#27 誕生日

「轟くん、お誕生日おめでとう」
「おー。ありがとう」
「でね、轟くんの誕生日プレゼントをですね、用意してます」
「そうなのか? 悪いな、わざわざ」
「いえいえ、日頃の感謝を込めてというやつです。はい、これ」
「……開けていいか?」
「うん、どうぞ。そんな高価なものじゃないんだけど……」
「マフラー」
「それね、この間お茶子ちゃん達と出かけた時に轟くんみたいだなって思って、灰色に翡翠色のラインが入ってて、轟くんの目の色と同じだなってずっと気になってたから買っちゃった」
「……ありがと、毎日つける」
「へへ、そう言って貰えるとうれしいや」
「冬だしな、時期に見合ってて使えるから重宝しそう……って、ん? なんか落ちた」
「え?……あ、そ、それ!ちょ、轟くん、ちょっとまって、」
「……『なんでも言うこときく券』って、なんだ、これ」
「あ、いや、違うくって、そのそれはあれだ。私が書いたんじゃなくって、上鳴くんが」
「なんで、上鳴」
「ダイニングでそのプレゼントを包装してたら、上鳴くんが通って、巫山戯て包装するんじゃなくって首に巻いてプレゼントは私ってしたらいいんじゃねとか、この券あげたらぜってぇ喜ぶとかワケわからないこと言って押し付けてきて」
「…………」
「轟くんは絶対そんなの喜ばないって言って返したつもりだったんだけど、紛れ込んでしまったみたいで」
「…………」
「ご、ごめんね……? なんか変なもの渡してしまって、回収します」
「……待て」
「え」
「これ、欲しい」
「え、いや、轟くん、そんなの貰っても使い所ないよ?!」
「ある。つーか、苗字にしか出来ねぇっていうか」
「わ、私にしかできないって……あ、個性のことかな?怪我治して欲しいとか、強化して欲しいとか、無敵付与して欲しいとか、えっと、あ、あとは勉強かな!!宿題代わりにやったらいいかな!?理数だったら私できるし、そう言えば今日の宿題は数学からでてたし、その、あの……」
「……」
「……」
「もうでねぇ? 逃げ道」
「に、逃げ道って」
「そんだけ赤くなりながら言うってことは気付いてるよな」
「…………」
「なぁ、今こうしてのこのこ俺の部屋に来てるのとか、休みの日にこのマフラーみて俺のことずっと考えてただとか、そういうの引っ括めて期待していいか」
「…………恥ずかしすぎて、顔が見れない」
「肩使うか?」
「……お借りします」
「お」
「……轟くんの心臓の音、すごい」
「そりゃ、好きな女がこんなに近くに居たら興奮もするだろ」
「こ、!?……ちょっと、言葉選んでよ……」
「なぁ、苗字」
「……なに」
「なんでも言うこときいてくれるのか?」
「…………うん」
「そうか。それなら、お前の全部欲しい」
「…………」
「ダメか?」
「……返品交換不可なことだけ了承してくれたら、いいよ」
「頼まれてもンなことしねぇよ」