春よ、さようなら





 休日、スマホの通知音で目が覚めた。折角の休みなんだから寝させてよと寝ぼけまなこで画面をタップして通知を確認してみれば、それは臣さんからだった。今度結婚する、と簡素な一文をぼんやりと眺めていたら追加で日時と会場の場所らしき住所が送られてきた。多分、出席するか否か訊いてるのだろう。……ほんと、呆れる。
 臣さんとは高校の時に付き合っていた。臣さんが事故に巻き込まれて記憶を失うまで。その時に何らかがあって他校の女子生徒と付き合い始めたらしい。その事に悲しくなかったっていうと嘘になるけど、臣さんが記憶を失ったって聞いた時点でおれと恋人の関係だった、なんて云うつもりはなかったから別に気にしていなかった。
 けどそれから二年経っておれ達が三年になったある春の日の頃。やっぱり何らかがあって臣さんは記憶を思い出したのか、今まで忘れてた事を謝ったかと思えば改めておれはフられた。おれとしては臣さんが記憶喪失になった時点で別れたと思ってたから今更だ。だけど、臣さんは違うらしい。臣さんはおれに負い目があるのか、互いの家に行き来はなくなったもののそれ以外は変わらずおれを気にかけてきた。おれもおれでやめてって臣さんを避けると気にしてるって思われるし、それが嫌だったから何も云わなかったけど、もうさ、いいよ。臣さん。
 スマホを操作しておめでとうのスタンプを送る。続けて、自分がフった元恋人に結婚式に来るように誘うとか、臣さん鬼じゃない? と送った。スマホの画面を消してまた枕へと顔を埋める。再び意識が沈みそうになった時に通知音がなって、おれは顔を起こす。画面のプッシュ通知を見れば、一言わりぃとメッセージがあった。
 おれのことはもう気にしないで忘れて彼女だけ見てあげなよ、とだけ送り返すとおれは三度枕へ頭を預けて、目を閉じる。
 ……ねぇ、臣さん。おれ、思ってたより臣さんのこと、そういう意味で好きだったみたいだ。