最後の道標を求めて
準備もある程度済んだ時にルドガーのGHSにヴェルさんから着信があった
用件は空間が安定したから最後の道標のある分史世界に行ける。そしてビズリー社長が本物のマクスウェルに会ってみたいからクランスピア社に連れてこい……とのことだ
その会話を聞いたエルは「皆、マクスウェルのミラの事ばっか……」って悲しそうに頬を膨らませて、私とルドガーとで宥める
ほんと……ミラに本物も偽物もない。私も悲しく思う
そうして、ミラ、ジュード、ローエンと合流してクランスピア社前に行くと
道の両脇に整列するエージェント達が見え、奥にはビズリー社長とヴェルさんがいた
「ルドガーとリル、そしてマクスウェルだけを呼びだしたつもりなのだが?」
「クランスピア社は信用できませんから」
ビズリー社長の言葉にきっぱりとそう答えるジュード
やっぱあのミラの事も思っているんだな……
私もあれ以来から、なんだか少しだけ会社を……ビズリー社長を疑いそうだけど、あのリドウがした事は彼は何も知らないって信じたい
「ははは!意外にはっきり物を言うのだな、Dr.マティス。黒匣も精霊も維持しようなどという、半端な理想を語るわりには」
「…っ」
ジュードの言葉に屈しなく、むしろ笑って反論する社長
たしかに今は半端だけど着実に理想に近づいているのはわかる……だけど結果を出していないからジュードは言葉を詰まらせた
「二ヶ国の和平条約は成りましたよ。“雨降って地固まる”ですね」
「わざわざの御報告、痛み入ります。ローエン宰相。一市民としても喜ばしいことです」
ローエンはジュードのフォローをしつつ調印式は成功したのを話す
……何だか言い争いをしているみたいにピリピリした空気が漂う中、ミラが一歩前に出てビズリー社長に話しかける
「なるほど、お前がビズリーか。確かに一筋縄ではいかない男のようだ」
「そういうお前が、本物のマクスウェルか」
「エルのミラだってホンモノ――!」
エルは泣きそうになりながビズリー社長に違うって否定しようとしたら、それをミラに止められてやり場の無い感情に俯いた
エル…大丈夫。ここにいる仲間は皆エルの気持ちはわかっているよ
「ミラ=マクスウェルだ」
「さすが精霊の主。気位が高い」
「時空の狭間は安定したようだな」
「最後の道標が存在すると推定される分史世界の座標を転送します」
ヴェルさんがルドガーのGHSに座標を送っている間にローエンが「残る道標の正体は、判明しましたか?」と聞くと
「…いいや。だが、これまでと同じく時歪の因子を探せばカナンの道標が見つかるはずだ。Dr.マティス一行が協力してくれればより確実に」
そう言ってジュードを見る社長……なんだろう。何かを隠しているように感じるのは何故だろう…
「…ルドガーとリルには協力します。僕自身の責任と、理想のためにも」
「はい。動かされるのではなく、自らの意志でね」
「ふっ、己が意志に従う…それこそが人間だ。いい仲間をもったな、ルドガー、リル」
ジュードも負けずに言い返すように返事をして、ローエンもその後に続いて言うと、ビズリー社長は私達にそう振ってきたから、とりあえず「はい」とだけ返事する
「これが最後の道標探しだ。敬意を表し、見送らせてもらおう」
その言葉に合わせて、両脇に整列していたエージェント達が一斉の敬礼した
「ルドガーとリルに期待しているのだな」
「当然だろう。クルスニクの鍵や同等の強い能力者は最後の希望だ。オリジンの審判を越えるためのな」
「期待されてるって」
いまいち腑に落ちない感じの私とルドガーに次はエルが気を遣うようにそう言った
そうして私達は…社長達に見守られながら
最後の道標のある分史世界に侵入した