時代に翻弄された者・前編(リドウ視点)
後始末を終え、久しぶりにクランスピア社に来てみるとリルを見つける
雑務エージェントのイバルから引き剥がし二人きりになったところで、リルをすごく心配していた旨を話す
もちろん。こう言ったら単純に喜ぶだろうと思ったのと、純粋に死ななくてよかったと安心したからだ
全ては俺の身代わりになるためだからな
だが、リルは気持ちが変わらず、ニセ者を殺した事に対する怒りをぶつけてきた
マスコミを上手くかわせたと思ったら噛みついてくる面倒な奴がいたか…
しばらく押し問答した後になんとか言いくるめて、2・3日の休養をやった
あの様子じゃあ、俺や社長に不信感を抱いているな…
こうなれば、いずれ真実を知ってもおかしくないし、もしかしたら結晶も使いきるかもしれない…使いきってくれれば………
……何を考えてるんだ俺は!結晶を使いきられたら俺が橋になってしまうだろう!
なのに、結晶が無くなったら……って考えてしまうんだ?
これは不安の気持ちから、ついそう考えてしまってるのか?
ったく、前々からだが、ここ最近はほとんどリルが脳内にチラチラ出てきては思考を掻き乱しやがって…
これは奴が予想外の事をして計画が無くなるのを恐れているからに違いない
大丈夫だ…これさえ乗りきればあとは…
俺の命が助かるってのに、なんでその先が想像出来ないんだよ…!くそっ……!!
俺とした事が今日は体調を崩してしまったようだ
だが、クランスピア社には気まぐれで出勤してるし、ほとんどが分史世界に行ってるから部下とかには何も不審がられない
このまま大人しく寝てれば大丈夫だろうと思ったら、俺のGHSに着信が入る
なんだよ…こんな時に…
画面も確かめずに出て見るとリルだった
あいつから掛けてくるなんて珍しいなっては思ったものの、用件を訪ねると他のエージェント達から聞いた経費についてだ
なんでお前が他のところまで関わろうとするんだよ…まぁ他人に優しいリルなら仕方ないかって半ば認めてしまったような気持ちになる
体調が優れないせいか、これ以上は長話出来ないと早々に通話を終わらせた
にしても、終わらせる際に寝ていたか?とか変な事を聞いてきたな…何なんだ本当に
単なる暇潰しなら別の相手にしろっつーの
俺はそんな事を頭の中でぼやきながら横になって寝た
数時間経った時、玄関のインターホンが鳴る
ったく、こんな時に次から次へと人が来るな…
なんとか体を起こして出てみると………買い物袋を持ったリルだった
は?何でこの時間にこいつが俺の家に?
突然の事で唖然としてると、リルが俺にお構い無しに入ってきた
俺はなんで来たのか理由を聞いた。そしたら……リルは俺が体調崩しているのに気付いて様子を見に来た。と
……マジかよ。電話越しの声で気付いただと?
リルは俺が普段と違ってあまり動けない事をいいことにグイグイ押すように俺を横にさせ、料理を作りに台所に行く
あいつの料理か……と心配したが出てきたのは普通の見た目の粥だ。味も悪くない……腕はたしかに上がったな
なんて関心しつつも口ではそれほど褒めなかった。けどリルはなんとか食事した俺を見て満足してるようだ
……こいつはこの前まで俺に対して怒りを感じていたはずだ。大事な仲間を殺した俺に
その事について聞いたが、リルは自分の昔話をして俺の質問に対して答になってないような事を言い出す
つまり、あれか……善人であれ悪人であれ病人になれば皆等しく弱まるから助けなければならない。ってのを言いたいのか
俺は鼻で笑った。まるで神話に出て来る慈愛の女神様みたいな態度だと馬鹿にして、いつかその好意が仇で返される事になるかもしれないと言った
そう。俺が今まさにお前を利用してるからな……ってのは直接言わなかったが、もしそんな状況になったら奴はどうするのか気になったからだ
だが、リルは意見を変えずにその時にならないとわからないと答え、俺の看病を続けようとした
こいつは……
その時にならないとわからないって言った顔は本当にわからない様子ではなく、まるで……全てを受け入れるって意思を持っているようだ
いいのか……リルは本当にそれでいいのか?
俺は……急にこいつを抱き締めたくなった
仲間を殺した俺を見捨てずにいてくれるリル
思えばずっと俺に心からの気持ちをぶつけて、医者とかエージェントの肩書きは無視して俺自身を見てくれた。これからも……きっとそうだ
それに今更気付くと、目の奥が熱く痛くなってきた
俺は慌ててリルにこれ以上居ると風邪を移すと言って帰らせようとした。リルは俺が大丈夫そうなのを確認して言う通りに帰宅の準備をしはじめる
それに向かって俺は無意識に呼び止めて…
悪かった。と一言言った
リルは何の事か首を傾げて帰って行った。俺自身も……なんの意味で言ったのかわからない
多分、今までの事と
これからの事を含めて。かもな