最初の苦悩
そこはまるで巨大な倉庫のようなところ
地下訓練場って言えば、私がトリップして最初にいたあの洞窟みたいな所だと思っていたけど、こんな所もある。
通常の戦闘練習もここでやっていたけど、分史世界での戦闘もここで?
そう思って階段を降りると、訓練場の中心にビズリー社長がいた
「すまないな、リル。突然練習を開始して大丈夫だったか?」
「はい。まぁ……少し驚きましたけど」
なんて、ちょっと本音が出てしまったけど、社長命令だから仕方ないって割り切ってる面もある
「早速、オリジンの結晶について教えたいが、通常の戦闘のやり方を拝見してもいいか?」
「はい、いいですけど……」
どうやら、私がたびたび練習していたのを知っていたみたい
見てもいいと言ったけど、なんか緊張するな……そう思いながらも、武器を構える
私の武器は鞭。軽いしリーチ長いから戦闘初心者でも大丈夫だろうと思ったが、意外と扱いが難しくて最初は上手く使えなかった
でも、今はいくらか扱えるようになったから練習用の機械になら楽に勝てるはず…
そう思っていると目の前のシャッターが開き、緑色の毛をした大きな鳥が1体現れた!
「えっ!?魔物ですか!?」
その問いに誰かが答える前に、鳥の魔物がこっちに向かって突進してきた!
「あ゛ーーーー!!!」
情けないながら、昔いた女王様風な某芸人みたいに鞭を持ったまま可愛げの無い悲鳴を上げてしまった
「落ち着け。頭を狙うと倒しやすい!」
「わ、わかりました」
ビズリー社長の助言通り、魔物の頭を狙って攻撃をする
けど、機械よりは早く動く魔物には狙っているのになかなか当たらない…
もう、ヤケになって鞭を振っていると
鞭先が床に当たって跳ね返ってきた!
「うわああっ!」
ヤバい……
鞭が自分の体に巻き付いてしまった!
ぐぅ……ビズリー社長とリドウが見てる前でこんな姿になるなんて……
2人はどんな顔をしているか、見る勇気は無い
けど、ククク…とリドウの笑いを堪えた声が聞こえるから、見なくてもどんな様子か想像できた
ムキーー!見てろ!絶対に当ててやる!
鞭を解いて、改めて魔物に向けて振る
何度か振ると、鞭先が魔物の頭に命中!
すると、鳥の魔物はその場から動かずに頭を上下させる
その内に落ち着いて翼を狙って攻撃すると、狙った通りの所に当たった!
「(やったー!落ち着けば大丈夫じゃん!)」
なんとなく、コツを掴んだような感じがした私は同じようなやり方で何度か打って倒す事ができた!
「(ふぅ…なんとかなったぁ)」
「なるほど、大分戦えるな……では、結晶の力の使い方を教えよう」
ようやくここで、ビズリー社長が私のオリジンの結晶を出すように言ってきた
ブレスレットは右手首にしているが、普段は助言されたとおりなるべく人に見せないようにするため、リストバンドで覆って隠していた
そのリストバンドを外して武器を持つと、新たに別の魔物が来た!
「わわっ!数が多い!」
来たのは、まるで炎のようにゆらゆらと光る四足歩行の獣型
蜃気楼タイプの魔物か?しかもそれが4体も一気に来るなんて!
無理無理無理!
1体でも大変だったのに!
焦った様子の私にビズリー社長は落ち着くように言って使い方の説明をした
付けている方の腕で武器を強く握ると、通常攻撃の威力が上がる
ブレスレットに意識を集中させて、頭に思い浮かんだ言葉を言うと、精霊術が出来る
……って言うけど、本当かな?
試しに鞭を強く握ると、なんだか鞭が光るオーラに包まれたような……
その時、魔物の1体が私に走ってきた!
まずい!攻撃当たれ!と思いながら、鞭を打つと
さっきとは違い一発で狙った所に命中し、倒す事ができた!
「すごい……!」
今度は残りの3体に向かって精霊術を……
ブレスレットに意識を集中させると、足元に詠唱の魔法陣が出現し、頭に浮かんだ言葉を言う
「フリーズランサー!」
すると、私の前に氷の槍が出現して魔物に向かって飛ぶ!
当たった魔物は倒れた……つまり残りの3体全て倒すことに成功したんだ!
「す、すご……私って……意外と強い?」
自分がやったのが信じられないくらい瞬殺で、思わず自画自賛してしまった
けど、あまり体を動かしたわけでは無いのに、何故か疲れを感じる
ぜぇぜぇと息を整えていると、ビズリー社長とリドウがきた
「結晶の使い方は攻撃だけではなく、回復や防御の力を増幅させる事ができるが1回使用するごとに体力をかなり消耗するから、ここぞという時に備えておくんだ」
「はい。わかりました…」
「急な練習ですまなかったが、よく頑張った。実戦でもこの調子で励んでくれ」
そう言うと、ビズリー社長は訓練から去り、残ったリドウは私に近づいて言ってきた
「社長はあぁ言って褒めてたけどな、俺から見れば笑い物だったぞ?」
「仕方ないじゃないですか、本当に動く魔物と初めて戦いましたし……」
「まぁ、これから俺が実戦で鍛えてやるからありがたく思えよ?」
「わーそうですかーありがとうございますー」
「…せっかく上司が部下を可愛がろうとしてんのに、棒読みか?」
「可愛がる?リドウ副室長の場合の可愛がるは、厳しくビシバシやる事でしょう?」
「わかっているじゃねぇか」
「リドウ副室長にとってそれは可愛がるんじゃなくて、ただの部下いじめだと思いまーす」
「自分自身を鞭で巻き付けたドMなリルには喜ばしい事だろ?」
「あれは事故で、自分の意志でやったわけではありません!私はドMじゃないです!」
私が言い返しても、リドウは笑って全然聞かない
あ〜〜……もう、やだ帰りたい……
と思っていると、リドウが私に何かを投げて渡した
「あ、レモンティー?」
キャッチしたそれは、私がよく飲んでる紙パックのレモンティーだった
飲んでもいいのか聞くと、さっさと飲めって言ったきた
疲れて喉が渇いてたから丁度良かった〜これは嬉しい
そう思いながら飲んでみると……なんかぬるい感じ。これいつから持ってたんだろ?
「…野菜の方がよかったか?」
「え?いえ…これ好きなのでありがたいですよ」
そう言うと、リドウはなんか嬉しそうな表情を…したように見えた
でも、なんで野菜の方がよかったか?なんて聞いたんだろ?
そう疑問に思いながら飲み干した