story.12

『──…んぅ……え?』

シルヴィアは目を覚ますと、最初に映り込んで来たのは見慣れる煌びやかとした豪華な天井だった。金を基調とした天井で豪華なシャンデリアがついている。

──ここはどこ…?城じゃない…?

とりあえず現状を把握するために、シルヴィアは上体を起き上がらせた。

「─…ん……シルヴィア…」
『え……?』

斜め下辺りで何やら小さな声で自分の名を呟くのが聞こえ視線をそちらに向けると、ロシナンテが幸せそうな顔で寝てるのが目に入った。

──え?今のロシー?

信じられない気持ちになり、シルヴィアはもう一度耳を澄ませてみることにした。

「──…シルヴィア…」
『!!……』

今度はシルヴィアの名を呟くのがはっきりと聞こえた。ロシナンテが起きたのかと思い顔を覗き見るが、やはり幸せそうな顔で寝ていた。

『ぷっ…!!』

シルヴィアの夢でも見てるのかと思うと何だか可笑しくなり、シルヴィアは声を抑えてくすくすと笑った。

もうちょっとロシナンテの寝言を聞いてみたい気持ちになったが、シルヴィアは今自分がどこにいるのか把握するために、ベッドからそっと下りる事にした。

「─…シルヴィア…いく…な……」
『え…!?』

ベッドから下りようとした時、ロシナンテとは別の声がシルヴィアを悲痛な声で呼び止める声が聞こえ驚いて視線をそちらに向けると、そこにはサングラスをつけていないドフラミンゴがいた。どうやら一緒のベッドで3人で寝ていた様だ。

『ドフィ…?』

あまりにも悲痛な声で呼ばれたのでシルヴィアは心配になり、ドフラミンゴの顔を覗き込んだ。
すると、ドフラミンゴもロシナンテ同様寝ていた。だが、幸せそうな顔で寝ているロシナンテとは違い、ドフラミンゴは魘されている様で、眉間に皺を寄せ額から汗を垂らしていた。

「行くなシルヴィア…!!」
『!!大丈夫、わたしはここにいるよ…?』

シルヴィアはドフラミンゴを安心させる様に手を握ってそう言った。すると、少しだが安心した様に顔を綻ばせた。それを見てシルヴィアは安心してほっと息を吐いた。


──ガチャ

『!!』

その時、大きな扉が開いた。ドフラミンゴの手を握ったまま驚いてそちらに視線を向けると、そこには見知った姿が現れた。そこには父のアランダインの友人のホーミングがいた。

『ホーミングさん!』
「声が聞こえて様子を見に来たんだ……どうかしたか?」

ホーミングはシルヴィアがドフラミンゴの手を握っているのを見て、怪訝そうに聞いてきた。

『ドフィがうなされてて、わたしに行くなって……』
「わはははっ!ドフィは本当にシルヴィアちゃんが大好きだな!」
『えっ……』

笑いながら言われたホーミングの言葉に、シルヴィアは自分の心臓がドキッとしたのを感じた。

──なにこれ?病気?

シルヴィアが小首を傾げて自分の胸に手を当てた。その様子を見たホーミングが驚いた顔をしたが、直ぐに嬉しそうに微笑んだ。

『あの…?』
「いや、何でもないから気にしないでくれ!とりあえず、お腹空いたろう?朝食にしよう!」

気になりはしたが、その言葉に頷いた。ドフラミンゴは今は落ち着いている様だし、もう大丈夫そうだ。それを確認してそっとドフラミンゴの手を離した。

『はい……あの、ところでここはどこですか?』
「ここは聖地マリージョアにあるドンキーホーテ家だ。暫く君を預かる事になったんだ」
『え!?』

微笑んで言われた言葉に驚愕した。いつそんな話になったのだろうか。起きたら知らない所にいた時よりも驚きである。

『よ、よろしくお願いします…?』

戸惑いつつもお世話になるのでそう言うと、ホーミングは笑顔で頷いてくれた。

「よし、じゃあこっちにおいで!もう朝食の準備は出来てるからな!」

そう言ってホーミングは扉を開けて待っていてくれているので、シルヴィアはベッドから下りてそちらに行き、ホーミングと共にこの場を後にした。


そしてリビングに着くと、まずそのリビングの豪華さに驚いた。ダイヤモンドで出来ているシャンデリアが何個もついていて、水槽があったり金色のライオンなどの高そうな像が並んでいたりして、ここが本当にリビングなのかと目を疑った。思わず目をごしごし擦って2度見してしまった程だった。

「フッ、気に入ってくれたかな?」
『す、凄いですね…!!』

そう言うのがやっとだった。それくらい凄かった。シルヴィアが住んでいる城とは大違いの豪華さだった。

「さあ、座ってくれ!」
『はい…!』

ホーミングに言われシルヴィアは大きな椅子に座り、目の前の椅子にホーミングが座った。
そして目に入ったのは、大きなテーブルの上に美味しそうな色とりどりな料理が並べられている光景だった。どれも美味しそうで、食欲をそそる匂いがした。

「気に入ってくれるといいんだが…」
『わあっ!!美味しそう!!』
「そう言ってくれてよかった!沢山あるからいっぱい食べてくれて構わないからな!」
『いただきますっ!!』

ホーミングに笑顔で言われ、シルヴィアは嬉しくなり自然と笑顔を浮かべて料理に手を伸ばして食べ始めた。まず最初に目につけたのは、美味しそうな匂いを放つ良い焼き加減で焼かれてるソーセージだった。それをフォークで刺し、口に運んだ。

そして口に含んだその時──


──ガッチャン!!!
「父上!!!シルヴィアはどこだえ!!?」

リビングの扉が勢いよく開き、中から切羽詰まった様なドフラミンゴがそう叫ぶ様に言ってリビングに入ってきた。

「は…!?」
『へっ…!?』

突然の事に驚いてホーミングと一緒に間の抜けた声を出し、口に含んだソーセージをそのままに、きょとんとドフラミンゴを見つめた。