揺るがない悲しき決意




マクスバードについてガイアスを探すと、彼は街の真ん中にいて周りを見張るように見渡していた




「来たか」

「状況は?」

「入手した計画書を元に街に潜入したアルクノアを検挙中だ。水面下でな」

「できれば表沙汰にしたくないもんな」




私達がガイアスの所に行って話を聞くと、もう粗方済ませていた

にしても、すごい…そんな計画書を入手出来たなんて奇跡としか言いようがない

次にどうするのか話を聞こうとしたら、アルヴィンの表沙汰にしたくないって言葉にミラが反応する




「こっそり消して、なかったことにする――。貴方達の得意技ね」

「ちょっと、ミラ…!」

「やめてよ、ミラさん」

「……何があった?」




ミラ=マクスウェルとの関連や今までのやり取りを知らないガイアスは、私達に何があったのか聞いてきたけど、どう答えればいいのかわからない…

今はテロをどうにかしなければいけない状況だから、これ以上重い話はしたくないってのもあるけど、皆仲間を殺すだなんて言いたくないのもある

そこでルドガーは色々あったって事と、後で話すって意味も込めて「ちょっとな…」って言う




「確かに“ちょっと”よね。世界を消すのに比べれば、私を消すことなんて」




しかし、ミラにはそれすらも悪い方に捉えた。それを聞いたガイアスはまた話が見えないって聞き返すけど、誰も答えられない




「ケンカしないでー!」




そんな嫌な空気が流れる中、エルは言い争いをしていると感じて私達にそう大声で言う




「そうだよ。今はこうしている場合じゃない!」

「調印式まで時間がないんでしょ?」




エルの言葉を聞いて私とジュードで話を戻そうとするとミラはこれ以上は何も言わず、話は本題に戻ってガイアスが再び状況を説明する




「街中のアルクノアは、ほぼ押さえた。あとは外部からの進入を防げば――」




そう聞いていたら横で「フギャー!」ってルルの驚いた様な悲痛な鳴き声がしてそっちを見ると、階段近くで帽子を深く被った男性がルルに「っと、ごめんよ!」って慌てて謝っていた

ああ〜道でゆっくりしていたルルに気づかないで歩いていて尻尾を踏んでしまったのか……男性に悪気は無いのはわかるけど、ルルは酷い目に遭ったね。あの鳴き声からしてすごく痛かったんだろうなぁって思っていると、アルヴィンはその帽子の男性を見て驚く




「マルコ…!」

「げっ…アルヴィン!?」




帽子の男性…マルコは呼ばれた方を見て、その呼んだ人物がアルヴィンだとわかると同じく驚き…

そして血相を変えて逃げるように走って何処かに行ってしまった!




「おい、待て!!」

「アルヴィンの友達?」

「ああ、アルクノアん時のな」

「アルクノア!?だったら、あの人も今、テロに関わっている…?」

「かもしれないな…」




あの慌てぶりじゃあ、アルクノアを脱退したアルヴィンと出会ってまずい事があると見た!

何かを隠していそうな感じもだけど、アルクノアってなれば絶対見逃してはならない




「だったら、追いかけよう!」

「ガイアスは街の出入りを見張って。あの人は僕達が!」




ルドガーが皆にそう言うと、ジュードが素早くガイアスに街唯一の出入り道の方をお願いして、残った私達は急いでマルコを追った



























皆でマルコを追いかけると、彼はコンテナが積まれている所まで来てどうやって逃げようか、あたふたしていた

そこを私達が素早く囲むように近づくと、マルコは観念したのかその場に大人しくなる




「マルコ、アルクノアから足洗えって言ったよな?」

「ご、ごめん!」

「まだ関わってるんだな」

「ごめん…」




アルヴィンから言われた言葉に対して弱々しく謝罪する事しかできないマルコを見て、本当に現・アルクノアなのか疑ってしまう




「なんか弱そー…」

「こんな人がテロリストなの?」




エルとミラも私と同じ事を思ったのか、マルコを見て凶悪なテロリストに見えないって呆れた様子だ




「見た通りのいい奴なんだが、流されてばっかでな。こいつの性格じゃ、捨て駒に使われるのがオチだ」

「うん。ほんとに捨て駒だった…」




アルヴィンの説明に「捨て駒って…言い過ぎじゃない?」って苦笑しそうになった時、マルコが意味深な一言を呟く




「どういう事?」

「俺、本隊の通信を聞いちまったんだ。街に潜らされた俺らは囮で、本命はあっちなんだって」




そう言いながら指差す方向にあるのは…海




「海に何かあるの?」

「船だよ。マルシア首相が乗った旅客船ペリューン」

「エレンピオスの首相を襲う気なの!?」




まさか仲間を囮にしてまで人々から本命のターゲットに目を行かせない大きな作戦のテロだなんて…!マルコを捕まえて聞き出せてよかったって思いたいけど、そうなればまずい

街中にいたアルクノアだけなんとかできて安心している他の仲間達に連絡して阻止しようと発案するが…




「もう襲ってるはずだよ。船員にアルクノアが紛れ込んでるんだ」

「も、もう…!?」

「マジかよ……マルシア首相は異界炉計画に反対した穏健派だ。けど、未だに対リーゼ・マクシア強硬論を支持する声も強いからな。今、首相になんかあったら和平なんてひっくり返るぜ」

「それが目的だから。どのみち殺す計画だって」

「先手をとられてたの、致命的かもね」




本当にミラの言うとおり、裏をかかれて致命傷を負わされたのも等しい

マルコはもう諦めたような絶望した表情で淡々と話し深くため息をつくと、私も今から海に行ったところで間に合うのかわからない…どうすればいいんだろうって不安に思っていると




「……させない。ミラがくれた時間を無駄になんて!!」




そう強く拳を握り締めて決意したように言ったジュードは、まるで怒りに身を任せているように見えたけど、冷静にそして素早くGHSを操作し始める




「事情はガイアスに説明した。僕は、このまま船に乗り込む!」




どうやら街はガイアス達に任せてジュードは自分一人でも船に乗り込んで首相を助けようとしているみたい

そこだけはいつも冷静な判断できるジュードらしくない即決なものだと思ったけど、彼にとってそれほどミラ=マクスウェルの約束が大事なのが伝わる




「俺も行くよ」

「私も」

「……危険だよ?」

「ジュード一人に行かせるわけにはいかない」

「テロは怖いけど…これ以上アルクノアを見逃しには出来ないのは同じ気持ちでしょ?」




私とルドガーもジュードの熱意を受けて協力するってそう言うとジュードは「ルドガーとリルって、結構お人好しだよね」って、協力してくれるのは嬉しいんだけど自分の安全も考えた方がいいよ?って苦笑する




「エルは前から知ってたなー」

「本当か〜?」

「って、言うかジュードもお人好しじゃん」

「まぁね」

「だな」




そう言って結局この場にいる皆で、首相が乗っていて今アルクノアに襲われているであろう旅客船ぺリューンに乗り込むことになり、お人好しなのは皆一緒〜って少しばかり笑うと




「……けどさ、リーゼ・マクシアとエレンピオスの交流には、山ほど問題があるし。いっそ、もう一回お互い引き篭もるのもありなんじゃね?」




急にアルヴィンが真面目な表情で、そんな事を言った




「…本気で言っているのか?」




ルドガーは今更何を言っているんだ?って言うようにアルヴィンを睨む。…なんでこんな時にそんな事を言ったんだろう?




「正直そんな気持ちも無いわけじゃない。楽な方に逃げたいって気持ち」

「それって今のテロに対してそう思うの?それとも元アルクノアとしてアルクノアに関わりたくないって事?」

「どうだろうな…」




いまいち何が言いたいのかわからないアルヴィンの言葉。前にもそうして逃げててアルクノアとジュード達の間を行き来していた彼には、まだそんな気持ちがあるのか?って不安になったけど




「もー、しっかりしてよ。そういう事言う子どもを叱るのが、大人の仕事でしょ!」




エルにそう一喝され少し目を覚ましたように驚くと、「エルの言う通りだな。子どもを叱れる大人になんねぇとな」って自分の頬を軽く叩いて今やるべき事をやろうと決意する

そして、すぐにマルコの方を向いてある事を頼んだ




「マルコ、艀を調達してくれ」

「えっ!俺が!?」

「ついでに、船に上がる時の囮もヨロシク」

「うっそ、無茶だって!」




マルコは嫌がってアルヴィンの頼みを断ろうとしたけど、アルヴィンはマルコに近づいて逃がさないように肩に手を回すと「拒否るなら警備に突き出す」ってまるで楽しむように脅迫した

う、うわ〜〜これだと、どっちが悪人かわからないな…

このシーンは気弱なクラスメイトにジャイ○ンが○○よこせって詰め寄るのと似ていて少し可哀相だけど、こうでもしないとマルコは承諾してくれないだろうから黙って見ていると




「わ、わかったよ……」

「お前の、そーゆーとこ好きだぜ」




ここでようやくマルコが頼みを飲むと、アルヴィンはそう調子いい事言って彼の背中を軽く叩いて笑う

マルコはって言うとアルヴィンから肩を離されると、へなへな〜とその場に座り込んで泣き出すような感じに呟く




「うう、アルヴィンって、アルクノア以上に人使い荒い気が……」

「気のせいじゃないよ」

「うん。私もそう思う」

「ナァ〜」




その呟きは間違っていないなって私もエルと同じく思った

ごめんねマルコ。可哀相だけどこうなった以上は協力してもらわないと…って思いながら彼を見ていると、足元に来たルルが「元気出せ」って言うように鳴く

ルルいい子だ〜さっき尻尾踏んだ相手に対して優しいなって微笑ましく見ていると、マルコはすぐに船の用意をしに港に向かう



さぁ…私達も準備しないと…



列車テロの時を思い出して、あの時と同じような光景だろうけど絶対テロを止めてみせる。って私も改めて決意しながら新しく調達した武器を握った





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