返り咲き



次の瞬間、私は空中に飛び出していた


その空中からすぐに身体が落下してるのがわかると、身を構えてそのまま着地する


着地に成功して、なんとか安全に動けるのを確認した私は、そこで初めて周りを見た




ここは………






沢山の歯車が檻の様に組まれ、透けた床の真下に浮かぶのは外からも見えてた胎児の形をした大きな物体

……カナンの地に着いたんだと認識した

そして、ゆっくり後ろを振り向くと、99万9997の数字を示す何かの機械と………




「っ!?」

「リル……?」

「リル、なの……?」

「……リル!」




ルドガー、ミラ、ジュード、ユリウスさんは突然現れた私が本物なのか?と、目の前の光景を少し疑ったみたいだけど、すぐに「戻って来れたか!」「よかった……」と言うように安堵した様子になった

その近くには術式に囚われて身動きが取れなくなってるクロノスと……




「何……!?」




ルドガー達と対立していたであろうフル骸殼に身を包んだビズリー社長は、私の登場に信じられないと驚愕した声を出す




「リル……戻って来てくれるって……信じてたよ……」




闘いの端で時歪の因子化が進む苦しさを堪えながら、私の帰還に「信じていた」と涙を一つ流して喜ぶエル




そして





「リル……」





リドウも……目を見開いて私を見てる




「ふふ。いきなりの登場で驚いた?」




私はその場にいる人達全員に言ったけど、その中でも唯一ずっと表情が固まったまま見てるリドウに対して「そこまで驚くの?」って言うように、ニヤリと笑ってみせた

リドウは呆気に取られてばかりで私の言葉には直接何か言うとか何らかの反応してこなかったけど、あの様子を見れただけで満足




「力が弱まったと感じたが……こんな事になるとはな」




骸殼を一時的に解いて私にそう言ったビズリー社長

彼の口振りと手に持ってた小さな透明な物――――無垢なる鍵になる前の結晶を見て、私が生き返ったことで結晶は元の形に戻ったのかと把握した

ビズリー社長はその元の姿に戻ってしまった結晶を「何の役にも立たない」と怒りの気持ちを込めて地に投げ捨てる

結晶は砕けずその投げた勢いのまま、地を滑り私の足元に来る。それを拾い上げると彼は続けて言った




「リル、お前のその行為はただの任務失敗ではない。大規模な損害を出すものだぞ!」

「あ〜そうなんですか〜すみませーん。けど、その大規模な損害って言うのは社長以外にも感じる人がいるんですかね〜?」




あくまで重大な任務の失敗として怒る社長に私は口では謝罪をするけど、気持ちは全く込めず更に挑発するように彼の言った言葉を返す



「今まで犠牲になった一族、そして……今まさに時歪の因子と化する者達の命を無駄にしてる事と等しい!」




なんと一族思いな言葉だこと。前からそうして一族の悲願だとか一族の為だとか言ってたね。けど………




「はぁ〜。一族の為に無関係な人を犠牲にするのは心痛まないんですか。そうですか〜……あれ?でも、そういう風に一族を大事にしてるような事言ってますけど、ここにいるクルスニク一族が苦しんでいるのって………貴方が無理に連れ出したからじゃないんですか?」




そう、社長は長年達成されなかった目標の為に、自分自身が一番重要な所に行くまで他は部下達に任せてる

つまり、一族の為とか言いつつ、一族を踏み台にしてる…………前に教えてくれた一族の歴史を繰り返すような事をしてるだけで、全然救いの要素が見当たらない

その矛盾に私が気付いたのは、リドウの代わりに一度死んだあの時だったけど、なんとか間に合ったかな?だから……




「自分のやった事を他人のせいにするような人だったんですね、貴方は。だったら私は今すぐ解雇とかの処分を言い渡されても構いませんよ!」




私はキッパリそう言って、もうクランスピア社の………ビズリーの側から離れ、完全にルドガー達の味方になる宣言をしながら武器を構える

前までは、元の世界に帰るためにエージェントとして従っていたからどっち付かずな曖昧な立場だったけど、今こそハッキリわかった

ビズリーの近くにいても、元の世界に帰れるどころか……“選択”すら与えられないって事が!

その証拠に、私は奴の野望で一時的に殺された。なら、奴のやる事を何としてでも止めて私をこの世界に呼んだ“張本人”に直接会った方がいい

どのみち、無垢なる鍵は結晶に戻ってしまったし私がもう一度死ねば鍵になるって保証はない。だから、これはもう完全にビズリーの側に付く意味がないって事だ

矛盾点に気付いた今は、頼まれてもそっちの側には絶対行かないって心に決めてるけどね




「そうか。その言葉を撤回しないのならば…………リドウ!リルの始末はお前に任せる」

「!……はっ。承知しました」




私が真実を確信してもう命令を聞かないって判断したビズリーは後ろで待機していたあの人に……

リドウに私の始末を命じた

ビズリーはそう言い終わると骸殼に変身し、ルドガー達との戦いを再開させる

命じられたリドウはさっきまでの唖然とした様子から切り替えるようにふぅと息を一つすると、私に突きつけるように武器を構えた


あの目は……戦闘の時には必ず見る目。獲物を逃がしはしないって目だ


彼は本気だ。そりゃあ私が復活した事に心を打たれて自分もルドガー側につく………ってなってくれれば良かったけど、彼の性格や立場から考えると簡単に出来るものじゃないなって理解はしていた


………だけど、だからって私は前言撤回しないし退かない!


この避けられない戦いに




「前までのあたしだと思ってたら、痛い目みますよ?」

「大口叩くのは今の内だぞ」




元彼と再会してようやく出来た会話の内容がこんなのだなんて、なんかロマンや色気がないなって一人でクスリと笑う

リドウは私が言った強くなってますよ発言に「そんなわけはないだろ?」と本気にしてない様子で鼻で笑った


ま、こんな時に色気を求めても意味ないか……


気を取り直した私は




自分の意地を叩き込むために走った


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