#8 買い物に行く

「えっと、飯田くんと緑谷くんはオレンジジュースで、爆豪はコーラ、あと、三奈と上鳴くんもか。他の子達は午後ティーと寮のお茶でいいって」
「でけぇやつで良いか?」
「そうだね、2リットルいっとこうか。全部」
「オレンジジュースもか?」
「うん、私もオレンジジュース飲みたくなってきた」
「苗字は、あんまり炭酸は飲まねぇのか」
「そんなことないよ? だけど、なんか今日はそんな気分。轟くんも、そういう日ない?」
「あるな」
「えへへ、一緒だねぇ」
「………おー」
「あ、今、お茶子ちゃんから連絡来たけど、お菓子も買ってきてって」
「前日に用意したの、もう足りなくなったのか?」
「みたい」
「すげぇな」
「食べ盛りが多いからねぇ」
「まぁ、あとは、あんまねぇ機会だからだろうな」
「そうだね。桜が咲いて、雄英敷地内で校長先生達がお花見してるの見つけたのが全ての始まりだったよね」
「花見しようってなったはいいが、浮かれすぎてねぇか?」
「ま、偶にはいいんじゃないかな。学生の間だけだよ。きっと、こうやって皆で揃って騒げるのも」
「……とか言いつつ、卒業後もなんだかんだ集まってそうだよな」
「そうだねぇ。そうだったら良いなぁ」
「お前ら、女子とか会うもんだろ。姉さんも良く、同級生の奴と出掛けたりしてんぞ」
「まぁ、女子とかは会うよ多分てか絶対。けど、私は女子だけじゃなく、クラスみんなとこうやってバカ騒ぎしたいなって思うよ。轟くんとだって、ずっと」
「…………」
「あ、お菓子コーナーあった。轟くん、どれがいい?お煎餅?」
「煎餅。よく分かったな」
「ふふふ、1年は君と一緒にいたからね」
「…そうか」
「あとは、ポテトチップスと甘いものもあったら良いかな」
「…苗字」
「ん?」
「大人になって、今日みたいに皆で花見しようってなって、食いもんなくなって」
「?」
「買い出し行くってなった時、お前とまたこうして、アレだコレだって、並んで選びてぇと思う……俺も」
「……へへ、そっか」
「おー」
「じゃー、轟くん、大人になったら皆のこと集めてね。絶対飛んでくよ」
「…お前が来てくれるなら、頑張る」
「うん。じゃー、お会計済まして、帰ろうか!上鳴くんから、催促メールきたし」
「たっく。待てねぇ子供か」
「ははは、それ送ってみよ」
「上鳴やかましくなりそうだな」
「それね。あ、返ってきた」
「なんて?」
「『名前ママ、焦凍パパ早く帰ってきてー』だって、ノリが良いなぁ相変わらず」
「……お、おぉ」
「轟くん?」
「悪ぃ、ちょっと、照れくせぇなと」
「?」
「苗字と結婚したらこんな感じかって、今自覚した」
「………ふァ、」
「顔あけぇぞ」
「いや、君のせい!」
「俺のせいか。いいなそれ」
「よ、良くないよ……」
「ほら、行くか。奥さん?」
「追い討ちも良くない……」