story.7

__「その麦わら帽子は精悍な男によく似合う。会いたかったぞ、モンキー・D・ルフィ」


突然そう言われてルフィは眉を顰めた。
どうゆうことかルフィが聞こうとしたその時、今までサンジとローの影で見えなかったシルヴィアが彼等の間から抜け出し、姿を表した。その姿をレイリーが見て目を見開いた。

「おおっ!!君もいたのかシルヴィア!!相変わらず気配を消すのが上手いな!!全然気づかなかったぞ!!」
『うふふっ、久しぶりね、レイリー。元気そうでよかったわ。半年ぶりね』

レイリーはシルヴィアと知り合いだったのだ。シルヴィアは何かとよくシャボンディ諸島に寄ることが多いので、その際にたまたま飲んでいたバーで知り合ったようだ。二人は半年ぶりの懐かしい再会に嬉しそうにしていた。
そんな彼等を邪魔することも出来ず、ルフィは開きかけた口を閉じて話が終わるまで待っていた。

「……それにしてもシルヴィア、君は相変わらず美しいな!!何度見ても見惚れてしまうよ」
『あらそう?それは嬉しい限りだわ、うふふっ』
「どうだい、この後1杯やらないか?」
『あらあら、それは嬉しいお誘いだけどごめんなさいね、レイリー。この後行くところがあるの』

レイリーのお誘いにシルヴィアは本当にとても残念そうに断った。レイリーもシルヴィアに断られてとても残念そうにそうか、それなら仕方ないと言った。
海軍本部に行く用事がなければ、一緒に飲みに行っていたことだろう。

「あ!!なァお前ハチの傷治せねェかな!?」

突然ルフィが何かを思い出した様にそうシルヴィアに言ってきた。

「このクソゴム!!女神様に無茶言ってんじゃねェ!!」
「待ってサンジ、彼女は白狐一族の者よね?聞いたことあるわ、生まれつき高い治療能力があるって」

ルフィに飛びかかろうとしていたサンジを引き止め、ロビンがそう切り出した。

「わたしも聞いたことあるわ!
ねえ、お願い出来ないかしら!?」
「なっ!!ナミさんまで…!!」
「なァ、おれからも頼むよ!!酷い怪我なんだ!!」
『…………』

ナミとルフィ、チョッパーからものお願いされ、シルヴィアは考え込む様な素振りを見せた。その彼女の様子を周りの者は黙って見つめた。

『………いいわよ。』
「「「「!!」」」」
「本当か!?」
『ええ、あなた達に恩を売っておくのもいいかと思ってね』

そう不敵に笑って言ったシルヴィアに、彼女にお願いしていた者は嬉しそうな顔をし、サンジはいつも通り目をハートにし、ローは呆れていた。

「ありがとう!!お前いい奴だなァ!!」
「ありがとう!!助かるわ!!」
「そんな優しいあなたも素敵だァァ!!{emj_ip_0834}」
『でも、1つ問題があるの。高い治療能力はあくまでも自分にしかあまり意味はなくて、外傷しか治せないけどいいかしら?』

少し申し訳なさそうにそう言ったシルヴィアに、麦わらの一味達は頷いた。それを確認して、シルヴィアは苦しそうに息を吐いて倒れているハチに近付いた。



『あなたの傷治すようにお願いされたから、外傷だけで申し訳ないけど治すわね』
「ニュ〜っ、十分だ!!ありがとう!!」
『じゃあ、始めるわね』

そう言うとシルヴィアは白狐の姿になった。今までなかった白く長い耳が生え、白く長い手触りが良さそうなふさふさの十本の尾、鋭く尖った黒く長い爪、そして瞳は財宝の様に輝いた金色に変わっていた。初めて見るものは驚愕し、ローは長年焦がれていた相手を見つめる様な目で見ている。昔を思い出しているのだろう。

様々な視線が向けられる中、シルヴィアはハチを治すことに集中していて、その鋭く尖った黒い爪が伸びてる手を、ハチが負った傷に翳した。

次の瞬間、翳した手から眩しいくらい金色に輝く美しい光が溢れ出てきた。その光はどんどんハチの傷に吸収される様に、消えていっている。白狐の姿で治療する姿は酷く幻想的で美しく、見る物を見惚れさせた。

「凄い!!綺麗だわ…!!」
「ほんとね…!!」
「やっぱり素敵だ、シルヴィアちゃん…
!!」

みんなが見惚れる中、光を吸収した傷がみるみる塞がっていった。その様子を見て、再び初めて見るものは驚愕した。そして、治療を終えたシルヴィアは白狐の姿から人間の姿に戻した。

「すげェ!!ほんとに治った!!」
「あなた、本当にありがとう!!」
「ハチを助けてくれてありがとなーっ!!」
「ニュ〜〜っ、大分楽になった!!ありがとう!!」
『ええ。──でも、あくまでも外傷だけだから無理に動くのは止めた方がいいわ』

嬉しそうに笑顔を浮かべてお礼を言ってくる麦わらの一味に、シルヴィアは優しく微笑んで言った。

『それじゃあ、治した事だしわたしはそろそろ行くわね』
「ええええっ!!?もう行っちまうのかい、シルヴィアちゃん!!?」
『ええ、ごめんなさいね。また会うことがあったらよろしくね、騎士さんに麦わらの一味さん達』

ドフラミンゴが待ってるので、シルヴィアは早く向かわないといけないのだ。

「あァ!!本当にありがとう!!また会えたらいいなァ!!」
「絶対また会おうね〜!!{emj_ip_0834} シルヴィアちゅわあぁあん!!!{emj_ip_0834}」
『うふふふっ!!ええ、またね。』

麦わらの一味達の笑顔で頷いてくれる様子を見て、シルヴィアは嬉しそうに笑い、面白くなさそうな顔をしているローの方を見た。

『ローもまた会いましょうね、』
_ちゅっ
「っ!!!??」

何があったか説明しよう。シルヴィアがローの唇に触れるだけのキスを落とした。それを見たサンジはあまりのショックに、ハンコックの能力にやられたかの様に石化していた。チョッパーが必死に呼びかけているが、石化が解ける様子はない。
そしてローは、突然のことに頬を真っ赤に染め、彼女が触れた唇に手を当て放心していた。

『うふふっ、それじゃみなさんまたね』

シルヴィアは頬を真っ赤に染めて放心しているローを満足気に見た後、唖然と今のやり取りを見ていた他の者の方へ振り向き挨拶を交わした。
そして穴が空いてる天井へと飛び上がり、有り得ないジャンプ力を発揮したシルヴィアはその場から去っていった。









シルヴィアが去った後、オークション会場にいるその場の全員がしばらく呆然としていた。

「え、え〜〜〜〜っ!!??」
「なんだったんだ今の!!?」
「てか、なんだあのジャンプ力!!?有り得ねェ!!!」
「ハッ!!──…て、てめェ羨ましいじゃねェかこの野郎!!!唇にき、ききキスされやがってェェ!!!やっぱり気に食わねェ野郎だぜチクショーッ!!!」

我に返った人達はまた様々な反応を見せた。
サンジは唇にキスされたローを見て、相当ショックがでかいのか号泣しながら悔しがった。今にも女子みたいにキーーーーッとハンカチを噛みそうな勢いだ。

「珍しい事もあるもんだな。彼女は親密な関係になった者には頬にキスすることはあっても、唇にキスすることはないんだがな…。ふむ、君は愛されているな羨ましい限りだ」
「……フンっ」

ローはレイリーの言葉に頬を染め、帽子を深く被って表情を隠した。ローの頭の中では、レイリーの言葉が何度もリピートされていた。

──君は愛されているな羨ましい限りだ。

どうゆうことだ?なぜあいつはおれにキスをした?……いや、いくら考えていても仕方ねェ。これは本人に聞くしかねェな…。

ローの頭の中はシルヴィアのことで一杯になっていた。そして、ローはシルヴィアへの想いが彼女に口付けされたことにより、抑えていた想いが爆発した。計画の邪魔になることはわかっていても、抑えきれずにいたのだ。
それならば、計画を立て直すしかないだろう。その計画が明かされるのはまた別の話。