しかえし


電話してきた相手はルドガーに降りかかりそうになったクロノスの攻撃を弾いて、クロノスと共に時空の狭間に行ってしまったユリウスさんだった

時空の狭間から無事に戻ってきたんだなって安心したけど、なんで私がどこにいるのか真っ先に確認してきたんだろう?しかも焦った様子で……そんな疑問が浮かぶ

その事をいつ聞きだそうか。と思っているとユリウスさんは続けて聞いてきた




「そうか……ビズリーから何か言われなかったか?」

「え?社長にですか?しばらくしてから自分の元に来るように言われたんですけど……」

「それには絶対に行くなっ!!」

「えっ!!?」




とりあえずユリウスさんからの質問に答えようとすると、言い切る前にそう大声で言われた

その声には危機迫ったような感じで必死に止めようとする様子が窺えるけど…

本当に突然どうしたものか。私は驚きながら「えっ…あの…なぜ…?」ってしか、言えなかった




「あ。すまない…いきなり大声を上げてしまって」




私の戸惑う様子にハッと気付いたユリウスさんはすぐに驚かせてしまった事を謝罪した




「い、いえ大丈夫です……それにその呼び出された命令は多分取り消されました」

「取り消された?一体何故だ……」

「ユリウスさん?」




私がビズリー社長からの呼び出しは無くなった事を伝えると、ユリウスさんは何やら独り言をぶつぶつと小さく言って、何かに納得いかないような様子になったけど話を続けた




「まぁ何にしろ。君が無事でよかった」

「無事?一体何が……?」

「………君に尋ねられた事を、ようやくゆっくり話す時が来たみたいだから話させてもらう。長らく待たせたな」

「え…………」




なんで無事かどうか確認してきたのか。ここでようやく私は何故連絡してきたのか聞くと……ユリウスさんからある話をされた

何故、ユリウスさんがテロの名前を被る事になったのか。その原因は何か。それまで何をしていたのか。それとビズリー社長の真の目的は何なのか。を


















――――――――――――――





「そんな…そんな事が…!?」




ユリウスさんから話を全て聞き終わった私は第一にそれしか言えなかった

だって、ユリウスさんの言った話はあまりに知らなかった事だらけで………でも今思うとリドウがそれを隠すような素振りをしていたり、私にあまり詳しく話さない事があったからそう言う事だったのかって納得してしまう



とりあえず、あの列車テロの日のユリウスさんはルドガーの戸籍操作の事がビズリー社長に知られるのを防ぐために乗り込んで、テロに関しては偶然巻き込まれてしまったもの

そしたら社長にルドガーの事が知られてしまい已む無く剣を向けることに。社長はその状況を上手く使ってユリウスさんをテロの主犯に仕立て上げ、ルドガーをエージェントとして利用しようとした

……たしかに。あの時のあの状況。エージェントであるユリウスさんが上司である社長に剣を向けたら理由はどうであれ反逆行為だと思われる。そこに何の関係無いテロを結びつけていたなんて


ユリウスさんからテロに関する身の潔白を聞けたのは良かったけど、ビズリー社長の真の目的を聞いて驚き半分と「やっぱり自身の欲のためだったか…」と少し考えていたのが当たったってため息付きそうな気持ちになった

たしかに分史世界の消滅を望んでいるけど、そのためには精霊を自分に従わせて道具のように扱い、最終的には人間だけの世界にしようとする。とんでもない目的だ




「ルドガーにこんな事には巻き込ませたくなかった……全て俺の責任だ……」

「ユリウスさんのせいじゃありませんよ……」




ルドガーに関してはある理由から離れて暮らしていた彼をユリウスさんが引き取って戸籍の操作をしたらしい

……一族の期待に応えられない実力を嘆き、生きる希望を見出せないで自暴自棄になってた10代の頃のユリウスさんは、いつかにリドウが言ったように時歪の因子を早く破壊するために数多くの分史世界の人間を惨殺してきた

だから、引き取った当初はルドガーを利用するためだけで何の感情も無かったらしい。そんな時にルドガーが作った手料理の温かさを知ってユリウスさんは気持ちが変わり、彼のために生きる決意をする



話が脱線したりもっと複雑な話があるのか、詳しく話せない所がいくつかあったユリウスさんとビズリー社長についての話

この話を聞いてそれまで何があったか知らないけど、利用するためにルドガーを引き取っていた事に関しては身勝手だな…。やっぱりクルスニク一族は自分が助かりたいために他人を利用するんだなって正直思ってしまった

だけど今のユリウスさんはそんな昔のユリウスさんじゃない。社長に剣を向けてテロの主犯に疑われても、ルドガーを気にかけ大事にしてる一人の兄だ

それに私だって一応、ユリウスさんの事は見ていた。弟思いで全ての責任を背負っている姿を……信じたい




「それに…君の事だって……」

「?、私ですか…?」




ユリウスさんの事情を聞いて「全ては貴方のせいじゃないですよ」って言ったら、次に私の事について話してくれた

私がどうしてリドウに……クランスピア社に縛られていたのか








「――――――――と、いう事だ」

「嘘……!これが……!?」

「いきなりの事を聞かされて混乱するのも無理はないが、全て事実だ」

「この結晶が……まさか、そんな…!?」




ビズリー社長達に関して話も驚きだったけど、何より驚き…ショックだったのは私に授けられた結晶

次にまさかそんな話が出てくるなんて思わなかったから、私は声を失いそうになりながらも、ユリウスさんの話を最後まで聞いた




「君に関しての事はあのクロノスとの戦いで確信したんだ。もう少し早く気付いていれば……」

「いえ………」

「だからリル。これ以上君は授けられた力を使ってはいけない………全てが終わったらルドガーに迎えに行かせる。それまで家から離れないでくれ」

「…………」




私はユリウスさんの言葉に返事することなく黙って聞い色々思い返していた




だから……私は……あの時も、この時も……




電話の向こうからユリウスさんが心配そうに私の名前を呼ぶ声がする

私はすぐに返事しようとした







その時







「(…………あれ?)」







私はある疑問が思い浮かんだ








“ユリウスさんの言う通りにしなかったら、私はどうなるんだろう?”







その疑問が私の脳内で繰り返す内に、リドウのある言葉を思い出して心臓が跳び跳ねそうになった







“「お前のやる仕事は俺が引き継ぐ」”









…………そう言う事だったのか!!






まるで難問の引っ掛けクイズの答えがわかった時のように、全てがわかって目の前が明るくなるのを感じた







「フフフ………アハハハハハハハッ!!」





まさか、そんな事だったなんて……本当に何も知らなかった自分に悔しく思ったけど、そんな気持ちなんてすぐに消え、とても楽しくおかしな気持ちになって思わず笑ってしまった




「リル…?一体どうしたんだ?」




ユリウスさんはきっと私がショックで頭がおかしくなってしまったって思ったに違いない

たしかに、おかしくなってしまったかもね……

なんだか今なら何でも出来そうな気分だから、普通じゃ考えない事を考えているかもしれない


そして、それは……もう止められなかった




「ユリウスさん。教えてくれてありがとうございます!私………あの馬鹿に復讐してきます!」

「復讐?何を言っているんだリル!君は――――」




それだけ言うと、私は一方的にユリウスさんとの電話を切って、すぐにある人の元にかける




「もしもし」

「っ!?リル副室長ですか?貴女はたしか……!!」




相手はヴェルさん。彼女は私からの電話にすごく驚いてその理由を話してくれた




「―――と、私は聞いておりましたので、てっきりそうだと…」

「あー。違います違います。それはリドウの嘘です。奴が私を陥れるための嘘です………だから…」




何処まで奴は手を打っているんだ…ってため息が出そうになりながらも、私はヴェルさんにあるお願いをした




「ビズリー社長が今何処にいるかわかりませんか?私、社長から重要任務を任されていたんですけどリドウに横取りされてしまって……」




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