出現。そして…






「ルドガーー!」




結界術が消えたと同時に素早くルドガーの元へ走るエル




「む!?この気配は……まさか」




クロノスは何かに気付いて驚いたように私達を見る。これは…オリジンの結晶を使ったのがバレたみたいだ

だけど、クロノスは誰がその力を使ったのかわからなくて辺りを見て探していると、その内にエルがルドガーとクロノスの間に来てルドガーを守るように両手を広げて立った




「……どけ」

「やだっ!」

「二度は言わぬ」




たとえ子どもだろうと邪魔をする者は容赦しないと、クロノスが再び精霊術を詠唱する

まずい!エルも恐怖に震えているけどルドガーを守るために一歩も引かない




「どかないよ、ルドガーは…エルの……」

「そうか……もしや、貴様が与えられた者か?ならば……耐えてみろ!!」




クロノスはエルがオリジンの結晶を持っているって勘違いしたのがわかった私は、急いでエルの元へ向かう!




「エル!逃げて!!」




そう私が叫ぶと同時にルドガーも慌てて再び剣を持つけど、間に合わない!





エルがクロノスの攻撃に巻き込まれ最悪な事態になる―――!!













「たったひとつの命、無駄に捨てるな」

「え?」

「あ、あれは……!」




誰もがもう駄目だと思った時、いつの間にかエルの前に立つ人物が現れた!あれは……




「ビズリー・カルシ・バクー」

「ビズリー…!」

「社長!」




クロノスがその人物の名前を言ながら、術の詠唱を止める


そう、現れたのはビズリー社長だ。まさかの登場に驚く私達に社長はクロノスに話す




「カナンの地に入る方法なら、私が知っている………―――――だろう?」

「(えっ……!?)」

「……貴様」

「おっと、最後のカナンの道標、“最強の骸殻能力者”は分史世界で手に入れた。この世界には、まだ残っているぞ」

「!」




ビズリー社長はそう言いながら一瞬、全身を包むフル骸殻に変身するように力を出して証拠を見せた




「ビズリーさんも骸殻を!」

「私とクルスニクの鍵、同時に相手をしてみるか?」

「ビズリー、なぜ……!?」




骸殻を使えるのに驚くジュード達と何故自分達の前に現れたのか疑問に思うユリウスさんには何も答えずに、真っ直ぐクロノスを見てどうするか問う




「確かに少々面倒だ。ならば……クルスニクの鍵だけでもっ!」




少し厄介な戦いになると判断したクロノスはただ引き下がる事なく、せめてクルスニクの鍵を抹殺しようと……能力者だと思っているルドガーに目掛けて飛んできて彼を蹴飛ばして術をしかけようとした!




「ルドガー!」

「リル!ここは俺が行く!……させるかっ!!」




ルドガーを助けに行こうとした私を止めて、ユリウスさんが代わりにクロノスに向かって行った




「うおおお〜〜っ!」




ユリウスさんがクロノスを捕まえたと思ったら………なんとそのまま海に向かって道連れをするように飛び込んだ!

私も皆もそのやり方に驚いたけど、その海に落ちる寸前で何かの術に包まれて二人は消えた!あれは……




「空間転移!」

「……残り少ない力で無茶をする」




どうやらユリウスさんは骸殻の力を使って別空間に飛んだらしいけど…大丈夫かな?

心配して飛んだところを見ていると、ビズリー社長が「おそらくクロノスを飛ばした後に逃げてくるだろう…あいつもただじゃ死なない奴だ」って私に心配は無用だって言ってくれたけど

私は話しかけられただけなのに、思わずドキッとしてビズリー社長から一歩遠退いた


何故なら…あの時社長がクロノスに言ったカナンの地へ入る方法を聞いてしまって、信じられなくて少し恐怖しているからだ




「ビズリー、カナンの地へ入る方法を知っていると言ったな?」

「ああ―――」




さっき話した内容は本当かどうか確かめるためにミラが社長に聞いた。それをここで正直に話すのか?って固唾を飲んで黙って聞こうとした……そしたら




「行かなくていい……!カナンの地なんて、行かなくていいよっ!」




突然、エルがそう大声でビズリー社長の話を中断させ、皆に本当に行かないでほしいと訴える




「(エル?この様子だと…もしかして…!)」




私はあれだけカナンの地に行くために頑張っていたエルが急に気持ちが変わってしまったのを見て確信した


やっぱり……カナンの地へ行く方法は……!




「いきなりどうしたの、エル?」

「わかっているだろう。すべての分史世界を消すにはオリジンに願うしか――」

「そんなの、みんなでなんとかしてよ!エルもルドガーも…それにリルも関係ない!」

「ちょっと、落ちついて」




どうしてエルがそんな事を言い出したのかわからないミュゼとミラは落ち着かせようとしたり、行く目的を思い出させようとしたけどエルは聞かずに、挙げ句に自分とルドガー以外の仲間達で何とかしてと言い始める

エル……クルスニク一族に関わった私も心配してそう言ってくれて嬉しいけど、皆はそこまで言われても何を訴えているのかわからない様子

本当は私も口添えしたかったけど……何を企んでいるのか見えない社長が居る前で下手な言動は出来なかった

そう私が悔しく思っていると、ルドガーは静かにエルに………二つの同じものが一つになった大事な懐中時計を見せて言った




「エル……俺と約束しただろ?」

「や、約束なんて……どうでもいいし」

「いいわけあるか!」

「ある、ある、あるのっ!エルがいいって言っているんだから!」




一瞬、大事な約束を破るのは悲しいって思ったみたいだけど、それでもやっぱりカナンの地に行かなくていいという気持ちは曲げず、ルドガーにわかってほしいと激情して手をばたつかせる

すると、その拍子でルドガーの手に当たり、持っていた懐中時計を落としてしまう

エルは咄嗟に拾おうとしたけど、約束の証である物だと思い出して拾わずにルドガーに言った




「い……いらないよ、そんなのっ!」




首を振って懐中時計すらも拒否したエルは直ぐに後ろにいたビズリー社長をキッと睨む




「ほう…」




社長は……子どものやる事だとあしらうように笑うけど、私には何かに気付いたように怪しく企むようにしか見えなかった。そしてエルは涙を堪えながら私達から走り去って行ってしまった




「エル!待っ……」

「心配はいらんだろう。それより……あの娘の言う通りだルドガー。お前は、もう骸殻能力を使う必要はない」




私が追いかけようとした時、ビズリー社長に止められて皆と一緒に話を聞く事になった

しかも、内容はルドガーはもう骸殻は使わなくていい?それって…




「用済みってわけ?」

「いや。ルドガーは、なすべき仕事をなしたということさ。我が一族の―――人間の悲願、カナンの地を出現させたのだ」

「………」




ミュゼに言われたのに対してそう答えるビズリー社長。私は聞いてしまった方法から考えると、その発言でますます社長が何を考えているのかわからなくなった




「ルドガー、私はお前を誇りに思う」




そう言いながらビズリー社長はルドガーに握手を求めた


けど、ルドガーはそれに応じる前にエルを探さないとって追いかけようとした。そう……ルドガーも私と同じ事を考えていたよね。今はエルを一人にしちゃいけないって




「ふっ、ユリウスの奴が心配するわけだ……追ってどうする気だ!お前がこれ以上骸殻の力を使えば、あの娘は時歪の因子化するぞ」

「……っ!」




しかし、忘れていた事実を突き付けられルドガーの追いかけようとした足は止まる


…カナンの地に行くとしたら、多かれ少なかれ骸殻を使う。そうなればエルに辛い思いをさせて最悪時歪の因子になるかもしれないから、これは追って無理に約束を果たそうとするのは正しいのか?ってルドガーは悩んだ




「言っているだろう、心配するなと。エルは配下の者に保護させる」

「ルドガー、こういう時は時間をおいた方がいいよ」




そんな時に社長は自分の配下に任せてくれと言い、それを聞いて安心したレイアがお互いのためにってそう言ってくれた


ルドガーは本当にそうしていいのか?と少し納得出来ない様子だけど、とりあえず頷く




「(まずいな……社長の配下に任せるってなれば……!)」




下手に行動が出来ないから冷静を装っているけど、内心はなかり焦って落ち着かなかった




「で、カナンの地へ入る方法は?」

「それも本社で説明しよう。慌てるな、カナンの地は逃げはしない……逃がすものかよ」

「………」




ミラの質問にそう答えた社長は…ようやく念願の時だと言うようにカナンの地を見上げた



…これでわかった。間違いなくビズリー社長は……私達を利用している


願いである分史世界の消滅はまだ嘘だと100%決まったわけじゃないけど、このまま言う通りにすればいけない。そして悪い事が起こるって思った

そうなれば、早くここから離れてエルを……



そう気ばかりが先走りそうになっていたら、次にビズリー社長は私に言ってきた




「リル。お前もよく頑張ってくれた。ルドガーと共に誇りに思う」

「っ………はい。ありがとうございます」

「そして悪いが、お前にはもう一つやるべき事がある。大丈夫か?」

「大丈夫です……何でしょう?」




どんな用件か聞くと「いや、今ではないがな…」って言って続ける




「少し準備が必要なんだ。私から指示を出すまでルドガー達と共にクランスピア社で待機していてくれ」

「………はい」




そう私に告げたビズリー社長は何処かへ行った


よし、今だ!って社長がいなくなった隙にルドガーにエルをすぐに探そうって言おうとしたら、まだマクスバードの柱の陰に隠れて見張るエージェントを見つける




「(まだ居たのか!あれじゃあ何事もなくクランスピア社に行くかどうかも見張るだろう…!)」




やっぱりビズリー社長は……!




さっき聞いてしまった言葉が頭の中に甦る





カナンの地に入る方法。それは…………






















“クルスニク一族の命”を使う





おそらくエルはそれを聞いて、ルドガーが殺されるかもしれない不安で行かなくていいって言ったんだろう。そう言うのも無理はない…そう思うと、エルの悲痛な訴えも頭の中に響いた




「(お願い……皆、気付いて!)」




エルが何を聞いて何を思ってあんな事を言ったのか……!


ヴィクトルさんの事で少しばかり距離を置いていたけど、やっぱりルドガーを大切に思っているエルが……このまま社長の配下に見つかってしまったら、きっと……




「(きっと、ルドガーを庇う…!)」




ルドガーを助けるためにエルが本当のクルスニクの鍵は自分だって名乗ったら、次はエルが危ない…!


そんな小さな子の大切な人を守る気持ちに思わず涙を流しそうになった時……






私はある大事な事に気付く






「(クルスニク一族の……命……まさか!!)」





嫌な予感がした私は、慌ててルドガー達に走り寄った




「どうした?」

「な、なんでもない……ただ……早くトリグラフに行こう!!」

「ん?あ、ああ…」




私の慌てた様子に少し困惑して心配するルドガー達




「大丈夫?何かあったの?」

「う、うん…大丈夫…」




私はとりあえず今は皆と一緒に汽車に乗り、トリグラフに着いたら別行動をしようって思った……





クルスニク一族である大切な人の元へ急いで行こう




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