お姫様には成れなかったの




「あぁ――これが恋、というもの、なんですね」
思わずと云った様子で呟きイルーガかれを見つめるその眼は煌々と輝いていて、綺麗だと思ったのと同時にずきりと胸が痛んだ。
僕にはそう云った感情が解りませんから、貴方をそんな目で見ることが出来ません、とフラれたのが先週の事だった。悲しくないと云えば嘘になるけど、脈はないだろうなと思っていた。それでも伝えたかったのだ、自分の気持ちを。申し訳なさそうに眉を下げるフリンズに、気にしないでと返してそれでも今後も友達として付き合って欲しいと彼に頼んだのは、彼の恋人いちばんめになれなくても友人にばんめでありたかったから。そのお陰で、今日まであの頃と変わらず友人として付き合ってきた、のだけれど。嗚呼、それも今日でおしまいだ。
「……知らないと思うけどさ。恋は戦争、とも云われたりするんだよ」
だから早く、誰かに先を越される前に想いを告げた方がいいよ。
後悔だけはしないようにね、と笑って呆然と未だ彼を見ているフリンズにそう声を掛ける。何時も通りに笑えていただろうか、声は震えていなかったか。そんなことを思っていると、漸く我に返ったとでも云うかのようにフリンズが目を数回瞬かせて、俺の方へ顔を向けた。
「……成程。ええ、ご忠告有り難う御座います。是非またご相談させて下さい。こういったことは、空さんの方が詳しいでしょうから」
「――うん、俺で、良ければ」
酷い妖精ひとだな、と思った。
それでも、そう云って微笑むフリンズの顔が綺麗に見えて、嗚呼やっぱり俺はこの妖精ひとのことが好きなんだ。それと同時に彼はもう絶対、俺の想いに応えてはくれないのだと思って涙が出そうになった。でもそんな姿、彼には見せられないから。ぐ、と手を握り締めて精一杯強がって笑った後、それじゃまた、とイルーガかれの許へ向かうフリンズを見送った。
……あーあ。俺って莫迦だよね、自分を傷つけるようなことをして。
でも、それが俺の選んだ道だ。恋人いちばんになれなくても友人にばんめで居たかったから、傷ついても構わない。そう、思ってたのに。だけどやっぱり、想像以上に痛いや。
今直ぐには、無理だけど。どうか、何時の日か。噓偽りなく心から二人を祝福出来るようになれますよう。今はただそう、祈るだけだ。