時代に翻弄された者・後編(リドウ視点)




社内に響き渡る警報。それに驚く彼らの周りを俺は雑務のイバルとその他の部下達で囲み行く手を阻む




「ここは通行止めだ、ルドガー副社長」

「定番すぎるセリフで申し訳ないけど社長命令は守らないと」




イバルの後に続いて俺が出ると、前にいたマクスウェルが俺ではなくイバルに退くように言った




「ふふ、俺を無視とは興奮しちゃうなぁ。冷徹な君はまったくもってステキだ」




俺を忘れてもらっては困る。雑務にお願いしても俺は通さないからな…

わざと奴らの意識がこっちに行くように、マクスウェルを口説くような台詞を言うと




「何このキモイ人」




俺の言葉にマクスウェルではない声が反応する

それと同時に部下のエージェント二人が精霊術と何かの武器で斬られ倒れた




「迎えに来たぞ…おせっかいだったか? 」

「ガイアス!ミュゼ!いいや、助かった」




それはガイアス王とマクスウェルの姉である精霊の女だ




「あ〜ぁ、面倒なお方が来ちゃったなぁ〜。けど、こっちもルドガー君をとめないとヤバいんだ……命がかかってね」




そう。誰のとはあえて言わないが

まぁでも奴らには知る必要もないだろう


俺は仲間が増えてしまった事に動じず、部下に最近開発に成功した新兵器で一掃しようと、準備をさせる




「こんな人数で私たちをとめられるとでも?」




術力に自信のあるマクスウェルの姉が精霊術を形成し俺達に向かって飛ばすが、俺の合図で放たれた新兵器の光線でそれを相殺する




「術が打ち消された!?」

「それは、まさか!」




どうやらマクスウェルは新兵器が何なのか気付いたようだな




「そう、クルスニクの槍だ。携帯版だが威力はみての通り……さて、マナを抜かれたマクスウェル様はどんな喘ぎ声をあげるのかな?」




ただ挑発するだけじゃかかってこないからな。あえてやらしく言う。本人は釣れなくても他の連中が挑発に乗って釣れるだろう

そう思っていたが、ここでイバルが反応しやがった




「ミラ様に無礼な!」




やれやれ…結局これかよ。俺はため息を吐きながらイバルの方を向く




「無礼も何も命令違反に気を遣う事はないだろ。お前は今クランスピアの一員として上からの任務を優先しろ」

「なんだと…!」

「なんだ?マクスウェルが現れた途端そっちに乗り換えか?」

「何の話だ」

「入社からずっとリルの周りをうろうろしてたのになぁって言ってんだ……あぁ本命がマクスウェルだったっけか?」

「な、何を言ってるんだ!たしかにミラ様に対しては今でもお慕いしてる。だが、リルさんだって……大事だと思ってる!」




はぁ…あれもこれも大事ってか

奴のことを考えると、複数の女と関係を持ちたい。とかのやましい気持ちではなく、ただの子供みたいにあれも大事だこれも大事だ。に近いな

だが、どう思うにしろ二兎を追うものは一兎も得ずになりそうだなと言おうとしたら、ルドガー君が俺に問いかけた




「そう言えば、リルの姿が見えないが……まさかリルまでビズリーの元じゃないだろうな?」

「そう怖い顔をしないでくださいルドガー副社長………リルは本日付でクランスピア社を退職しましたので」

「退職…!?」




イバルを任務に集中させるためリルにの名前を出したら、まさかルドガー君まで反応するなんてな…

でも、この状況はかえってリルの状態を奴らに伝える事が出来る


……あいつらなら俺がいなくなった後に、すぐにリルの元へ駆けつけて行くだろう




「今ごろショックで自宅に籠ってると思いますよ……まぁその住んでる所もクランスピア社の名義で借りてる所ですからもうすぐ追い出されますがね」

「なっ…!?」

「そんな彼女を何とかしたい思われましたら副社長の権限で助ける事も可能です。でも、そのためには社長が審判をどんな形であれ終わらせた後になると思いますが」




俺の言った言葉に驚くルドガー君達は何故そんな事を?と言いたそうな目で見る




「あんた…なんでそんな平気な顔で話してるんだ…!?」

「あ?」




そこでまたルドガー君達の代わりに反応するイバル。俺はいちいち突っかかってくる奴の態度にウンザリした様子で聞き返す




「心配じゃないのか!?リルさんはあんたの恋人じゃ…」

「恋人?…はははっ!あいつとは別れたんだ。もう何も関係ない」




別れたと言うと目を見開いて驚くイバル。その目は「心配してない上になんでそう簡単に別れた事を話すんだ?」って信じられない様子で言いたいようだ

…そう。お前の思ってる通りだ

イバルの考えてる事を肯定して追い討ちをかけようか




「ああ。そうだ。あいつは最初から利用するために側に置いていた……で、もう用済みになったから捨てた」




それだけ。と言い終わるとイバルはそれを聞いて呆然としていたが、すぐに俺を睨みつけ震える拳を固く握るのが見えた




「あ、あんたは…あんたはなんて事をっ!!」




俺を殴ろうと飛び付いてくる


リルに随分お熱だな。だがそれなら……

なんてイバルのリルに対する気持ちに苦笑いしつつも、俺は本心を悟られまいと気持ちを隠して奴の攻撃を防いだ




「お前こそ、上司への礼儀をわきまえろ」

「がはっ!」




あくまで変わらず“普段の俺”としてイバルに勝手な真似はするなと躾と称して、倒れた奴を何度も踏みつける

すると、そんな奴の姿を見ていられなくなったのかマクスウェルが俺に剣を向けて走ってきた

そして俺に降りかかろうとした剣を間一髪防いで弾き返し、部下達に携帯版クルスニクの槍を発射させたが軽々とかわされる




「この状況でこんな逃走野郎を助けるとは、お優しいことだ」




バク転でかわして仲間達の元へ戻ったマクスウェル。少しダメージを受けたようだが表情を変えず凛とした態度だ

俺はそんな彼女に余裕があるようだな…と更に挑発を続ける




「役を解いた覚えはない。イバルは今も私の巫女だ」

「ミラ様…」




いつもと変わらず俺の挑発には乗ることないマクスウェル。彼女の助けと言葉にイバルは驚きながら感激したような表情をした

……全く、どいつもこいつも。お優しいって言うか甘い。と言った方が正しいのかもしれないな




「マナと一緒にそのプライドもはぎとってやるよ」




まぁ今はそんな優しさなんてどうでもいい。クルスニクの槍が効くならこっちのものだ。俺はこれならペリュ―ンの時のようにマクスウェルに遅れを取らないから勝算はある

だから、奴らはこの状況でどう出るのか

しばらく様子を見てると…



マクスウェルが突然、先頭を切るように走り出す!



それに対して部下は一斉にマクスウェルにだけ攻撃を仕掛けるが……これは、まさか!




「バカが!陽動だ!!」




気付いたときにはもう遅く、全員がマクスウェルに気をとられている内にルドガー君と他の仲間達は地下行きのエレベーターに乗って行ってしまった




「やつらを逃がすな!」



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