story.21

「オヤジ・・・・・・・・・みんな・・・・・・・・・おれはみんなの忠告を無視して飛び出したのに、何で見捨ててくれなかったんだよォ!!! おれの身勝手でこうなっちまったのに・・・・・・・・・!!!」
『・・・・・・何だか訳ありのようね・・・』

 エースの悲痛な叫びを聞き、シルヴィアはそう思った。だが事情は何にせよ、見捨てる事が出来なかったからこそ、自分を助けようと戦争を覚悟でここまで来てくれたっていうのに、その言葉はないんじゃないかとシルヴィアは思ってしまった。ここはやはり、素直にありがとうと助けられるのが一番だろう。

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・いや・・・おれは行けと言ったハズだぜ、息子よ」
「!!?・・・・・・・・・・・・・・・!!?・・・・・・!! ウソつけ!!!」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「バカ言ってんじゃねェよ!!! あんたがあの時止めたのにおれは・・・」
「おれは行けと言った──そうだろ、マルコ」
「ああ、おれも聞いてたよい!! とんだ苦労かけちまったなァ、エース!!」

 白ひげ海賊団の1番隊隊長のマルコのその言葉に、エースは何か言いたそうな顔をしていたが、黙り込んでいた。

「この海じゃ誰でも知ってるハズだ、おれ達の仲間に手を出せば一体どうなるかって事くらいなァ!!!」
「お前を傷つけた奴ァ誰一人生かしちゃおかねェぞエース!!!」
「待ってろ!!! 今助けるぞオオオ!!!」
「・・・・・・・・・・・・・・・!!!」
「覚悟しろ海軍本部ーーー!!!」

 白ひげ海賊団の方から、ウオオオオという雄叫びが上がった。その時、突如ズズズズと大きな地鳴りがし始めた。

「『!!?』」
「・・・・・・・・・・・・・・・!!!」
「何だこの地鳴りは・・・・・・!!!」

 地鳴りの正体は、白ひげことエドワード・ニューゲートのグラグラの実の能力だったのだ。地鳴りはやがて、大きな津波へと変わった。

「勢力で上回ろうが勝ちとタカをくくるなよ!! 最期を迎えるのは我々かも知れんのだ・・・・・・・・・あの男は世界を滅ぼす力を持っているんだ!!!!」

 世界政府vs海賊艦隊の戦争が、今始まった。
攻め入るは──[白ひげ]率いる新世界47隻の海賊艦隊。迎え撃つは──政府の二大勢力[海軍本部][王下七武海]。誰が勝ち、誰が敗けても時代が変わる。

「津波だァ〜〜〜〜〜っ!!!」

 白ひげが最初に仕掛けて来ていた地鳴りが海軍本部全体を覆う程の津波へと変わり、海軍本部へと襲いかかろうとしていた。能力者が多くいる中、こんな津波が襲いかかってきたら、ひとたまりもないだろう。

「何て力だ・・・・・・・・・!!! まさに伝説の怪物!!! フッフッフッ」
『わたし達は能力者・・・こんな津波が襲いかかって来たら不味いわね・・・・・・!!』

 シルヴィアがどうにかしなければと考えている時、海軍大将の1人の青雉ことクザンが前へ飛び出してきた。

「″氷河時代(アイスエイジ)″!!!」

 青雉が能力を使うと、襲いかかろうとして来ていた大きな津波が凍った事により、止まった。

「″両刺矛(バルチザン)″!!!」

 続けてクザンは白ひげに向け、氷で作った複数の剣を放ったが白ひげに届く前に、彼の能力でクザンの身体もろとも粉砕されてしまった。クザンは粉砕される際、能力で海面を凍らせ海賊達の船の動きを封じた。だがその事により、今まで海が広がっていて此方側に来れなかった海賊達に、道を作ってしまった。

『津波を止めてくれたのはありがたいけど、彼等に足場を作ってしまったわね・・・』
「シルヴィア、おれから離れるなよ」
『ええ、わかっているわ』

 海賊達が足場が出来て攻め入ろうとしているのを見て、ドフラミンゴが言った。そんなドフラミンゴに、シルヴィアは頷いた。
 そして、海兵達が凍って動けない白ひげの海賊船を破壊しようと砲撃したが、船に届く前に白ひげ海賊団の隊長達が一斉に出て来て大砲を破壊されてしまった。そのままの勢いで湾内に攻め入ろうと、他の海賊達も一斉に船から降りて来た。それを見て、シルヴィアが前へ出た。

「何だシルヴィア、もうやんのかァ? フッフッフッ」
『ええ、敵の数を減らそうと思って』
「キシシシ!! ″白狐姫″の力がどれ程のモンかお手並み拝見だな!!」

 シルヴィアは、流石に47隻もの海賊艦隊が攻め入って来たら厄介だと判断し、湾内に来る前に敵の数を減らす事にした。ドフラミンゴがやられるとは思わないが、念の為だ。

「気をつけろてめェら!! ″白狐姫″が何か仕出かす気だ!!」
『″尻尾縛り(テイルリストレイント)″!!!』

 シルヴィアの様子に気づいた白ひげがそんな声を上げる中、シルヴィアは10本の尻尾を素早く伸ばし何十人かを捕らえると、高くに持ち上げてきつく縛り付けた。

「何だこの尻尾は!!?」
「く・・・苦しいっ!!!」
『″叩(スラップ)″!!!』

 尻尾で縛っている海賊達をそのままひっくり返し、地面に頭から叩き付けた。すると海賊達は、強い衝撃を頭に与えられた事により、気絶した。

 続けて攻撃を仕掛ける為、腕を一度クロスさせ勢いよく開いた。

『"大竜巻(ラージトルネード)″!!!』

 シルヴィアはカゼカゼの実の能力を使い、風を海賊達のいる中心辺りに飛ばすと、その風は巨大な竜巻へと変わった。

「竜巻だァ〜〜〜〜っ!!!」
「デカいぞ!!! 逃げ切れねェ!!!」
「ギャア〜〜〜っ!!!」

 巨大な竜巻に巻き込まれた何万人もの多くの海賊達は、悲鳴を上げながら飛ばされていった。
 シルヴィアの強力な連撃を受けた事により、海賊達の戦力は大分減った。それを見ていた海軍側から、ウオオオオと歓声が上がった。

「すげェ!!! さすがシルヴィアさんだ!!!」
「中々やるじゃねェか!! キシシシ」
「フッフッフッ、シルヴィアの実力はまだまだこんなもんじゃねェぜ!!」

「くそっ!! おれの仲間をよくも!!!」
「カゼカゼの実の能力に加え白狐一族の力・・・・・・厄介な奴を率いているなセンゴクめ」

 歓声を上げる海軍側とは反対に、海賊達は怯んでいる者もいれば、殺気を向けてきている者もいた。シルヴィアは、自分とドフラミンゴに向かってくる敵には迷わず攻撃する。

「怯むなてめェら!!! 行くぞ!!!」
「ウオオオオ!!!」

 シルヴィアの攻撃で勢いが弱まっていたが、再び勢いを取り戻して海賊達が向かってきた。

 戦争はまだまだ始まったばかりだ──


TO BE CONTINUED