思い出すのは…
しばらくして出来た料理をリドウに持っていく
ちゃんと寝ているだろうか?って心配になりながら部屋に入ると、彼はちゃんと寝ていて安心。眠ってないか一声かけると「できたのか?」ってゆっくり目を開けて私を見る
「はい。食べられますか?」
「食べれるかどうかは食べてからじゃないと、わからないだろ?」
うぐっ…風邪引きで食欲があるか?って意味で聞いたのに、味の意味で言われてしまった
まぁそこも心配されるのは仕方ないか…そう思いながら部屋に臨時で小さいテーブルを設置してその上に熱々の鍋を置く。そしてベッドからもそっと出てきたリドウが鍋の蓋を取ると……良い感じに卵が固まったお粥…と言うかおじや?が湯気を立てていた
「これ……お前が?」
「他に誰がいるんですか。さ、食べてみて下さい」
自分で言うのもあれだけど、これは美味しいく出来た。味見もちゃんとしたし、あまり薄くなくしょっぱ過ぎずに作れたと思うから堂々と出せる
リドウは半信半疑で器に盛られたのを一口食べる。そして………「ん、」と一言言って頷いて食べ始めた。あれ?それって…
「あの……美味しいですか?」
「まぁ、食べれるな……」
「………そうですか」
美味しいって言葉がほしかったけど、こんなに食べてくれるなんて今までなかったから、きっと腕が上がったんだなって思って嬉しくなる。やった!今までの成果だ
そう心の中でガッツポーズしていると、食べていた手を止めてリドウが聞いてきた
「……なんで、こんな事したんだ?」
「え?」
「リルは…俺が憎いんじゃないのか?」
その言葉に私は思わず服の裾をぎゅっと強く掴む
「たしかにミラの事は許してませんよ……だけど、それとこれは別です」
「そうか?考えてみなかったか?俺がこうして弱っている間に…例えばこの食事に毒を盛って苦しませて殺す事とかを」
「……」
そう言われたら、たしかに出来たかもしれない……だけど、それよりも考えた事がある
「リドウさんって……こうして看病された事ありますか?」
「……無いな。それがどうした?」
「私の小さい頃の話なんですけど、高熱を出した時に父と母は共働きで二人とも急に休めなかったんです。そうなれば家に私一人になってしまうから、同じ町内に住む祖母を呼んだんですけど、同じ町内と言えども家と家の距離が長いからなかなか来なくて……寂しい思いをしました」
熱は初めてじゃなかったけど、そんな高熱の時に側にいてほしい家族がいなくて、苦しい中で寂しい思いもあった。それを思い出して心が少し苦しくなったけど、話を続ける
「ようやく来た祖母は長い距離を歩いてきた疲れがあるのに、私の看病を付きっきりでしてくれて、すごく嬉しかった……だから今のリドウさんも昔の私みたいに一人で心細かったんじゃないかな?って来たんです」
話を終えた後、リドウは「…ハッ」って鼻で笑う
「甘いな…本当にお前はスパイスの効かない甘すぎる奴だ…お前の仲間を殺した男の心配?救いの女神様気取りか?」
「そりゃあ、許さないって言いましたけど……一応貴方は私の恋人ですし、さっき話したように心配が先に出ちゃ変ですか?」
「……その甘さがやがて仇になって返ってきても、同じ事を言えるか?」
「仇の内容にもよりますね。あの時にああしなければならない事情があるならそっとしますし、私がどうしても許さない場合は仇返ししますよ」
「………あ、そう。じゃあつまり、許せないって言いながらあの分史世界から来た女を殺したのは仕方ない事って理解したんだな?」
「………どうでしょうね」
なんだか、会話になっているようでなって無いような事を話す私達
リドウの風邪の心配とミラを殺したのを許さない気持ちを別々にするのはたしかに変かもしれないけど……どうしても、これで復讐したいなんて考えられない
「まぁ、とりあえず今私がここにいるのは看病のためですから安心してください。……薬とか飲んでます?あと着替えとか」
「済ませているから平気だ」
「じゃあ……」
「あとは大丈夫だ。お前はもう帰れ」
「本当ですか〜?行った後に倒れられたら警察とかに疑われるのは私ですからね」
「……ちっ。計画がバレていたか…」
「えっ!?」
「冗談だ。何本気にしているんだ?」
「っ!この…!」
調子に乗るなよ!?ってリドウの肩にツッコミを入れるように叩くと、彼は笑う
「さっさと行かないと風邪移して、俺が診察するぞ?」
「うわ〜!自分で原因作っておきながら、それでがっぽりぼったくろうとするんですね!そんな最悪な方法を企むなんて流石悪徳の医者は…」
「誰が悪徳だって?」
「いひゃい、いひゃい、いひゃい!らって、ひょうりゃないでふか!(痛い痛い痛い!だって、そうじゃないですか!)」
思った事をストレートに言うと、リドウが私の頬を引っ張る。掴んでいる力と引っ張っている力で本当に痛い。それでも負けずに言うと頬を離してくれた
「俺はもう寝る。変な顔を見たお陰で風邪が悪化しそうだからな」
「誰のせいで変な顔になったと…!」
「リル」
「はい?」
「……悪かった」
「??」
突然、悪かったって言われても一体何の事に対してなのか不明
まさか今更ミラについて?いや、それは無いかも。状況を考えると風邪の看病についてだと思うけど……何せ主語が無いから何を指しているのかわからない。とりあえず私は「はぁ…」と返事すると、リドウはベッドに戻って寝始める
……まぁ、なんでもいいか。そう思った私は空っぽになった鍋を片付けて、リドウにもう一度安静にするように言ってから彼の家から出て行った
冷え込む時間が早くなった夜道で、料理を全部食べてくれた嬉しさと……久しぶりにリドウとふざけ合えて楽しく話が出来たなって思い返して、まだ複雑な気持ちも残るけど、安心感もいるのに気づく