#26 結婚

※卒業後設定

「爆豪」
「…………」
「どうしたの? 切島くん達と飲みから帰ったと思ったら、いきなり、こんな、……ねぇ?」
「…………」
「ぎゅうぎゅうしちゃって、甘えたちゃんかなー? 名前ちゃん、君を立ったまま支えるのはちょっとしんどいなっていうか」
「…………」
「……爆豪、本当にどうしたの? なんかあった? どっか痛いとか、えっと、帰ってくる時、嫌な事とかあった……?えっ、もしかして寝ちゃった? 意識ある? 」
「……ある」
「あ、良かった。……さすがに寝ちゃった爆豪ベッドに運ぶのは骨が折れそうだったから。でも、調子悪い? もしかして飲みすぎちゃったかな、目元とか赤いし……お水入れて」
「なぁ、名前」
「ん? なあに?」
「……お前と結婚するって切島達に言った」
「あ、うん。知ってるよ。さっき切島くん達からメッセージきてたし、あ、爆豪、言ったんだなあって」
「……そうか」
「なんか、おかしな話なんだけどね、プロポーズされた時は夢心地だったのにいざこうやって他の人から祝福されたら実感湧くっていうか、あれ、現実だったんだーって思ってって、いたいいたいっ、爆豪!痛いよ!!」
「現実だわ、ボケ。俺のプロポーズ、夢にすんなや」
「してないって、ちゃんとリアルだって受け止めてるし、私、はい、って返事したじゃんか」
「…………それ、」
「ん?」
「…………良かったんか」
「え、なにが?」
「……お前、俺で良かったんか」
「…………へぇ」
「痛てぇっ!!!?なんすんだ、ぼけ!!!」
「いや、なんか寝ぼけたこと言ってるから目覚ましてあげようと思って」
「思いっきり横っ面引っぱたいてんじゃねぇぞ!!強化までしやがって!!」
「単体強化がよかった?」
「首飛ぶわ!!バカ女!!!」
「バカは爆豪でしょ!」
「−−−!?」
「もーーー、いつも勝気な癖になんでこういうとこヘタレんの?? 」
「ヘタレてねぇわ」
「ヘタレよ、ヘタレ。プロポーズもさー、全然してくれないなと思ってたら、こないだのA組の飲み会の時にすっぱ抜かれたゴシップ見て「結婚するから印鑑押せ」って勢い任せて怒りながら言うし。そう思ったらこっそり夜中凹んでるし」
「へ、凹んでねぇわ」
「はい、うそー。何年爆豪と付き合ってると思ってんのよ」
「…………悪かったな」
「別に悪くないけど。しょぼくれ爆豪は可愛いし」
「…………」
「ねぇ、爆豪知ってる?『夫婦生活は長い会話である』って言った人がいたんだよ」
「……知らねぇ」
「うん、爆豪は知らないだろうなって思ってた」
「馬鹿にしとんのか」
「違うよ。だって、爆豪にとって名言とか格言なんて、ただの先駆者の言葉でしかないから。ただ、紙の上に形を模したインクの集まり。過去に出た言葉とか、そんなのどうでも良くって、ずっと先を見てるから。私はそういう男を好きになったの。知ってた?」
「…………知らなかった」
「ふふ、ひとつ賢くなったねぇ」
「子供扱いすんな」
「でもね、爆豪」
「あ?」
「私、さっきの言葉も納得しちゃってさ。死ぬまでずっと誰かと会話するなら、喧嘩もするし、ぶっきらぼうになっちゃうし、暴言吐いてくるけど、爆豪がいいよ」
「……文句ばっか」
「文句ないと思ってたの?」
「………………」
「爆豪はどう思う?」
「……はっ、てめぇの喧しさに付き合えんのは俺くらいだろ」
「わー、自分のことは棚に上げる精神」
「うっせぇ」
「爆豪に合わせてこんなに煩くなったんだから、ちゃんと責任取ってよね」
「言われんでも」