#19 正装

※プロヒ設定

「あいてて、やっぱ靴擦れしてる……結婚式だからって調子乗って新しい靴で来てしまったからなぁ……」
「大丈夫ですか?」
「あ、ええ、すみません……ちょっと靴擦れしてしまったみたいで……って、飯田くん?」
「苗字くんじゃないか」
「え、な、なんで?」
「僕は今日、そこで行われている披露宴に」
「わ、私も」
「そうなのか」
「うん。お嫁さん、新婦さんが昔サイドキック時代お世話になった先輩で」
「なるほど、僕は新郎と家族ぐるみでお世話になっていたからな。その関係だ」
「さすが、ヒーロー一家だなぁ……」
「で、話を戻そう。その足で歩けそうかい?」
「あー、どうかな。ちょっと道中も我慢してきちゃったから、酷くって……このままはムリかな……飯田くん絆創膏とか持ってる?」
「すまない、今、持ち合わせがない状態だ」
「あー、そうか……私もいつもの外用のカバンに入れたまま入れ替えるの忘れてて」
「そこに医務室がある、俺が連れていこう」
「へ」
「靴は僕が預る。苗字くん、足の下、失礼するぞ」
「ええええ、ちょ、ちょっとまって!それは申し訳ないというか、絆創膏さえGET出来たらいいから!あ、いや、この場合も私が動けないから君が行かないといけないのか……ど、どっちも申し訳ないのには変わりないけど連れて行ってもらうのはその倍申し訳ないというか」
「なんだか緑谷くんみたいになってるぞ」
「それだけ飯田くんの提案に驚いたと思ってください」
「確かに、苗字くんの言いたいことも分かる」
「じゃあ、あの」
「ただ、やはり君を担いで行こうと思う」
「は!?」
「失礼」
「え、ちょっ!?い、い、飯田くん!!」
「確か、医務室はそこの角を曲がって真っ直ぐだ。暫く大人しくしておいてくれ」
「お、重いから今すぐ下ろしてください!あと、お姫様抱っこは恥ずかしいです!!」
「重くはないさ。家で持ち上げるベンチプレスの方が重いだろう」
「せ、正確な数値を出されそうで恐ろしい……」
「あと、横抱きに関しては、ドレスの君を他の運び方で運ぶのはしのびない」
「いや、そもそも、運ばなくっていいというか」
「いや。だめだ」
「ダメって……」
「せっかく綺麗な格好をしている女性を、痛みで顔を顰める女性を、ひとりにはできない」
「い、飯田くん、そんな感じだったっけ……」
「ん? そんなとは?」
「こう、昔はもっと、こう……こうさー!!」
「僕もプロになってから飯田家の一員として何度も社交の場に出てるからね」
「……緑谷くんとかお茶子ちゃんが知ったら発狂するよ」
「麗日くんはどうか知らんが、緑谷くんは一度白目を剥いていたな」
「実行済みかい」