予期せぬ宣告





この女性が新しい彼女…?はぁ……!?




「え、いや、あの……何こんな時に冗談を…」




私はすぐに唖然として思考が停止していた脳を動かして、なんとか言葉を出した

そう言えば彼は突拍子もなく冗談を言ってからかう人だ。だけど今は一大事な時だってのに…そう思ってリドウを、次に女性を見て“大事な話の最中です”って言葉を視線で訴える




「冗談じゃないさ。俺は本気でこいつに惚れたんだ」

「え……!?」




ところが、リドウの口から出たのは冗談ではないってきっぱりした答え。そう言った後のリドウは女性と見つめ合って…私を嘲笑った




「いや、でも……おかしいじゃないですか。私はリドウさんと別れた覚えはないです。だから、いきなり新しい彼女って……」

「“別れてから新しい恋人をつくる”ってやり方はたしかによく聞くパターンだ。だが、それはそうしなければいけないって法律はない。だから“新しく恋人を作ってから別れる”って、やり方も一つの方法じゃないか?」




私がそう正論を言おうも、彼は表情を変えずに楽しそうな様子で私に屁理屈な言葉で反論する

……これは冗談にしては悪すぎるな




「じゃ、じゃあそうだとしたら、それは二股って言うんじゃないんですか!?さも別の合法なやり方をしたように言わないで!」

「これだからお嬢ちゃんは…子どもの時に教わる道徳なんて世の中で全て通じるとは限らないんだぞ?」




いい加減「冗談だ」って言ってほしい気持ちを込めて、少し怒り口調で反論に反論しても返ってくるのは私の言葉を嘲笑ってバッサリ斬るものばかり




「なぁ、リル。こんな事をする俺をそれでも助けたいか?」

「……!」




そうしていると、リドウはまた女性が現れる前のような真面目な口調に戻る

それを聞いた私は「(もしかしたらリドウは私を試していて、ここで助けたいって言えばこんな酷い事も冗談だって言って私と一緒に逃げてくれるかもしれない…!)」と、淡い期待が出てきて恐る恐る答えた




「…………助け……ます。だって、私に酷い事したからって、貴方が殺されてもいいなんて……ないから……」




リドウの様子を見ながらだったけど、なんとかそう言い切った

これで、どう状況が変わるか静かに見続けていると………








「ハハハハッ!まだそんな事を言うって、もう馬鹿を通り越して頭おかしいんじゃねぇか?この際だからハッキリ言うが俺はお前なんて何とも思ってない。全て俺の個人的な目的で利用させてもらったんだよ!」

「そ……んな……」




言葉は変わらないどころか今までの事を馬鹿にして笑いながら否定し出す。それを聞いてまた一瞬彼は何を言っているんだ?って頭の中が停止したけど……

ただ、彼からの言葉は私の心にグサリと刺さり、体が無意識に震え出したのはわかった




「それに安心しろ。お前が聞いたカナンの地に入る方法はあくまで一つの手で、もう一つ手はある。おそらく社長はその後方を使うつもりだ」

「え?そ、その方法って…?」

「さぁな」




入る方法はもう一つあるんだって?それはどんな方法か聞いたけど、リドウははぐらかして私に教えない




「なるほどな…お前はもう一つの入る方法を知らなかったから俺に必死で忠告してくれたんだな」




そう言ってリドウはさっき私がカナンの地に入る方法を教えて一緒に逃げようと言った事に対して思い出し笑いをした

……最初からもう一つ入る方法を知っていた彼にとっては、私はさぞ一人先走って慌てている愚かな奴だと思っただろう

そして、それを最初に話さず後になってから教えて私を唖然とさせる…………そこまで理解した私は次に本気の怒りが沸いてきた

何故こんな事を!?そう聞こうとしたら、彼がその質問に答えるようにまたとんでもない事を言い出す




「だから、逃げたいならお前一人で行け。………どのみちお前はクランスピア社の命令無視と俺の任務妨害の件でクビになっているからな」

「ク、クビ!?」




更に畳み掛けるようにつき出して来たのはクランスピア社への解雇処分が認定された書類だった

無造作にそれを私に投げ飛ばしたけど、紙だから正確な方向には行かずヒラヒラとリドウの足元近くに落ちた。それを慌てて拾ってみると……

間違いなく私が今日から解雇処分された内容と、それを許可したビズリー社長の印が押してある

なんで……?

なんで今更こんな事に……!?

あまりにも急すぎるし私自身に何も話がないまま解雇処分されたのが納得いかない!それに私はこの後、いつになるかわからないけどビズリー社長からやってもらいたい任務を任せられたはずなのに…




「お前が与えられた社長からの任務についてだが、それは俺が引き継いだ」




ビズリー社長が言った後から“やってもらいたい任務”に嫌な予感がしていたものだったけど、今の社長に近付いたら何処かに行ってしまったエルに会えるかもしれないって密かに企んでいたのに……

私がこの先立てていた計画が、予想外すぎるリドウの言動であっけなく壊されてしまった



絶望していた私にリドウと女性は見下して笑っている




「お前は単なる遊び相手として利用させてもらったが、俺のやる事に対する妨害が目障りだったからな。その罰だ」




………なるほど………つまり、そういう事か




「つまり………あんたは私が大人しくしていればまだ利用していたけど自分の妨害をしてくる不都合な存在になったからビズリー社長に口添えして、完全にあんたの前から消すように仕向けた……と言うわけ?」

「お。馬鹿なお前もそこは理解したか」




そうか………私が今までクランスピア社に何らく居れたのは、みんなリドウが……私を私利私欲のために利用しようとしたからか




何も知らない私を……!




ここまで何重にも私にこれでもかってくらいの酷い仕打ちをしたリドウに悲しみと怒りで……もう冷静に話し合うなんて無理だ

そう思った私は立ち上がってリドウ達を睨み付ける




「わかった………だけど、勘違いしないで。あんたの言葉に頷いたのは全て受け入れたつもりじゃない………あんたがどうなっても良いって思ったからだ…!」

「なんだ?もう気持ちが変わったのか?まぁこの期に及んでまだ助けたいとか言う奴の方が正気か疑うとかろだからな」




はい。そうですよ。この言葉は本心から

例えビズリー社長がクルスニク一族の命を使わず別の方法でカナンの地に行くとしても、この先どうなるかわからない。何か別の用途でその命を踏み台にするかもしれないから、そうなっても私はもう無関係だ

だけど、こんな風に人を馬鹿にしたのは許せない………そういう気持ちを込めて言ったのに対してリドウは少し驚いた表情をしたかと思ったら、またすぐに楽しそうに……罪悪感は一切感じられない顔をした




「ねぇ、もういいでしょ?私、待ちくたびれちゃった〜」

「ああ、悪いな。ならお詫びとして今からとっておきの場所に連れて行ってやるよ」

「本当?嬉しい〜!」




そうこうしていると、女性はリドウがいつまでも私と話しているのを見てて飽きてきたのか、猫なで声のように甘えた口調でリドウの腕に絡み付いた

それを見たリドウは女性にいとおしそうな目で……………前までは私に対して向けていた目を向ける

そして、あたかも最初から私がいないように二人で勝手に話をした。まるでとことん嫌がらせをするように楽しそうな様子を見せつけているみたいで……!



私は自分の首にしていたペンダントを無造作に力任せに引きちぎった



そう、このペンダントは………私の誕生日の時にリドウからプレゼントされた彼とお揃いのもので、告白されて交際がスタートした思い出のある物



それを私は………







「あんた達なんか……………地獄に堕ちろ!!!」






そう精一杯怒鳴って、リドウに向かって投げつけた




そしてすぐに踵を返して自宅に走る




………後ろから聞こえる笑い声と馬鹿にする言葉で一人叫びたくなるのを我慢して




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