予期せぬ宣告
トリグラフに着いた私達…いや、特に私だけだね。クランスピア社に急いで向かった
その途中でノヴァとヴェランド頭取がルドガーの借金について言い争いをしているところに出くわす
ノヴァはルドガーの様子が変だから借金の取立てを止めたいって必死に訴えるけど、ヴェランド頭取はルドガーに元々問題があるだのテロリストの身内だからだの言ってルドガーとユリウスさんを貶し、更に仕事の出来ない人間は辞めてもらうってノヴァに言い捨てるとさっさとその場から去って行く
その後に話を聞いていたルドガーが申し訳なさそうにノヴァに謝ると、彼女はそんな事は気にしていなくルドガー達が酷く言われた事に対して悔しそうに涙目で逆に謝った
「すごく困ってるみたいだし、お金返した方がいいんじゃない?」
そこでミュゼがノヴァを心配してか、ルドガーに借金の返済をしてからクランスピア社に行かないか?って提案してきた。それに対してルドガーはすぐに頷きノヴァと別れて返済額を集めようとした
だけど私はすぐに行かなければならない心だったから、危うく『え、待って!』って慌てて言いそうになる。けど一旦呼吸をして落ち着いてから私は皆に言った
「あ…だったら私、先にクランスピア社に行ってヴェルさんに報告してくるね!」
「リル、さっきから本当にどうしたんだ?待機命令が出ているなら、ゆっくりしててもいいんじゃないか?」
「いや、その……やり忘れていた仕事を思い出してね」
なんとか妥当な理由を言うけど、違和感を少し持たれてしまったから大丈夫かな?って様子を見ていたらルドガー達が「それなら仕方ないな」って言ってくれた
な、なんとか通ったな……安心はまだ出来ないけど、ここで変な言動したら意味がなくなるからルドガー達から離れるまで冷静を装わないと…
「じゃあ、しばらくしたら俺達もクランスピア社に行くから」
「わかった!じゃあ、また…!」
私はそう皆と離れて…走ってクランスピア社に向かった
皆はまだクランスピア社には近づかないだろうと思って私は、今ビズリー社長に近くの立場でいるであろうあの人の所に急ぐ
「お疲れ様です。リル副室長」
クランスピア社の中に入ると、ちょうどフロントにヴェルさんがいた。私は少し急ぎ足で彼女に近づいて話した
「お疲れ様!あの…ヴェルさん」
「?…はい」
私は少し息切れしながら早口だけど、ヴェルさんに聞く
「リドウさん今日来ている…!?」
「リドウ室長ですか?はい。本日は出勤なさってますけど…」
「じゃあ、何処に居るの?」
「申し訳ありませんが……先ほど外出しましたので、どちらに行かれたまでは存じません」
「そっか…」
私は一足違いだったか。って悔しく思っていると、ヴェルさんが私の急ぎように疑問を抱いて「何か急ぎのご用件がありますか?」って聞いてくる
「いや、ちょっと……プライベートな事で」
「それは失礼しました。では、入れ違いでリドウ室長が戻られたらリル副室長がお探ししていたのを伝えますので」
「ありがとう…なら、ちょっとそこら辺探してくる!」
ヴェルさんは私とリドウが付き合っているのを知っているから、プライベートでって言えばそれ以上は詮索してこない
そして、もし私が今外に探しに行ってすれ違いに戻ってきたら伝えておくって言ってくれたのに感謝して、また外のトリグラフ市内に出ていった
トリグラフ内は広い上に人が多い中あの特徴的な赤いスーツを探す。いつもの彼を探すやり方だ
大概は行きそうな場所に行けば見つかるけど、この時はその予想が全て外れる
「(全く、こんな時に…!)」
一大事の時に限って…特に今は本当に早くに会って話さないといけないのに!ってなかなか見つからない状態に、焦るばかりで少しイライラしてきた
もうこうなったら、周りの目を気にせずに大声で名前を呼んでやろうか?って思った時…
目の前の店から赤いスーツを着た黒の長髪が見えた!
「リドウさんっ!!」
「リル……!?」
私の慌てように驚いたのだろうか?店から出てきたのはやっぱりリドウで、彼は私の様子が異様な事に気付いて「どうした?」って聞いてきた
「あの…その……!」
「少し落ち着け。一体何が…」
「リ、リドウさんって……今すぐクランスピア社を辞める事って出来ますか!?」
「は…?」
急ぎすぎてしまい自分でも少し興奮気味に話してしまったけど言いたい事はそこから始められるから言い直しはしなかった
すると、リドウは当然ながら私の突拍子もない言葉を聞いて目を見開き驚いて困惑する
「お前、いきなり何言い出すんだ?」
「私、その……聞いてしまったんです!カナンの地へ行く方法を」
「!?」
カナンの地へ行く方法をってリドウが聞いた瞬間驚き、すぐに私の話を黙って聞く様子になった
「クルスニク一族の命を使うらしいんです!だから…このままクランスピア社に居れば貴方を利用するかもしれません!」
そう、クルスニク一族ってなれば……当然リドウも含まれている
今までのビズリー社長のやる事やその発言で私は思った。彼はクルスニク一族の部下全ての命を利用して行くんじゃないのか?って
だから、このままクランスピア社のエージェントでいれば殺されるかもしれない…!そんな不安が出てきて私は彼に一緒にクランスピア社を辞めようって言いに来た
こんな突然な話をリドウは信じてくれるかな?でも、社長が言っていたのをたしかに聞いた!………いきなり辞めようって言われて困るかもしれないけど私の気持ちはわかってほしい
そう思っていたら……
「無事に辞められるとは思えないな」
「じゃ、じゃあ、夜逃げで人目に付かない所まで行けば…!」
「……前にも聞いたと思うが、なんでお前は自分の大事な仲間を殺した俺を助けようとするんだ?」
「それは……い、一応私と付き合ってる大事な人ですから…」
今更ながら前に聞いてきた質問をまた聞くリドウ
なんで今それを?逃げるのが無理って諦めているのかな?たしかに突然言った事で計画とか全然立ててないし、行き当たりばったりになりそうで不安になるけど……今はいつまでもここに居たらダメだって気持ちが焦るばかり
……彼はやっぱり無理だって言うのかな?
「ふ……ははははははっ!」
「え……?」
突然笑い出したリドウに何が起こったのかわからず唖然として見ていると、彼は徐々に笑いを止め話し始めた
「お前…やっぱり馬鹿だな!」
「あの…一体…」
「見つけたっ!リドウ〜」
何で笑ったんですか?そう聞こうとしたその時、また突然に私達の前に一人の女性が現れる
その人は長めの茶髪で目鼻立ちがくっきりした大人っぽい綺麗な顔で、スラッとモデルみたいな体型にスカートの短い少し派手目な格好していた
そんな彼女はリドウの名前を呼びながら彼の側に来た
「そちらの方は…?」
初めて見る女性に仕事関係の知り合いなのか、何気なく聞いてみたら…
「ああ。美人だろ?……こいつ俺の新しい彼女」
「は……?」
また突然に思いもしなかった事を言うリドウに言葉は一言しか出なかった