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「――と、云うわけです陛下」
アッシュとナタリアを連れて俺は登城する事にした。ナタリアには仲介者として必要だし。おまけで何故かガイも付いてきた。付いてきてどうすんのかね。
因みにアッシュにざっと話を訊けば、ラスボス(因みに名前はヴァンらしい。本名じゃなくて通称との事)の居ないときを見計らって戻ってきたとか。まー御苦労なこった。
ナタリアの仲介で俺らは王サマの私室に通される。アッシュと俺の姿を見て、王はひどく驚いたようだった。
其れで本物のルークはこっちだと説明する。のが、冒頭の話だな。
王サマは何も云わなかった。あれ、もしかして信用してない?うーん、なら此処は御本人に説明してもらおう。
俺はアッシュを軽く小突いた。途端に睨まれたけど、王サマの御前だ。何もしてはこなかった。計画通り、ってな。
「……。叔父上。信じられないかもしれませんが、こいつの云ったことは本当です。俺が、本当のルークです」
「ま、待ってくださいまし!貴方が本物のルークと云うなら、わたくしとの約束を覚えていますか?」
アッシュがナタリアと向き合った。ナタリアは縋る様に見つめ返す。ナタリアにとって、約束≠ェ全てなんだろうな。別に好きにすればいいんだけどさ、約束約束ってのはぶっちゃけ重いよな。一歩間違えれば巷で噂のヤンデレってやつになるんじゃないか?
「――何時か、俺達が大人なったらこの国を変えよう。貴族以外の人間も、貧しい思いをしないように。戦争が起こらないように」
「……死ぬまで一緒にいて、この国を変えよう――…貴方が、本当のルーク、なのですね」
ナタリアが感極まって泣き出す。へー、さっきのが約束って訳か。無難。
つーか、王サマが居る前で云っていいわけ?それって王サマの政治が悪いって事だよな。まぁ、預言スコアに頼りっぱなしらしいし?いいのかな。
因みに預言ってのは字の通り予言の事だ。この世界では当たり前に普及している。依存つっても問題ないな。
「……そうか。真実、なのだな……」
娘の様子を見て、王サマは深い溜め息と共に言葉を吐き出した。
「預言は……狂ってしまったのだな。我がキムラスカの繁栄は……」
「……伯父上。」
「…………何があったのだ。此処に来るまで苦労したであろう」
王サマの問いに、アッシュは説明する。自分を拐ったのはヴァンである事と、レプリカを複製された事。そのレプリカが主人公(今は俺だけど)。ヴァンの隙を見て戻ってきた、って内容だな。
「ヴァン謡将はなんの為にそんな事を……」
「預言脱却だ。その為に其処のレプリカを俺として連れてきたんだ」
「よーするに捨て駒って奴な」
「……お前は知ってたのか」
知識≠ニしてだけど。へらりと笑って俺はアッシュの言葉を肯定した。
「まぁな。一応、姫サンにも云ったんだぜ?俺は本物のルークじゃないってな。……それで陛下。俺の処分はどうなされますか」
死にたくはない。死んで元の世界に戻れる保証はないし。出ていけと云うなら出るつもりだけど、職とか斡旋してくれたら嬉しいんだけどなー。
「……ルークは此れからどうするつもりだ?」
「俺は、ヴァンの所に戻ろうと思います」
「ルーク!?」
へぇ、意外。あ、其れとも何らかの補正?物語を変えない為の。敵が一人減るからな。
「奴を探るには傍に居る方がいい。それと伯父上。この事は……」
「解っておる。お前の代わりを、このルークにやってもらおう」
王サマが顔を向ける。補正があるとすれば、予想通りではあるな。主人公が居なきゃ、物語は始まらねーから。
「……解りました」
「ファブレ公爵には私から伝えておく。……逢っていきなさい」
王サマの言葉にアッシュは僅かに目を見開いて、はい、と小さく声を上げた。