揺るがない悲しき決意
トリグラフ中走って探し回っているけど、なかなかミラは見つからない
「(何処に行ってしまったの…?お願い、変な気を起こしていたりしないで)」
街中から次に港へ向かうと、そこでようやくミラを見つけて安心する
「ミラ!」
息を整えてミラを呼びながら近づくと、彼女は一人、遠くを見つめているようで別のものを見ているような悲しそうな顔をしたまま海を見ていた
「突然いなくなったから、心配したよ」
「心配?むしろ突然いなくなった方が好都合じゃないかしら」
なんて悲しい事を言うんだ…たしかにこの状況から悪い方に考えてしまうけど、私はそうなるなんて嫌だ
なんとかミラを説得して皆と合流しようと、話しかける
「……ミラは、本当にミラ=マクスウェルが現れないのは自分のせいだって思っているの?」
「貴女だって見たでしょ。分史のルルが正史のルルと対面した瞬間、消えたのを」
「うん。だけど、まだそう決まったわけじゃないじゃん。クロノスがした事だからそれが影響してるかもしれないし……一旦皆の所に戻って、ちゃんと調べてからにしよ?」
「戻るって…」
「?」
黙って聞いていたと思ったミラは、私の方をようやく向くと静かに言う
「私の居場所は元から無いのに…戻るって言うの?」
「!」
いつもみたいに強気な態度ではないけど、ずしっとのしかかる重みのある言葉だった
ミラ…皆と楽しそうにしていたり、私に料理を教えたりしてこの世界を生きようとしているって思っていたけど、本心はそうなの?
いや、分史のルルが消えたのを見て一時的に弱気になっているって信じたいけど、今の彼女にどんな言葉をかけても、多分簡単に受け入れてはくれない
なら私は……私はせめて隠してきた…“ミラと同じところ”を打ち明けよう
「あのねミラ。聞いて欲しい事があるの…私はクラン社の一部の人以外、皆騙しているの」
「は…?何よ突然…」
「記憶喪失って言っていたけど、本当はちゃんと自分の住んでいる家や町、家族や友達もちゃんと覚えている。なんでそんな嘘を付いているかって言えば………私は他の世界から来たから」
「!?」
遂に命令違反して、仲間に私の本当の事を話した
ミラは、この世界に来て自分の世界じゃないって説明された時のように上手く話を飲み込めない表情をしているけど、私は続ける
「信じられないけど本当の事。予想でだけど、私はオリジンに呼ばれてこの世界に来た。何の目的でそうなったのかは不明。とりあえず、この世界で生きるためにこの世界の文明や言語を覚えて色々苦しい事や理不尽な事も飲み込んだ」
「ちょ、ちょっと待って。私をからかっているんじゃ…」
「こんな状況でからかえる程、精神おかしくないよ……じゃあ、これ見て」
予想通り自分をからかっているのか?って台詞が出たけど、様子は戸惑っている。信じられないって気持ちはわかっているけど、これは決してふざけているわけじゃない。私はミラにあるものを見せる
それは…GHSとよく似ている白い小型の機械
「あれ?貴女のGHSは青色じゃなかった?」
「これは元の世界で使っていた携帯電話ってやつ。私の住んでいる国は今のエレンピオスと似ているの」
そう。この世界に来てGHSしか使っていなかったけど、この前ふと、元の世界で聴いていた曲が聴きたくなって久しぶりに携帯を取り出して隠れて使っていた
別にムキになって自分が他の世界から来た事を信じさせたいわけじゃないけど、信じてくれなかったら私が言いたい事が伝わらないんじゃないか?って思って携帯にあった証拠…元の世界での日常や楽しい思い出や珍しいものを移した写メを見せる
そこには少なからず、この世界では見ない文明とかが写っているからそれを重点的に選んで
「何…これ…こんな…!」
見てくれたミラはどうやら私が他の世界から来たのを信じてくれたみたい
「まぁ、私が言いたかったのは……私もこの世界にとっては異端者だから、ミラがこの世界に来た時の信じられない気持ちと居場所が無いかもしれない不安がわかるの」
「リル…それを伝えるために、私に打ち明けたの?」
「うん。そして…社長からの命令で口止めされていたとは言え、ずっと騙しててごめんなさい」
「………」
打ち明けてすっきりしたけど記憶喪失って言っていた時に、ミラはその事に関して気にしてくれたりしたから心の底から謝った
謝られたミラは許すも許さないもない……みたいに戸惑ったままの様子だけど、これはどう考えても私が悪いから謝らなければいけない
その時、横から名前を呼ばれそっちを向と、そこにはようやく追い付いたとルドガーと、エル、ルル、ジュード、アルヴィンが来た
「ルドガー、エル……」
「ねぇどうしたの?ミラ、なんか変なんだよ…」
さっきの話は聞かれていなくてよかった…って、言いたいけど今はそんな話じゃない
エルの言葉に仲間のほとんどはミラとミラ=マクスウェルの関係性がわかってないのか…って思ったけど、ルドガーの浮かない表情を見て彼は私達と同じ考えをしているって理解した
「もしかして、ルドガー……気付いてる?」
「マクスウェルを復活させる方法。まさかと思うが…」
「そう。ミラ=マクスウェル復活の障害は…私よ」
「どういうこと…?」
「正史世界では、同じモノは同時に存在出来ない。貴方達のミラが、この世界に戻れないのは、私がここにいるせいなの」
「待って、ミラさん」
その話を聞いて、つまりミラ=マクスウェルをこの世界に呼び戻す…最悪な方法をこれから話そうとしているのをジュードは勘づいて、ミラの話を止めようとした
けど、ミラは話を止めずに冷静に言う
「ミラ=マクスウェルをこの世界に復活させる方法は、ひとつ――私を殺せばいい」
「ミラ!」
予想していた最悪な方法だけど、本人から直接聞かされたジュードとルドガーは息を飲んでミラを見る
さっき私はミラと同じく他の世界から来たから気持ちがわかるって話したけど、ミラはそれしか理解していなくて、自分がいなければいいって考えは変わっていなかった
「殺す……?」
「子どもの前でやめろよ」
「事実なんだから、しょうがないでしょ」
「だから、まだ決まったわけじゃないって言ってるじゃん!もし、そうだとしても他に解決法があるかもしれないから…そんな悲しい事言わないでよ…」
エルの前で残酷な話はしないでほしいって怒るアルヴィンに、事実だからって謝りも訂正もしないミラ
そんな彼女に今度こそ死ぬとかそんな考えをしないで欲しいって思いながら、怒って話したつもり……だけど、私も悲しくなっていたせいで最後は泣きながら話してしまう
それを見てミラは何も言わずに俯き、ジュードから大丈夫?とハンカチを貸してもらって涙を拭く
「まぁ、とりあえず…もめている場合じゃないんだ。ガイアスからアルクノアがテロを計画してるって連絡があったんだ」
「アルクノア!?なんでまた…」
涙が引っ込む驚く話をアルヴィンから聞かされて、何故またアルクノアが動き出したのか考える
前は新設アスコルドを狙ってセレモニー行きの列車を襲った。今回の大きな行事は……まさか
「まさか、和平条約の調印式を!?」
クランスピア社でビズリー社長とガイアスが話していたのを思い出す。ジュードも気づいてそう言うとアルヴィンは頷く
調印式は、エレンピオスとリーゼ・マクシアの和平を本格化するために行われる…たしかに和平反対のアルクノアが狙うのも納得出来るけど、それを妨害するテロってなれば列車テロの時よりも規模は大きく2つの国に大きな混乱が起こる…!
「大事になる前に抑えたいから、手を貸してくれとさ。どうするよ?」
「貸すよ。テロを絶対止めよう!」
まず私が一番にそう言うと、ジュードはミラを見て何かを考え、そして決意したように遅れて「…行こう」って同行を決める
「俺達も行くよ」
「俺達って、私も?」
「ミラ」
「行こう。ミラの力も必要なの」
「ナァ〜」
自分の事でいっぱいいっぱいになっているミラには辛いだろうけど、一人にさせまいと仲間として協力してくれるようにお願いする
ミラはエルにも腕を引かれお願いされ「……わかったわ」と、今は仕方なくって言うような様子で承諾してくれた
「――中途…な…ぃ…が一番…」
「ミラ?」
「……何でもないわ」
今ポツリと何か呟いたような気がして聞き返えしたけど、何でもないと言われ、これ以上は聞けない
……テロ問題が片付いたら色々方法を探そうって思っていると、アルヴィンからガイアス達は調印式が行われるマクスバードに向かったから急ごうと言われ駅に向かう
この行く道中、私はクランスピア社にもテロを伝えようとビズリー社長に連絡をして、何かあればアルクノアを撃退する許可をもらった
「気を付けるんだぞリル。すぐに援軍を出す」
「わかりました。ありがとうございます」
ビズリー社長に連絡し終わって、次にリドウにも一応連絡しようと電話をした……
が、話し中のためツーツーと言う音しか聞こえない。リドウはリドウで仕事忙しいから後ででいいっか
終わってからの報告になるだろうなぁって思いながら、駅に着いて列車でマクスバードに向かう