最後の道標を求めて





侵入に成功したのに気づいて目を開けると、そこは……様々な露店が並び活気に溢れている街

たしか……




「カラハ・シャールか……懐かしいな」




そう、ここはカラハ・シャールだ。前にドロッセルに呼ばれてお茶したりしていたから見覚えがあったけど、なにより…




「(おおっ!ミラのティーカップ回し!本当にすごくてバランス良い!)」




元の世界でゲームをプレイしていた私にとっては、ミラが今やっているティーカップを指一つで回している姿でも、ここがカラハ・シャールって思い出せた




「思い出しますね。初めてお会いした時のことを」




ローエンも皆も初めて会った時を思い出して懐かしいなって話の花を咲かせていると、丁度その前でティーカップを売っていた骨董品屋の店主がローエンを見て驚く




「指揮者イルベルト…?」

「はい。シャール家で執事をしていたローエンです。お久しぶりです」




あ、街の人がローエンを見て驚くって事は、ここはローエンがガイアスの所に行って宰相になった後の世界かな?

そりゃなかなか会えなくなったローエンと再会したから驚くのも無理はないな。そんな店主にローエンは笑顔でいつも通りに挨拶をする





そしたら……





「…この野郎!!」




突然、店主がそう怒鳴ってローエンに殴りかかった!

あまりに一瞬の事だったから私達は驚いていると、ローエンはなんとか店主の拳を避けていた




「いきなりなにを!?」

「こっちのセリフだ!どうやって化けたか知らないが、ふざけるな!」

「化ける…?」

「まだとぼけるか!指揮者イルベルトは、八年も前に死んだ!いや、殺されたんだ!」




店主から予想もしなかった言葉を聞いて私達は更に驚く




「ローエンが殺されたなんて…」

「そんな…人違いじゃありませんか?」




信じられなかった私とルドガーで店主に聞き直してみると、彼は首を横に振る




「人違いなわけない!!リーゼ・マクシアの人間なら誰もでも知ってることさ。ガイアス王が国葬で送り、ドロッセル様が遺体を引き取ったんだぞ。以来、お嬢様はショックでお屋敷に引きこもってしまわれた……」

「じゃあ、本当に……!」

「ローエンが……」




ガイアスとドロッセルが実際に見て埋葬したとなれば、これは人違いではない…




「ローエンを殺した犯人は?」

「わかってるのは、遺体がエレンピオスのウプサーラって湖に浮かんでいたことだけだ」




ミラが店主に情報を聞くと、ウプサーラ湖が発見現場ってわかった

だけどウプサーラ湖と聞いて何か違和感を感じていると、側にいたエルが「ウプサーラ…ミズウミ……」って何かを思い出そうとしようと呟いている

そう言えばエルの家の近くに湖があると言っていたな。だけど、ここは分史世界だから何の手掛かりにもならないかも

言わなくてもエルなら後からそう理解するだろうって黙っていると…




「悪ふざけにつきあう気はない。さっさと消えろ!」




どうやらこの店主はローエンの偽者がからかいに来たと思ったらしく、怒り続けたまま私達に立ち去れと言ってきた

これはもう、ここにはすぐ立ち去った方がいいって皆思った。ただでさえ、分史世界でそこに住む自分と会わないようにしなければならないから

にしても……




「私が殺されているとは……」

「皆がエレンピオスを知ってて、八年前にローエンがってことは―――」

「ここは正史世界より、数年先の未来なのでしょうね」




目立たない場所に急遽移動した私達は、この世界が正史と近い未来の世界だと話し合って判断する

そしてその時に私は違和感に感じたのがわかった




「ねぇ、ウプサーラ湖で“浮かぶ”っておかしくない?」

「ん?………そう言えば、あそこは正史世界では枯れている。じゃあここでは水が戻っているって事か!」




そう、浮かぶって事はこの世界では湖としてちゃんと存在しているのに気付く。それをルドガーに話すと皆も気付いて次に向かう場所を考える




「正史世界と一番異なるものに時歪の因子があるから……」

「そうなれば、そのウプサーラ湖……ローエンが殺害されたという現場に行ってみるか」

「自分の殺害現場を訪れるとは複雑ですね」




そう決まった時にローエンは複雑そうに少し苦笑いをしながら言った




「そうだよね……嫌な思いさせて、ごめん」

「いえいえ、リルさんは何も悪くないですよ。むしろリルさんとルドガーさんは私の複雑な気持ちの倍を今までに感じてきてるはずです。お任せばかりしているわけにはいきません。どうぞお気になさらず」

「だけど…」

「じじいはこんな可憐な女性に心配されただけで頑張れますので大丈夫ですよ。ありがとうございます」

「ローエン…」




また励まそうとしたら逆に励まされてしまった

複雑な気持ちは比べるものじゃなく、誰にだって感じるものだから無理しちゃいけないのに…

だけど、ローエンはいつものように茶目っ気のある笑顔で私に安心させてくれたから、私からも申し訳ないって気持ちとお礼を言う


そうして少し気持ちを切り替えた私達はウプサーラ湖に向かうため、まずはマクスバードに行った




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