ミラと、ミラ



船内の状態・状況は酷すぎる……想像して覚悟していたつもりだけど、実際にその場合に立つと列車テロと同じで思わず恐怖で動けなくなりそうだった

壁や通路のあちこちは銃撃でボロボロになっていて、爆弾を使ったのか火薬の焦げた臭い、そして……気持ち悪くなる血の臭いが立ち込めていた

けど、来た以上はなんとかしなければと自分を奮い立たせて皆と慎重にかつ、急いで前へ進もうとしたら、通路の先に倒れていた乗客2人を見つけて回復させる


2人から船内の詳しい事と、他にも生存者がいる情報を手にいれた私達は2人をマルコにお願いして、テロを阻止するのを優先しつつ出来る範囲で生存者を助けながら奥に進む事にしたけど……その奥が更に悲惨な光景だ

大きな客船だから人が多く…ほとんどが既に息の無い状態。通路に女性と子どもが無惨に殺されていたのを見つけ、アルヴィンと




「女子どもも容赦なし、か……ほんと、ヘドが出るぜ」

「無抵抗な人達を…酷い」




と話しながら、エルに見せないように進む


そんな中、情報通り何人か生存者を見つけて回復させてよかった……って、言いたかったけど、そこからまた悲しい現実を突きつけられる


倒れている集団の中から息している数人を回復させると、私達にお礼を言った後に助からなかった自分の家族や連れを確認して涙する

その中からテロの恨みや怒りを言う者、助からなかった人の分まで生きようとしている者、等様々

見ていられない光景で背けたくなったけど、エージェントとしてこの光景を覚えて報告をして二度とテロを起こさせないようにしなければ……そう思って回復させた生存者を見送った後、また奥に進むと…




「……っ!」




その時、私達の先を歩くミラが何かに躓く

ミラが転ぶ!って思った時、ジュードが素早く動いて彼女の体を支えてくれた




「気をつけて、ミラさん」




よかった、流石素早い動きが得意なジュードだ

そう思ってふと足元を見て、ミラが躓いたのは死んでいる男性の腕だったのに気付いて、思わずビクッと震えてしまう




「大丈夫か?リル」

「う、うん…大丈夫だよ、ルドガー…」




いや、怖がっている場合じゃないな。遅れないように行かないと…って歩き出そうとしたら、その場にまだ立ち止まったままのミラはジュードにある事を聞いた




「…待って。ジュードは、なぜ私を“ミラさん”って呼ぶの?」

「どうしてって…ミラさんはミラさんでしょ?」

「そうね。貴方達のミラのニセ物」

「そういう意味じゃ」

「じゃ、どういう意味?」




何やら言い争いが静かに始まる

たしかにジュードはミラ=マクスウェルをミラって呼ぶのに、今いるミラにはミラさんって呼ぶ。一体どういう理由で呼び分けているのか私も気になるけど、ここでどちらかに口出ししたら話がややこしくなるかな?って、どうしようか様子を見ていると




「俺も聞きたいな」

「えっ?」

「ルドガーまで…」




なんとルドガーまでもミラと同じくジュードに聞いてきた

だ、大丈夫かな…?何やら嫌悪な空気の中、ジュードはルドガーにまで言われるなんて…ってため息つきながら、ゆっくり話す




「本物とかニセ者とかじゃない。ミラさんはミラとは違う人です。だから――」

「そう。分かったわ」




ミラとミラ=マクスウェルの両方の事を考えている答えを言うジュード。続けて何か言おうとしたらミラがわかったって話を終わらせた

ジュードはそれを見てわかってくれてよかったって頷いて、今度はミラの代わりに前を進む。その後に続いて行こうとしたら、まだミラは立ち止まったままで「よく、分かったわ…」って、悲しそうに呟く

もしかして……さっきのジュードの答えを違う意味で捉えた?そう思った時、同じくミラの様子が変わらないのに気づいたエルがミラに話しかける




「あのさ、エルのミラってミラだよ。精霊のミラなんて会った時ないし」

「え?」




エルの言葉を聞いた私も、自分が思っている事を話した




「ねぇミラ……余計な言葉だったらごめんだけど、ジュードにとってのミラってのはミラ=マクスウェルだけど、だからってミラがいなくなっていいってわけじゃないよ。ジュードのあの言葉は、例え貴女が違うミラだけど仲間なのには変わりないって事じゃないかな」

「……」

「同じミラなのに皆マクスウェルの方ばかり見ているって思うかもしれないけど、ジュードはちゃんと今いるミラも見ていると思うよ?いや、ジュードだけじゃくて皆も…勿論私も。だから……だから、えっと、その……」




最悪だ。私もエルみたいにミラはミラって言いたいのに、エルよりも大人らしい事言おうと色々話している内に、言い方を考えてたらごちゃごちゃになって上手く言えない

どうしよう。ミラ怒ってないかな?恐る恐るミラの様子を見ると……




「エル、リル……貴女達、慰めてくれてるの?」




私達の気持ちが伝わったのか、ようやく彼女に少し笑顔が戻っていた




「んと、それは…」

「別に!エルはミラのスープとか好きだから、言ってみただけ」




私が答えようとしたら、エルがそう照れ隠ししながら言う

つ、ツンデレですか?いや、デレツン?どっちにしろ素直じゃないな〜ってエルを見てると、ミラはそんな様子のエルに微笑みながら「スープ…これが終わったらまた作ってあげる」って言った




「作ってくれるなら食べてあげるよ!ね、リル」

「うん。私もミラの料理好きだからね」

「ありがとう。さ、急ぐわよ」




少しばかり元気を取り戻したミラを見て私はまだ不安が残る中ちょっと安心した

このまま何事もなくテロを阻止して、皆で帰ってきてミラの料理食べたいな…その後に分史世界での問題でいい解決策が見つかればいいな…


そう思いながら私は皆と奥へ行く



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