
「・・・・・・・・・ロジャーの、息子・・・・・・!!!」
「「「・・・・・・・・・」」」
「実の息子が生き延びてたのか・・・!! こりゃ奇跡だ・・・!!! ロジャーに関わるあらゆる全ての人間が当時、刑を受けたってのによ・・・!!!」
「・・・・・・・・・・・・ほう」
『・・・お父様の友達の・・・息子・・・』

 シルヴィアも、まさか亡くなった自分の父親アランダインの、かつての友達ゴールド・ロジャーに子供がいたと知らず激しく動揺し、唖然としながら呟いた。

『・・・・・・お父様、ロジャーさん・・・ごめんなさい・・・』

 エースが父の友達の息子だと知った今、エースを助けてあげたったが、そうなればドフラミンゴの立場が危うくなるので、助けたくても出来そうになく、悲しげにそう呟いた。
 シルヴィアの気持ちを表すかの様に、ピンと立っていた2つの白く大きな耳と10本の尻尾がペタンと垂れた。すると、シルヴィアの様子に気づいたドフラミンゴが励ます様に、大きな手を頭にぽんと起き優しく撫でてくれた。

「シルヴィア、何もお前が気に病む事ァねェだろ。捕まったあいつが全て悪ィんだ。だから何も気にするんじゃねェ」
『・・・・・・ええ、そうね・・・』

 やはりドフラミンゴには全てお見通しのようだと、シルヴィアは彼らしい励まし方に苦笑いを浮かべて頷いた。だが、それでも気持ちは沈んだままだった。


「───2年前か・・・・・・・・・お前が母親の名を名乗り・・・[スペード海賊団]の船長として卓抜した力と速度でこの海を駆け上がっていった時・・・我々はようやく気づいたのだ・・・ロジャーの血が絶えていなかった事に!!」

 場のざわめきが少し落ち着き始めた頃、センゴクは再び語り始めた。

「──だが、我々と時を同じくしてそれに気づいた″白ひげ″は、お前を次の″海賊王″として育て上げるべく、かつてのライバルの息子を自分の船にのせた・・・!!」
「!!?」
「違う!!! おれがオヤジを″海賊王″にするために船に・・・」
「──そう思ってるのはお前だけだ。現に、我々がウカツに手を出せなくなった。お前は″白ひげ"に守られていたんだ!!!」
「・・・・・・・・・・・・・・・!!」

 エースはセンゴクの言葉に、動揺している様子だ。

「──そして放置すれば必ず、海賊次世代の頂点に立つ資質を発揮し始める!!! だからこそ今日ここで、お前の首を取る事には大きな意味がある!!! たとえ、″白ひげ″との全面戦争になろうともだ!!!」

 センゴクがそう声高々と宣言すると、海兵達がウオオオオと雄叫びを上げた。

 その時、突如堅く閉じられていた門が開き始めたと思ったら、続いて突如どこからか海賊船が何隻も現れた。海賊船を確認し、海兵達はすぐさま武器を構えたりと戦闘態勢に入った。

「海賊船の大艦隊だァ!!!」

 ″遊騎士ドーマ″、″雷卿マクガイ″、″ディカルバン兄弟″、″大渦蜘蛛スクアード″、いずれも新世界で名の轟く船長達がマリンフォードに現れた。だが、それだけではなかった。

「!!?」

 最初に現れた彼等に続くように、続々と他の海賊船も現れたのだ。

「″白ひげ″はどこだ!? 確認を!!!」
「総勢43隻、″白ひげ″と隊長達の姿はありません!!! しかし、間違いなく″白ひげ″の傘下の海賊達です!!!」
「攻撃しますか!!?」
「まだ待て!!! ″白ひげ″は必ず近くにいる!!! 何かを狙ってるハズだ!!! 海上に目を配れ!!!」

 彼等もまた、エースを奪還する為にマリンフォードへと来たのだろう。

『!・・・・・・』

 その時、湾内の海底の方からゴボゴボと、まるで水の中で空気が漏れた時の様な音が、聞こえだした。人より耳がいいシルヴィアが瞬時に気づくと、水面に視線を向けた。恐らくまた白ひげの傘下の海賊か、白ひげが現れるのだろう。当然だろうが、他の者達はその事にはまだ気づいていなそうだ。

『・・・・・・』

 シルヴィアがちらりと処刑台の上にいるエースを見ると、現れた海賊達を見て驚きのあまり言葉を失っている様子だ。それを確認し、シルヴィアはエースから視線を外して、再び海賊達を見詰めた。

「フッフッフッフッフッフッ!! コリャ面白ェ・・・・・・!! ゾクゾクしてきたぜ!!! 早く来い″白ひげ″!!!」

 この戦争に乗り気なドフラミンゴと違い、シルヴィアは乗り気ではなくなってしまった。エースの父親の件を知ってしまってからだ。だからシルヴィアは、ドフラミンゴと自分を攻撃してきた海賊だけ攻撃する事にした。

──ゴボゴボ
「!」

 すると、今度は先程より遙かに大きな音量で、ゴボゴボという音が聞こえだした。これには流石に気づくものがいたようで、驚いた様に辺りを見回している。

──ゴボボ・・・
「! まさか・・・・・・!!」
「え?」
「どこからだ!?」

 まるで地響きの様に聞こえだした音に、やがて気づかない者はいなくなり、ざわざわと騒がしくなった。

「・・・こりゃあとんでもねェ場所に現れやしねェか・・・!?」
「武陣を間違えたかねェ」

 ざわざわと騒がしくなった声に混じって、背後からそんなガープと参謀の声が聞こえた。

 その時、ゴボゴボという音が近くなり、シルヴィアが湾内の海底に視線を向けると、そこには船の影の様なものが現れていた。それに気づいたセンゴク達が、驚きの声を上げた。

「湾内海底に影が!!!」
「まさか・・・・・・!!!・・・そうだったのかあいつら全船・・・!! コーティング船で海底を進んでたのか・・・・・・・・・!!!」

 センゴクが驚きの声を上げた時、パアアアンというシャボン玉が割れた様な音と同時に、クジラの様な形の大きな船が現れた。白ひげの船だ。
 続いて、同じ形の船が3隻現れた。隊長達が乗っている船の様だ。

「湾内に侵入されました!!! 14人の隊長達もいます!!!」

「″白ひげ″・・・・・・・・・!!!」
「グララララ・・・何十年ぶりだ? センゴク」

 白ひげの乗る船、モビーディック号の甲板に、″白ひげ″エドワード・ニューゲートが姿を現し、そう言った。だがセンゴクは白ひげの問には応えず、忌まわしそうに見つめている。

「おれの愛する息子は無事なんだろうな・・・・・・・・・!!!!」
「!!!」
「・・・・・・!!!」
「グラララララ・・・・・・!!! ちょっと待ってな・・・・・・・・・エース!!!」
「オヤジィ!!!!」

 白ひげは、処刑台の上にいるエースを鋭い眼差しで見詰め、そう言った。

『・・・・・・・・・』

 この時、シルヴィアは思ったのだ。お父様の友達の息子は、海賊王が父親という出生の所為でさぞや苦労してきたのだろうが、沢山の人に愛されているんだと思った。この場にいる多くの海賊達が皆、エースを奪還する為に来たのだから。そう思い、シルヴィアは僅かに微笑んだ。


TO BE CONTINUED