アイラブユー




「――それで、1週間も避け続けたこと。説明、して頂けるんですよね」
壁ドンとは。壁際などに追い詰めて、手を壁に突き迫る行為のことらしい。八重堂から出版されている恋愛小説にそんな描写があったことを思い出した。世の女性はこれに胸をときめかせたりするようだけど、男の俺にはよく解らない。いや、だって怖くない?別の意味でどきどきはするけど。
そして何故か。俺は今、フリンズにその壁ドンをされている。理由はさっき告げられた言葉で察したけど、まさかそこまで気にしてたなんて。
「ご、御免。まさかフリンズがそこまで気にしてたなんて思わなかった。ちょっと、変な依頼を受けたんだ。ネタの為にどうこうって云ってたけど……詳しくは俺も解らない。だからフリンズが悪いわけじゃないよ」
ルカキリのがどうのこうのとか云ってたけどそれがどう俺に関わるのかよく解らなかったし守秘義務もあるからこれ以上は黙ってよう。ふむ、と手を顎に当て何か考えてるフリンズを眺めながらそう思案していると、軈て何か思いついたのかでは、と口を開いた。
「僕も貴方に依頼を」
「え?うん、いいけど……フリンズが俺に?」
珍しいな、と俺が目を瞬いてるとフリンズがええ、と何時もの穏やかな笑みを浮かべ、言葉を紡ぐ。
「とても簡単なことですよ。1週間……いえ、2週間。僕と共に居てください。ただ、それだけです」
そう云って俺の手を取ると、手の甲へ軽く口を落とした。