拝啓、キミへ


※某曲にインスピレーションされた結果
※独白のみ
※黒子が人外


僕≠ェ僕≠ニして何時頃から存在したのかは解りません。気が付いた時から僕は僕≠ニして存在していました。僕自身にも、僕≠ェ何なのか解らない。解るのは人ではないと云うことだけでした。
僕はヒトに紛れて、ヒトの中で過ごしました。彼等から様々な事を学び、とても有意義でした。
ですが、それはあっと言う間の時間だ。
何時までも老いる事のない僕を、人々は次第に嫌悪し始めました。戸惑い、悲しみ、苦しみ、疑問。
僕のこの抱いた感情は、次第にヒトに対する嫌悪と憎悪に取って変わり始めました。だから僕は自身に魔法を掛けたのです。僕に対する認識を薄くする事と、永遠の魔法を。
嫌悪と憎悪を抱いたまま、僕は村を出ていきました。ヒトと関わるのはもう嫌でした。大体の事はもうヒトから学び終えたので、問題はありません。ヒトが寄り付かなさそうな森を見つけ、その奥深くに僕は住み始めました。家を創り、持ち出した本を読み漁り、僕は知識を吸収し続けました。
そんな中にも、ヒトはやってきました。静寂を破られる度、僕は人々を追い払っていく。それを繰り返していく内、何時しかヒトは来なくなり静寂が戻ってきたのです。
そうして幾年経ったのでしょうか。久々にヒトがやってきました。
今まで通り追い払おうとして、初めて失敗しました。
僕自身が掛けた魔法の影響で、僕から行動を起こさないと気づかなく怖気ついていたのにそのヒトは帰らないと云ってきました。そして、宣言通り帰りはしませんでした。僕はヒトとは関わりたくありませんでしたから、段々と口論を続けていく内にそれすらも嫌になり、僕は新しく住人を受け入れる事にしました。部屋に引き籠ろうと思ったからです。
ですが、新しく住人となったヒトはそれを赦しませんでした。僕はヒトではないので食事が要らなかったのですが、何を思ってか僕の分まで用意をしました。そして引き籠っている僕を無理矢理連れ出して食事を一緒に取らせました。
そうして、本しかなかった家の中に次第にヒトの生活品らしいモノが増え始めました。僕に構うのも相変わらずです。
……。
………………。
僕は、忘れていました。ヒトは、時間≠ェあるのだと。
最期まで、彼は僕を気に掛けていました。そして、笑っていました。悲しんではいません、恐怖も感じてはいないようでした。
僕は、初めて泣きました。そう、失って初めて気づいたのです僕は彼が好きだったのだと。
……いえ、必死になって目を逸らし続けていただけで、とうの昔から彼を好きだった。忘れずにいた嫌悪と憎悪の感情で、それを認めたくなかっただけだ。
ヒトも色んなのがいるって認めて伝えれていたら。そうしたら、良かったんだ。僕はまだ、何も云えてない。伝えられていない。だけど、その彼はもう、ここにはいませんでした。昔に掛けた魔法で、僕は終われませんでした。彼の後を追うのは、無理でした。……尤も、そんな事を彼は望みはしないでしょうけれども。
そうして何時まで泣いていたのか、僕には解りませんでした。けれど、風化した彼の遺体で大体の時が経過したのは解りました。
……、そう、ですね。
泣くのは、終わりにしましょう。
キミと世界へ行こう。僕の中にある、記憶の中のキミと。キミとなら、どこまでも行ける気がするんだ。そして、願わくばまたキミに逢いたい。巡り合う奇跡を信じて、僕は長年住みついた家を出る。
何百年、何千年と掛かっても、僕は、火神君。キミを捜し続ける。