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「うーん……」
やっぱどれも高いなー……。


説得の末、外に出てもいいと許可をもぎ取った俺は武器屋に来ていた。やりたいことがあるからな。
このテイルズシリーズ。番外編というか、お祭り作品?だけやった事がある。レディアントマイソロジーって奴。
その2と3にある職業がやってみたいと思ったんだ。職業ってのはまぁ、ゲームでよくある戦士、盗賊、僧侶、魔術師ってのな。
で、俺がやりたいのはそのマイソロジー作品の海賊っつークラス。装備は短剣+拳銃。お気に入りの職業だった。折角ゲームのキャラになったんだから、やりたくなるじゃん?技名とかも大体覚えってっし、大丈夫っしょ。本来、ルークは剣士なんだけどまぁ今は主人公俺だし。
そんで、現在短剣を購入するために武器屋ここに来てるって訳だ。拳銃、は譜業銃で代用する。これはもう手に入れたのでいい。
あ、譜業銃ってのは拳銃ってか銃だ。弾がある意味で無限の。別のRPGのゲームだと弾切れを起こせば使えなくなるけど、これはその心配はない。確か、音素フォニムを弾の代わりにしてるんだっけ。
音素ってのは、全ての物質が持ってるもの、か?人間の躯を構成してるし、魔術(このゲーム内では譜術と呼ばれる)を発動するにも必要。音素に働きかけて操る、って訳。因みにこの譜術を使う奴を譜術士フォニマーって呼ぶ。
とまぁ、こんなわけだが。ちょっと問題が発生する。バチカルって物価が高いんだよ。いやまぁ一応王族だし、払えないこともないんだけどさ。
現金は貰えそうになかったので(武器を買うから、って云ってくれると思わねーじゃん?戦うことないんだし)、宝石をくすねてきた。ゲーム序盤でもヒロインが馬車代の代わりにペンダント渡してたし、そういうの大丈夫だと思う。
「お客さん、決まったかい?」
「んー、悩むっすね。どれも高いけど、性能がよい方がいいし」
唸っていると、店員が声を掛けてきた。髪を隠してるため、俺が王族だって事を知らない。多分。やっぱこういうのはお忍びっしょ!
「あ、おじさん。現金の代わりにこれでも大丈夫?」
念のために訊いてみる。駄目って云われたら出直さなきゃなんねーし。
結果は問題ないとの事だった。やったね!
「――済みません」
扉が開く音と、響く声。おじさんがいらっしゃいと声を掛ける。――え、ちょっと待って。
バッ、と店の入口を見遣る。水色の髪の、少年。
黒子だ。黒子テツヤの姿が其処にある。なんで、どうして黒子がこっちに?
俺が呆然とする中、黒子はおじさんと会話をしている。
そういえば。黒子、影が薄くない?主人公ルークになって、当然俺の鷹の眼は失われた。なのに、黒子の姿がはっきりと解るし、おじさんも驚いた様子がない。どゆこと?
「――っ、ちょっと待って!」
用事が終わったのか、黒子が帰ろうと扉に手を掛ける。思わず黒子の手首を掴んで引き止めた。
「……あの?」
黒子が訝しげに(無表情だけど)こっちを見る。その顔には何の感情も見えない――記憶がないのか?
「……わりーな。付き合ってくんね?」
此処だと邪魔になるし、話が出来ない。
構いませんけど、と黒子が云うのを聞くと、俺らは店から出た。ざっと人が来なさそうな場所を探すと、俺は黒子の腕を掴んだまま歩き出した。
あーあ、武器はまた今度だな。