story.3

「おっ、おい!!見ろよあのナイスバディな怪し気の女!!顔は見えねーが上玉に違いない!!」
「ほんとだ!!きっと上玉だ!!」
「でもあの女、なんか見覚えがあるよーな…!!」


「はっ!!!あ、あいつはもしかして…っ!!?あの腰の双剣は、間違いねェっ!!!」
「王下七武海の1人の懐刀で、懸賞金元5億6000万ベリーの"白狐姫"のシルヴィアだッ!!!!な、なんでこんなところにっ…!!??」






ルフィ達が噂をしている頃、シルヴィアは激しい騒音に気づきそちらに歩みを進めた。

その途中、住民がその激しい戦闘を目にして逃げて行く中、シルヴィアの姿が目に入った人達は怪し気だが美女の雰囲気に立ち止まり見惚れていたが、その彼女の正体に気づくと今度は一気に表情を変えて真っ青に変わる。
そんな彼等を気にもとめずシルヴィアはどんどん歩みを進めて行く。

暫く歩みを進めると見えたのは懐かしく、見覚えがある姿の人物が目に入った。周りにウルージとドレークがいたが、それすら目に入らず驚き目を見開いてその人物を凝視していた。

だが、直ぐに嬉しそうに微笑みその人物に駆け寄った。


その人物はトラファルガー・ローである。見知った姿より大分成長していて、身体も大分大きくなっていたが間違いないと確信していた。


『ローっ!!!』
「!!??…誰だっ!!??」
『え?……まさか忘れちゃったかしら?』
「っ!?……いや、覚えている!!忘れる訳ないな」

シルヴィアはローの前まで行き嬉しそうに話しかけた。
だが、ローは突然現れた怪し気な変装をしている女に驚き距離を取った。

そして、その女を上から下まで見て最初は誰かわからなくて警戒していたが、腰にある双剣、更には胸元に見覚えのあるマークの刺青を見て記憶の中の1人の人物と重なり、かなり動揺しながらも元々警戒していたより更に警戒を強めた。

「なんであんたがこんなとこにいる?さっきすれ違った奴が、ドンキホーテ海賊団の船を見たと言っててまさかとは思ったが…!!あいつも一緒か!?」
『いいえ、あの人は今はお仕事中でこの場にいないわ。それにあなたに会ったことも言わないでおくわ。』
「そうか…」

その会話の後に暫く沈黙が続いた。ローは無言で目の前のシルヴィアを相変わらず警戒しながら鋭い目で睨みつけていた。
それにシルヴィアは悲しそうな顔をしてローを見つめている。

いつの間にか、先程までいたウルージとドレークは消えていた。

暫く無言の見つめ合いが続き気まずい雰囲気になりけていたが、シルヴィアがサングラスを上にズラし、昔は大好きだった微笑みを浮かべて沈黙を破った事で、気まずい雰囲気にはならなかった。

『うふふっ、元気そうでよかったわ、ロー。ちょっと隈が手配書で見た時より酷くなってる気がするけれど、ちゃんと睡眠取れてるの?』
「(おれの手配書を見たのか)…余計なお世話だ。」
『でも、随分男前になったし身体も大きく逞しそうになったわね。とっても素敵よ』
「っ!?……そーゆーあんたは昔となんも変わらないな」

幼き頃の自分が想いを寄せていた女性に笑顔で褒められ、ローは恥ずかしさからと真っ赤になってるであろう顔を隠すために、視線を外すことで逃れた。

敵同士になってからはシルヴィアへの想いを断ち切ったつもりでいたが、いざ本人を目の前にすると断ち切ったつもりでも心の片隅にはいたシルヴィアへの想いが再び溢れ出しそうになる。そのことに嫌悪感を感じ内心舌打ちをした。

本当にシルヴィアは昔から何も変わっていなかった。この本当に生きてるのか怪しいくらいに人形の様に愛らしくも神秘的で儚な気な見た目や、全てを優しく包み込む様な中身が良くも悪くも。
それが更に気持ちを煽る。心の中では更に盛大に舌打ちをした。

──早くこの目の前の女から距離を取らなければ、完全に取り返しがつかなくなる。

そう思い、自分の計画を遂行するのにこの想いは邪魔以外の何者でもないとローは考え、直ぐ様行動に移すために口を開いた。

「おれはあんたに構っている暇も、殺り合う暇もない。悪いが行かせてもらうぞ」
『!!…ねぇ、ロー?戻ってくる気はないの?わたしもあの人も、あなたの帰りを待って…』
「ふざけるな!!戻る訳ないだろ!!おれはずっとアイツを倒すためのことだけを考えて生きて来たんだ!!次そんなふざけたこと言ったらアンタでも殺す!!!」
『っ!!……』

ローは立ち去ろうとした時に、シルヴィアの言葉を聞いて彼女が全て言い終わる前に振り返り、殺気を込めて言い返した。
その言葉にシルヴィアは目を見開き、今にも泣きそうな顔をした。そんな彼女の顔を見てローは直ぐにでも駆け寄り抱きしめたい気持ちになったが、視線を直ぐに外して何とか気持ちを押さえ込みその場から立ち去った。
彼女の言葉を聞こえないふりをして……。

『……それでも、あなたは今でもわたしの大切な子なの。あの時からずっとそれは変わらない……』

既にシルヴィアに背を向け、歩いているローは知らなかった。この時シルヴィアがどれ程切な気な目で自分を見ていたかを──