選択で未来を紡ぐ者(ルドガー視点)
「リルが……!?」
兄さんから聞かされたリルについての話も…魂の橋と同様に驚きが隠せなかった
リルは……おそらくこことは別の世界から呼ばれた異世界者で、クルスニクの鍵と同じくらいの重要な能力を秘めた結晶を与えられた人間
その結晶はオリジンほどではないが、ある程度の願いを叶える事が出来る。しかしその代償として結晶が少しずつ小さくなり、やがて無くなる物
使わず結晶を残し、カナンの地が現れた時に―――――所有者の血と魂を吸うと、無垢なる鍵と呼ばれる剣に変わり、その次元を裂く力で魂の橋の代わりの道として扉を開く事が出来る
それを……ビズリーとリドウが自分達が犠牲になるのを防ぐために利用した。と………
「リルが結晶を持ってる事にもっと早く気付いていれば………あいつらからリルを引き離せたのに……!」
兄さんは悔しそうに自分を責める
「リドウ……リルまで利用するなんて……!」
「じゃあ、あの扉が出現したって事は……!」
「リルは……死んじゃった…?」
「そんなの嫌だよーー!!」
ジュードは分史のミラの事もあり、リドウが自分の目的の為にまた他人の命を犠牲にした事に怒りを露にし、レイアとエリーゼ、ティポはリルの死に涙を流す
「ユリウスさん。貴方のせいではありません。そうなればむしろ同じく気付かなかった私達も同罪です……」
「ったく、クランスピア社はどんな神経してんだ……?」
「そこまで犠牲を出して越える審判に意味はあるのか……」
ローエンは眼鏡のブリッジを押さえながら眉間に皺を寄せ、険しい表情しながら兄さんに言った。アルヴィンもこれまでやってきたクランスピア社の考えられない任務等についてぼやき、ガイアスはビズリー達の成す事を嘆くように目を閉じる
「クルスニク一族に与えられたオリジンの審判には、時に異界者を招いてより試練の複雑にする。か……オリジンは一体何を……」
「リルも軽率だったわね。もっと賢かったら悪い男に捕まらなかったのに」
ミラは改めてオリジンは何を考えてリルまで巻き込んだ審判を始めたのか考え出し、ミュゼはリドウのために命を散らしたリルに対して冷静で冷たい態度で言う
……ミュゼについてだが、数日前までとある事情でミュゼの本心が聞こえていた俺には表面状では冷たく言っても、内心では「ひどい!ひどい!素直で良い子なリルを利用したなんて!!」って幼い子のように泣いているかもしれないと思った
「ああなってしまった以上、ビズリーの勝利は確定される……ルドガー!急いで俺の命で橋を……!!」
恐れていた事が起きてしまい少し焦りが出てきた兄さんは、再度俺に兄さんの命を使うよう頼んできた
リルも死んで……エルも危険な状態だ……
これ以上、大事な仲間を見殺したくない………!
俺はその決意を変えずに
剣を構えて兄さんに向いた
その時
俺達の目の前に白く輝く巨大な物が現れた!
「何だ……!?」
柱か壁か……そう思っているとやがて輝きが弱まり、現れた物を確認する事ができた
それは……
「これは……向こうの大陸にあった扉だ!」
ジュードがそう言ったように、そこに現れたのは………ビズリー達が使っただろう“無の扉”。それが何故か遠くから見ていた大陸からこっちに突如出現した!
「なんで、これが急にこっちに現れたんだ……!?」
「もしかして、リル?」
「リルが……俺達にユリウスを犠牲にせず、ビズリーを止めてほしいと言ってるかもな」
アルヴィンが驚いて何故こっち現れたか考えると、エリーゼとガイアスがリルのお陰じゃないかって推測した
たしかに……この扉はリルが持っていた結晶の力。リルは結晶に取り込まれ無垢なる鍵になってしまったが、まだ意識があるなら……!
「リル……」
兄さんは持っていた剣を納めると、俺に言った
「こうなれば……橋としてじゃなく、ルドガーがビズリーの野望を砕き、無事に審判を越えられるよう命を使おう……」
「……兄さん?」
「ルドガー。この命が尽きるまで……カナンの地にあるオリジンの玉座までお前を支えさせてくれ」
「!」
それはつまり……カナンの地まで一緒に行く事であり、俺が兄さんを殺さなくてもよくなったって事だ
「よかった!よかったね、ルドガー!」
俺が兄さんを殺さずに済んだのをレイアをはじめ仲間全員が喜ぶ
「だが、忘れるな……俺の時歪の因子化は止まったわけではない。早々に来る死は免れない事を」
「……わかっている」
ああ。わかっているさ。これはリルが一時的にくれた奇跡で………避けられない選択が無くなったわけじゃない
カナンの地へ行き、オリジンの審判にて―――――
俺は今度こそ本当に決断をしなければならないからな
「(リル……ありがとう)」
俺は聳え立つ扉の上空を見上げ、リルに感謝の言葉を言う
そして
仲間達と兄さんと……開いた扉から溢れ出る青白い光に包まれるように
カナンの地へ向かった