僕の心臓を食べて、


※転生ネタ
※前世ちょぎさに♀からの今世ちょぎモブ♀でちょぎ←さに♀



私が全てを思い出したのは知らない女と仲良く歩いている所を見つけた時だ。泡沫の如く弾けては流れて同化していく記憶に胸を掻く。咄嗟に彼らの死角に隠れて、込み上げる感情を落ち着かせようとした。けれど、無理だった。自然と溢れ出る涙を拭うことさえ出来ない。なんて酷いんだろう。私はただただ悲しみを抱き続けるしかないのだ。
この想いごと、抉ってしまいたい。
鼓動が五月蠅くて仕方ない。無意識に爪を立ててしまったのか皮膚に痛みが走るけれど、今の私にはどうでもいい事だった。
いっそなくなってしまえばいい。そうしたらこんな想いも、何もなくなって、ただあの頃の思い出を抱いたまま、私は消えれるだろう。
けれど浮かんだその思想も一瞬にして冷水を浴びた様に醒めてしまった。なんて無意味な事考えているのかと自嘲が零れ落ちる。
「……馬鹿々々しいわね」
意味のない事で泣いて、縋りついて。
そもそも私はもう、彼の主じゃない。彼だって刀でなくて、ヒトの子だ。誰かと付き合って、結婚して、家庭を持つのも彼の当然の権利。その隣に立つのが私じゃなくて、全く知らない女なのも全部彼の、山姥切の自由だ。私以外に笑い掛けて、言葉を紡ぐのも。今は他人である私が口を出すことじゃない。そう、今の私と山姥切は顔も知らない赤の他人だ。
ぽろぽろと零れ落ちる涙と共に居れば、何時の間にか山姥切達は消えていたけれど。私はもう暫くそこから離れられないでいた。思い出さないでいたかった、そうすれば貴方を忘れたままでいれたのに。ずるずると座り込んで、瞼を閉じた。