時代に翻弄された者・前編(リドウ視点)
やがてユリウスは運のない偶然が重なり、社長の計らいで無実の罪を着せられ、犯罪者として全国に指名手配されるようになった
いい流れになってきたな
ユリウスの野郎、俺とリルが付き合ってるのにも関わらず前と変わらず話しかけてきやがるし、隠してる結晶について聞き出してきたから引き離すのが面倒だったんだよな
これで一難去ったなと思ったら、ユリウスが大事にしてきた弟君が現れた
社長から弟の…ルドガー君を自分の手元に置いておきたいからって命令で、テロに巻き込まれた傷を治療して借金を背負わせたのはいいが…そこに隠された真の狙いはなんだ?
ユリウスを探すためなのか……よくはわからないが、まぁいいだろう
リルはルドガー君の監視を命じられて、しばらくは彼らと行動を共にするようになった
そうすればリルは俺から離れて活動をする。その会ってない期間にユリウスと接触されたら困ると少しばかり焦りを感じた俺は度々あいつらの前に現れたり、メールとか電話でたまに連絡を取って変わりはないか確認した
その後、ルドガー君が正式にクランスピア社のエージェントになりリルの監視命令が緩和され、また俺と任務をするようになったから一先ず焦る必要が無くなった
そんな時に俺はある騒動に出くわす。それは俺のファンとユリウスのファンの喧嘩
俺のファン達はどうやら嫉妬からリルに何かしたような事を小気味良いように話していると、ユリウスのファンの女共がそれを注意する
すると、俺のファン達は「犯罪者のファンには関係ない」と言い、それがきっかけで言い争いになったようだ
相変わらず言動が激しいな俺のファンは。だが、俺自身はファンが多いのは嬉しく思うが、そんなファンを一人一人見たりするほど彼女達には興味はない
だから「ただかっこいいから」とか「医者として活躍してるから」…などの上辺だけ見て好きになられても、特に気にしなかった
そんな状況に突然の言葉を発する乱入者が現れる
リルだ。奴は俺のファン達が言った「ユリウスと違って犯罪者じゃないから、リドウのファンでよかった」という言葉に引っかかったようだ。そしてリルは、ムキになった時のように一歩も引かずに真剣に怒りを表し俺のファン達に言う
俺への気持ちは上辺だけで中途半端。更には自分達のイメージを勝手に押し付けている。もし本当に心から思ってるファンなら例え犯罪者になっても信じて思い続けるはず、貴方達からはそういった気持ちが感じられない……と
俺は思わず黙って見てしまっていた
何も思ってなければ、俺は次に騒動を止めようと足を運ばせるが…動かない
俺は……何故かリルの言葉が軽く受け流せなかった
上辺だけ、名誉だけ、ただ見た目だけ見て好きになってもいい。犯罪者になろうとなかろうと、好きでいてくれても去って行っても構わない。そんな他人の勝手には俺は気にしないし別にそれでいいと思っていた
それなのに……リルの言葉を聞いたときに何か柔らかいものに包まれる感覚がした
リル……あいつは……
今までずっと黙って見てたが、俺のファンの一人がリルの胸ぐらを掴み始めたのを見て、ハッとして騒動の中に入って仲裁する
俺のファン達は俺の登場に驚きつつも、俺が言った「これ以上、俺を好きでいてくれる大事な人達同士が傷つけ合うのは見たくない。もうこんなマネはしないでくれよ?」の言葉で素直に返事をして、その場から去って行く
これで解決だな。と思った俺はリルの頭を軽く叩いて注意すると、リルはあいつらが悪いと反発してくる
たしかにあいつらもだが、お前の……さり気なく俺に対する気持ちを交えた言葉を言ったのが悪いと言おうとしたが、黙って聞いていたのがバレて色々面倒な事になりそうだと思った俺はすぐに別の言葉を言って誤魔化す
そうだ。こいつは俺の代わりに犠牲になるんだ。だからこいつに気を遣う必要はない。そしてこいつに関する気持ちを……言ってはいけない
いつもは言い慣れた口説きとか褒め言葉を息をするように言えるが……なんでこの時ばかりは思った事が言えなかったのが謎だった。だが、今はそうしている場合じゃない
ユリウスの目撃情報を入手したから、リルとイバルを呼んで行かなければならない
一先ず、落ち着いて揃ったところで分史世界に行く
そしたら、その分史世界で予想外の事が起きた。それは正史世界のユリウスではなく“その世界でリルが結晶を持ってるのを知って無理矢理奪って殺したユリウス”が居たからだ
しかもタチが悪い事に奪った欠片を“クロノスに対抗できる武器”に変えてやがった
だが、ここは分史世界だから正史と同じわけがない。武器と言ってもただの無の精霊の力が宿ったものにすぎず、小さい短剣みたいなサイズだ。おそらくそれは元の所有者であるこの世界のリルが命の危機を避けまくったせいだろう
リルは分史ユリウスの持ってる短剣が自分の持っている結晶と共鳴してるのを見て疑問に思ったようだが、まさか同じものとは気付きやしない
そこでようやく自分のいる世界が分史で奪った結晶は何の役に立たない事を知った分史ユリウスは、何を思ったのか瀕死の状態でリルに結晶について話そうとしやがった
お人好しなリルは奴の話を聞こうとしたけど、そうはさせない
聞かれる前に俺は分史ユリウスにトドメを刺して終わらせた
それからリルから結晶について聞かれるわ、イバルくんに分史世界での態度をあーだの、こーだの言われたが上司命令として黙らせる
全く、二人はまだ子供だな。上司と部下って言うより子守りをしてるみたいだ
疲れが出てきそうだったがそれはすぐに帳消しにした。理由はリルに嫌な思いをさせた詫びと言う名の名目で自宅に招いき、しばらく溜まっていた欲を出すために抱いたからな。思考は子供らしさが抜けないが身体は女なんだなって変な感心をした
生贄になるために利用されてる女だからな。その僅かな人生の中で良い思い出を作ってやったんだ。感謝するんだな
俺は何度も自分にそう言い聞かせるように頭の中で繰り返した
昼間に俺のファン達に向けて言ったあの言葉と、真剣なリルの顔を思い出しては……あり得るはずはない。と
掻き消すように……
そうして結晶については何とかはぐらかす事が出来て、少しヒヤヒヤしたと思っていたら
次はある分史世界でカナンの道標と……分史でのミラ=マクスウェルと逃亡していたユリウスを持って帰ってきた
連れてきてしまった分史・元マクスウェルは後にどうするか話は置いておき……ユリウスを社長の元に連れて行くと、ルドガー君がクルスニクの鍵だから道標と分史世界のものを連れてくることが出来たと話す
……これがユリウスがルドガー君を隠していた理由なのか?その疑問はわからずじまいだが、これでオリジンの審判への準備が一歩進んだ
俺も気を抜かないように“切り札”を大事にしないとな
ところが、その切り札…もといリルはマクスウェルのニセ者に随分お熱のようだ
互いに自分の意思と関係なくこの世界に引き込まれた者同士で仲良くしてるってわけか?傷の舐め合いじゃないか
くだらねぇなと思っていたある時、リルの料理の腕が上がったように感じた
話を聞くとどうやらマクスウェルのニセ者に料理を教わってるらしい
たしかにリルの料理は酷い腕前だが、そこまで必死に頑張るものか?
そんな事を思う俺には気付かず、リルはいつか俺に美味いって言わせたいからまだまだ頑張る事を宣言した
こいつは…いつかに俺が言った“料理が上手くないと結婚出来ない“ってのを真に受けたのか?
それでいて俺のために…俺との将来を考えて…
………本当に馬鹿でどうしようもない女だな
疑いもしながら俺について来るなんて……俺は最後までお前を利用するんだぞ?
それなのに……