予期せぬ宣告






なんなの?


あれは一体何だったの………!?


悲しいのかわからない怒りで満ち溢れた心の今では、そう単純に思う事しか出来ない


自宅に向かっている時に何を思ったのか、まだこれは何かの間違いないじゃないか?って気持ちが少し出てきて、それに期待してしまう


しかし、自宅に着いた時に………玄関前に置かれた物を見て、やっぱりリドウの言った事は全て本当なんだと思い知らされた

その物っていうのは……クランスピア社に置いているはずの私物。きっとリドウが自分の部下に命令して持って来させたんだろう




私はそれを数秒間黙って見た後、何も考えずに黙々と置かれた物を自宅の中に入れた

























全て入れ終えると物は意外と多く、部屋の中が散らかってるように見えた。だけど、それを片付ける事なく空いているスペースに腰を下ろして座り込む



いつにも増して静かに感じる部屋の中は、今の私に落ち着きを取り戻す空間でもあるし先ほどの出来事を頭の中で何度も繰り返されるものになった




私は…………本当にクランスピア社からクビにされた………





全てはリドウの都合で。リドウは私がいらなくなったから、自分の前から完全に消して………あの女性を…………


一人になり、いくらか落ち着いてきた私は、リドウに言われた事をゆっくり思い出し……




なんで、あそこまでの事をされなきゃいけなかったのか。っていうリドウに対する憎しみが大きくなり出した



思えば、確かに私がリドウの命令を無視してミラを助けようとしたのが悪いかもしれない

だけど、だからと言ってここまでやる必要がない。所詮は………私はリドウにとっての遊び相手でしかなく、彼を愉快にさせる道具だった








酷い




酷い……酷い………なんで









「……ふざけんなっ!!!」




憎しみでいっぱいになった心を発散させるため、私は押し返された会社の物を手に取っては色々な方向に投げ付けた


本棚、ベットの上の目覚まし時計、ミニテーブル等………ありとあらゆる所に投げた文房具などの物はぶつかる度にすさまじい音を出して床に落ち、壊れてしまう

だけど今の私には何とも思わなかった

これで怒りが消えてくれたら………この憎しみがリドウに届けば……



そう願うだけで、部屋の中が荒れてしまってもいいって気持ちだった



手元に投げる物がなくなり、どうしようか部屋の中を見渡すけど、また新たに物を取り出して投げるのも馬鹿馬鹿しい

だけど、一向に収まらない気持ちが止まらないから、すぐさまベットに倒れこみ顔に枕を押し付けて叫んだり怒鳴った















喉が切り裂かれるんじゃないかって勢いで何十回かやっていたら、なんだか疲れてきて自然と止めてしまった

押し付けていた枕から顔を離して仰向けになると、夕暮れで暗くなりつつある部屋の天井が見えた

また静かな空間になり、リドウへの憎しみが……


だったけど、私はふと、ある事を思い出した


いつだったかな……小学生か中学生の時にとある大学のカウンセリングだっけかの先生が来て講習会をしたんだけど、その先生が私達に聞いてきた



“愛情の反対語はなんだと思いますか?”



私達はその問いに“憎しみ”とかの負の感情だと答える。するとその先生は違うって言った


“愛情の反対語は無関心。だって、怒りや憎しみって愛情と同じくその対象者を見て思っている事ですよね。だったらその反対は相手に対して何も思わない……だと思うんですよ。怒りや憎しみは愛情が悲しい方に変わってしまったもの”ってのを聞いて私はなんで?って思った

周りにいた同級生達の何人かも「嘘だ〜」と言う声を出す。そんな疑問に思ったり否定する私達に先生はある例え話をした



“両親に対して不満はありませんか?よく喧嘩したりしてムカつくって思うけど、その原因を辿っていけば自分の事をわかってほしいとか、もっと自分を見てほしいって言う気持ちじゃないですか?それをもっと辿れば両親と仲良くしたい…だと思います”



それを聞いた私はなるほどって納得した

確かに相手に何らかの気持ちを持たなければ色々思ったりしない。そしてそれはみんな……愛情って気持ちの小さい種から来ているんだって











………………なんで今そんな事を思い出してしまったんだろう





その事が頭の中に出てきてしまったら………






私のこの気持ちは………





リドウに対する愛情が悲しい方に転がったものになってしまう





そう思ってしまうと“私に酷い事をしたのに対するただの正当な怒り”が“リドウに対してもっと私を大切にしてほしかった”っていうものになった






「うぅっ………ぐすっ…………」






認めたくないけど、納得してしまう……そんな悔しさからか、涙が溢れ出てきた


そっか。私は何だかんだでリドウがまだ好きなんだな


好きだから、こんなに怒り、憎んでしまうんだ……




だけど、今の彼はもう私に向き合おうともしてくれないだろう




そう思うと悲しくて……悔しい




怒りで誤魔化そうとした悲しさが、ようやく素直に受け入れた事で込み上げてきたんだけど、なんでわかってくれないの?とか、なんであの女を彼女にしたの?とか、またそう考える度に惨めになってしまう



私は怒りで疲れた体を横にしたまま今度は悲しみを発散させるため、涙を流しながら眠りに就こうとした








その時




私のGHSが鳴っているのに気付く




こんな時に誰?まさか………リドウ?





そんな事を密かに思って画面を見てみると、リドウじゃなかった



だけど、それは普通だったら思っていた人からの連絡じゃないって気持ちが沈むところなんだけど、沈む沈まないの話どころじゃない驚くべき意外な人からの電話だったから「なんで?」って思う気持ちが勝った




その意外な人ってのは…………







「………はい」

「リルか?今どこにいるんだ…!?」

「今自宅にいます。あの……急にどうしたんですか?…………ユリウスさん」







何故か慌てた様子で私の心配をしてきたユリウスさんだった




[TOP]