最後の道標を求めて

マクスバードに行くと、リーゼ・マクシアとエレンピオスを繋ぐ通路の商店街で、光輝く可愛らしいマスコット……シンフォニアに出てきたノイシュみたいなのが本物の生き物みたいに動いていたのを驚いた

よく見ると、それは源霊匣でこの世界でジュードが源霊匣の開発に成功していた事がわかり、正史世界もそうなるかもしれないって言う希望の光が差す


それを知って喜ぶ私達は新たに……この世界でローエンと同じく殺された二人の仲間を知ってしまった


一人はそのジュード。オリジンの開発が成功した後に殺されてウプサーラ湖で浮いていたってマクスバートにいた商人に聞いた

二人目はエリーゼ。マクスバードからトリグラフに行き、更にそこから汽車でディールに着くと、街の人達がウプサーラ湖で見つけたって言うぬいぐるみ…ティポを持って話しているのを聞いて知る




「(一体誰が……なんで、今一緒にいる仲間が殺されたんだろう?)」




私はローエンとジュードが殺されたのを聞いて、これは単なる無差別で権力者や有名人を殺害したのか?って考えたけど、エリーゼは普通に一般人として暮らしていたみたい。だから……




「(もしかして……犯人はこの仲間をよく知っている人?だとしたら……)」






仲間の……誰か?



……いや、絶対違う!!嫌な方に考えてしまったけど、そんなわけない!!

何の恨みか知らないけど仲間を殺せるメンバーなんて……いないはず!いないって信じる!

私はなんて事を考えてしまったんだって自分を責めながらそんな考えを頭から消して、犯人は知らない人であってほしいと願いながらウプサーラ湖に向かって歩く



















―――――――――――――




行く道は緑が青々として天候も安定していたから、ここは本当に正史と違うな…って思っていると、私達の目の前に光を反射させてキラキラ輝く水面が見えた

……あれが源霊匣でマナが戻って本来の姿になったウプサーラ湖か。改めてジュードの功績に感動しそうになるけど…




「緑がこんなに…」

「あれが、遺体が浮かんでいたという湖ですね」




それを知ってから見る湖は素直に感動できなく、なんだか怖いような悲しいような……そんな複雑な気持ちが漂っているように見える

そして、その湖の近くにある立派な建物…まるで別荘みたいな家に目が行く




「誰か住んでいるのか……」




ミラの言葉にまさか。って思った

だってここは殺人事件が起きた場所で、そんな所に家を建てて住むなんて普通の人は出来ない。だけど、出来る人がいたとしたら……




「(まさか、あそこに犯人が…)」

「…正史世界にはあんな家なかったよな?」




そうとしか考えられない上にルドガーの一言でたしかに…って、怪しさが倍増する

ローエンから「調べて見た方がよさそうですね」って提案を受けて、皆それに賛成すると……




「調べなくていいよ…あれ、エルの家だし」

「えっ!?」




一人だけ、何やらそわそわしている様子のエルが静かにそう呟いた




「エル…?」

「え?今、何て……?」

「……あれ、エルの家なんだってば!」




私とルドガーが聞き直すと、エルはそう興奮気味に大声で言って、あの家に向かって走って行ってしまった!




「パパァーッ!」




エルは家に向かってそう呼ぶと、中から黒いスーツの男性が現れる

誰だろう。あの人……




「追うぞ」

「……ああ!」



ミラの一言で皆もあの家に向かってエルを追いかけた。これは……色々ごちゃごちゃでわけがわからなくなりそうだ

だって、ローエン達が殺された湖の近くにある家がエルの家って…

まさかあの黒いスーツの男性はエルの父親じゃなくてローエン達を殺した犯人で、エルの父親をも殺して家を乗っ取っているんじゃないか?って嫌な考えをしながらエルに追い付く


何か仕掛けてこないか?って、私達は固唾を飲んで様子をみていると、エルが男性に「パパ……」って呼ぶ

男性は……目と顔の半分を覆う仮面をしているけど、そこから微かに覗かせる優しい眼差しと微笑みでこう言った




「お帰り、エル」




エルの様子からもだけど、この言葉で彼が……エルの父親だって確信して私達は驚く




「悪いやつ……は?」

「追っ払ったよ」

「ケガ……してない?」

「大丈夫だよ」

「よかったぁ……」




そんな私達を他所に、エルは大好きな父親と抱き合って再会出来て喜んで……今まで我慢していた分の涙が溢れるように泣いていた

エル……父親と再会出来てよかったって私達も思いたいけど、ここは分史世界な上に曰く付きの場所。素直に喜べないところだけど、誰も親子の再会に水を差すことはしない

静かに見守りながらジュードは男性の付けている仮面を見ながら疑問に思っていると、何故かルルが「ナァ〜」って安心している様子の鳴き声で……男性に擦り寄った




「(ルル…?)」




たしかにルルは猫のわりに人に懐っこいけど、なんで初対面の男性に……あ、でもエルに懐いたんだから、エルと血縁関係のある父親にも懐くのかな………あれ?けど、そもそもなんでエルに懐いたんだろう?

……疑問に思うと、それがまた疑問を生み、答えが見つからないって思っているとミラが「あれがエルの父親か…」と皆に聞くように言う




「分史世界の、な」

「ええ、忘れそうになりました」

「正史世界に、この家は存在しなかった」

「つまり、あの人が―――」

「時歪の因子…かもしれない…」




そう、情に流されちゃ駄目。皆も改めてそう考えていると、男性は私達を見て話しかけてきた




「娘が世話になったようだね…ヴィクトルだ。立ち話もなんだ。大したもてなしは出来ないが、食事でもどうかね」




そう私達に気を遣う言葉を言う男性……ヴィクトルさんに「あ、普通の人かな?」って安心しかけた



その時




「………ルドガー・ウィル・クルスニク君」

「っ!?」

「えっ?」




なんと、ヴィクトルさんはルドガーの名前を知っていた!いや、エレンピオス人でルドガーが今もクランスピア社のエージェントだったら、知っていても不思議はないけど…




「(なんだ?……あのヴィクトルって人。何か異様な雰囲気が……!)』」




エルに向けていた優しい表情から一変、一瞬だったけど、まるで………殺意に満ちた目でルドガーを見たような気がした

そんな不安を募らせながらも、私達は家にお邪魔する事に























家に入った私達は、ヴィクトルさんがキッチンで調理している間にリビングで複雑な心境のまま椅子に座ってゆっくりしていたり、飾られている写真や窓からの風景を見て待っていた




「すっごく美味しいから、皆びっくりするよ〜!」

「そうか〜それは楽しみだ!」




私とエルはそう話しながら待っていると、エルはリビングに飾られていた写真を持ってきて色々話を聞かせてくれる

エルの嬉しそうに生き生きと話す姿を見て、ミラがいなくなる前の元気な姿に戻った気がしたから、私もそんなエルの気分を害さないようにちゃんと話を聞く




「これエルが三歳の時で、これはパパで、こっちがママで…」

「エルのママ……ラル・メル・マータさんって言うのか」

「うん!」




ジュードが写真に書かれていた名前を読み上げる

ラル・メル・マータ……前に仕事で聞いたような名前だって思いながらヴィクトルさんについても考える




「(とりあえず、あの人はエルの父親って名乗ったけど、ここは分史世界。“本当の親子”ではないはず。それをわかって私達を招き入れた?それとも知らないで…?)」




エルの父親だってわかった後に疑問に思った事がある

私達は正史世界から来たから、ここにいるヴィクトルさんとエルは正真正銘の親子ではないって考えた

正史世界には無い場所で、本来いないはず彼が……時歪の因子の可能性が高いだろう

けど、私とルドガーが近づいても彼からは何も反応は無い。次に疑問に思ったのはこれだ

一番怪しい人物だけど時歪の因子ではないのか?まさか……って思っていると、エルが顔を下げて考えていた私にどうしたか?って聞いてきた




「大丈夫?どっか具合悪い?」

「あ、いや………」




咄嗟に誤魔化そうとした私の目は、ここに来る前にモンスターとの戦闘で付けてしまったであろう足と腕に付いた泥を見つけた




「あ、ごめんエル……泥が付いていたのを見つけてさ。洗面所を借りていいかな?」

「うん、いいよ!えっと洗面所は…」




エルに案内されてリビングを出ようとした

その時、キッチンからヴィクトルさんが現れて少しビクッとしながら見ていると




「一階の洗面所は……壊れているから、二階の方を使ってくれないか?」

「あ、は、は、はい……」




思わずビクビクした感じに返事をしてしまった私にヴィクトルさんは微かに微笑んで、またキッチンに戻った

エルは「そうみたいだから、二階の方に連れていくね」って何事もなかったように……ヴィクトルさんの異様さに気付かないまま、私を二階の洗面所に案内してくれた



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