思い出すのは…
連絡が来る間に各自準備をするってことで皆とバラバラになり、クランスピア社に向かった私はなんとしてもリドウの行動の真相を知りたいって意気込む
そしてクランスピア社前に着くと、そこにはたくさんの取材陣がいてあっという間に囲まれてその日はリドウに会えなかった
次の日もまた次の日も取材陣から「船内の様子はどうでしたか!?」とか「マルシア首相とガイアス王がマクスバードで調印式を行ったと聞きましたが、それは見ていましたか?」とか、同じような質問を何回もされて、私はうんざりしてくる
たしかに、実際にペリューンに乗り込んだクランスピア社のエージェントから直々に話を聞きたいのはわかるけど…
「(私だって知りたい事があるんだから……)」
取材陣の質問に答える度に、嫌な光景やミラの事を思い出して私も早く何か一つでもいいから真実を知りたいってイライラしはじめてくる
その後に、取材を終えてビズリー社長にテロについて報告をした後にリドウについて聞いてみたが、ヴェルさんと同じく何もわからないと答えた
私はこの目で見てきたリドウがマルシア首相に危害を加えた事とかミラを犠牲にマクスウェルを召喚した事を話したら驚いた表情をして、後で本人にも話を聞くって言って会議に行ってしまう
…あの驚き方は知らなかったのかな。でも本人にも聞くって言っておきながら本当はある程度知っていたり…なんて思いながら、資料室に向かった
リドウについては何もわからなかったけど、マクスウェルの召喚について調べてミラが犠牲にならなくてもいい方法はなかったか確かめるために…
その向かう足の先に私に挨拶をしてきた人がいる
「お疲れ様です。リルさん!」
「あ、お疲れ様。イバル」
しばらく会っていなかったイバルだ。彼も今回のテロで色々忙しい中、仕事を頑張っているのに疲れた様子はなく、何だかはりきっているように見える
「仕事は大丈夫?最近またエージェントとして色々動かないといけないみたいだけど…」
「はい、大丈夫です!いっぱい働いて帰ってきたミラ様にご報告を…」
あ……そうか、当たり前ながらイバルも知ったんだね。ミラ=マクスウェルが現れたのを
彼のこの輝いてる笑顔を見て、いつもならよかったねって一緒に笑えるのに…顔がひきつって上手く表情が作れない
「あの、どうか…しましたか?」
「なんでもないよ……そうだね。会いたかったミラ=マクスウェルが来たんだから、格好いい所を見せないとね」
「リルさん…?」
ああダメだ。口はちゃんとした事言ってんのに、顔が違うから様子が変って思われたな
うっかりミラがいなくなって悲しいんです。って何も悪くないイバルに当たりそうになっているのをぐっと堪えて、なんとかして誤魔化さないと…
「あ、あの、ちょっと具合が……」
「リルはテロに直接乗り込んだ疲れがまだ残ってんだよ」
「あ…!」
「っ!?」
突然私達の間に入ってきた声を聞いて驚いてそっちを向くと、なんとそこには探していたリドウがいて、私は声を詰まらせる
「それに取材とかにも囲まれて休む暇もない。だからお前の呑気な話を聞く余裕が無いんだ」
「ち、違います!私は…!」
「で、その疲れている所悪いが、ちょっと来てもらうぞ」
「ちょっと…!」
そう言ったリドウはいつもの自分勝手なペースでイバルから私を引っ張り出して、連れて行く
連れて来られたのは、あまり使用されていないコンピューターが置かれた部屋
さっきは驚いて声が出なかったけど、よくよく考えると待っていたチャンスだ。今ここでリドウから聞いてやろうじゃないか…!そう意気込んで私から話しかける
「何ですか……?」
「どこも変な感じはないか?」
「はぁ?」
「体の具合だ。あの術式に巻き込まれただろ」
「あぁ…あれ」
何の事だろうって思っていたら、あの時の大きな風穴の術に落ちたのを気にしているらしい
私はそれに関しては特に何も影響はないって言うと、彼は急に私を自分に抱き寄せてきた
「よかった…あの時リルがいなくなるって心臓が止まりそうになったんだからな」
「リドウさん…」
抱き寄せられているぬくもりと、彼はやっぱり私を想ってくれていたんだってわかって嬉しくなって、しばらくこのままでいようとした
…だけど、それはいつもだったらの場合
私はすぐに彼を振り払って、真っ直ぐ睨むように見る
「どうした?」
「どうしたもこうしたも、ありません…!」
「?………ああ、もしかして俺がミラ=マクスウェルにファンになってしまいそうとか言ったのを気にしてるのか?あれは単なるリップサービスで……」
「それじゃないです!私が言いたいのはそれじゃない!貴方は何でマルシア首相を……ミラを……!!」
怒りの勢いでミラを殺しただろ!?って怒る事が出来ただろうけど、何故だかそれが言えなかった
やっぱり心の奥でミラの死を認めていなくて悲しくて泣いている自分がいる
そしてリドウは私の言った言葉で、心配していた様子から少し呆れた様子に変わった
「何でって…あいつは最後の道標のある分史世界に行く妨げになっていた原因だったからな」
「もしかしたら、他にミラが犠牲にならなくていい方法があったはず…」
「無いな」
「だとしても!私は何か方法はなかったか、探してました……」
そう言った私に対して深くため息を吐いたリドウは「お前はやっぱりまだわかってないな」って言って続ける
「あいつは本来なら自分の世界と共に消えていたはずだ。なのに何故そこまで情を持つんだ?正史世界に連れてきてしまったからか?なら、今まで消してきた分史世界の人間はどうなるんだ?正史世界に来れなかった分史世界の人間は自分の知らない間に消えているから別に良いってのか?」
「それは違います!」
「違わないだろ。実際お前は最初こそ戸惑っていたが、今じゃ分史世界を破壊しても何も俺に言わない」
「………」
たしかにミラを正史世界に連れてきてしまったから、責任を感じてせめて正史で幸せに暮らしてほしい気持ちもあった
だけど、他の分史世界では……時歪の因子を壊して間接的にその世界にいた生命を全て消してきて罪悪感があるけど……そこまで言われるともう一度上手く言い返せない
「だけど…ミラは…彼女は私の大切な仲間なんです……!」
上手く言い返せないけど、私のこの悲しい気持ちを理解してほしくてそう言うと…
「仲間だろうと何だろうと、クランスピア社のエージェントは分史世界やオリジンの審判の妨げになっているのを消さなければならない」
「………!」
が、私の期待は虚しく終わり、代わりに残酷な言葉が突き刺さる
「お前は何のためにここにいるんだ?元の世界に戻るためだろ。そのためにエージェントをやっているなら……」
「だけど、大切な人の命が危ないなら、それを諦める覚悟はあります」
「はぁ?正気か」
「正気です!私はそのくらいミラや…仲間とかが大事なんです!だから私は…ミラを殺した貴方を……」
元の世界に帰って家族や友達に会いたいし会えなくなったら勿論寂しいし悲しいけど、もしこの世界の私の大事な人が危なくなったら帰れなくったっていい
私は前と違ってこっちの世界に仲間が出来て決めた気持ちを話して、どうしてもリドウがミラを殺したのがショックだったって言おうとしたら………彼は机を怒りに任せて大きく叩く。それに驚いてしまい私は最後まで言えなかった
「いい加減にしろ。お前の気持ちがどう変わろうとクランスピア社のエージェントである限り、やることはやってもらうからな……そしてあまり他の奴らにあの偽者を殺されたって言わない方がいい。ペリューンでも言ったが例えお前の大事な仲間だろうと妨げになっているのを見逃して、あろう事か俺の邪魔したって反逆者として見なされるからな」
「わかってます……わかってますけど…!」
「わかってない。お前はさっきからただの駄々をこねるガキだ」
「………」
あの時そんな事を言っていたのを覚えている。だけど、仲間を殺されたって何回も伝えると、リドウがそう言っていい加減駄々をこねるのは止めろって静かに怒る
その視線と威圧に周りの空気が変わって怯みそうになったけど、負けずに悲しい気持ちをぶつけようと変わらず見続けていると、私の目から大粒の涙が流れた
まずい…ここで泣いたら本当にただの駄々っ子だ。そう思って堪えようとすればするほど、涙が溢れて流れてしまう。そんな私の肩にリドウは軽く手を置く
「………少し休め。疲労のせいで頭の整理がついてないだろうから3日間の連休をやる」
「………」
3日間で頭を冷やせってやつか。でも疲労とかそんなんじゃないのに。そう言い返したかったけど涙を堪える方に集中してて言えない
「報告のついでにお前の連休は代わりに話しておくから、今日はもういいぞ」
「………あの」
「なんだ?」
「しゅ…首相に危害を加えたのは…あくまでマクスウェル召喚を見られないように気絶させたんですよね?……アルクノアと組んでてそんな事したんじゃ……」
「……まぁ、首相に関してはその通りだ」
ようやく話せた私はもう一つ疑問に思っていたのを聞くと、そう答えが返ってきてそれだけは信じようって思う
リドウは肩に置いていた手を頭に持ってきて撫でると、部屋から出ていく
……私は本当にただの子どもじみたワガママなのかな?リドウと言い合うつもりだったのに、ただの自分勝手を話しただけ?
一人残った私は達成感が得られなかった心の気持ち悪さを抱えて、言われたとおり帰宅して3日間休む事にした