1人任務
「リル、深度の低い分史世界ならお前1人でも大丈夫だろう」
分史対策室に行くと、そんな唐突なリドウの言葉に始めは何も言えなかった
「え?」
な……なんですと……!?
「聞こえなかったのか?深度の低い分史世界はお前1人で行ってこい」
「…………えぇ!?私1人で!?」
思わず大声でそう言うと分史対策室にいたエージェント達は、驚いたのかほとんどが振り向いたりして私を見た
その視線に「あ、お騒がせしてすみません」って軽く頭を下げて、またリドウを向いて話した
「えー、いきなりっすか?」
「いきなりじゃねぇだろ。お前ここに来ていくつの分史世界を破壊した?」
「ん〜……すみません数えていないです」
「……とりあえず、数多く破壊しただろ?実力ついた奴は低い深度の分史世界を破壊しねぇと、減るどころか増える一方だぞ」
「たしかにそうですね…」
分史世界って時歪の因子を壊さないと正史世界に帰ってこれない。それを聞いて、強敵相手じゃなくても確実に帰ってこられるようにってリドウと一緒に行っていた
はい、正直に簡単に申しますと、いまだに分史世界に行くのが怖いのです。帰ってこれなくなるんじゃ…って不安になります
ただでさえ、現実世界からトリップして来た上に異世界のそっくり世界だなんて……
まるで例えるなら、マトリョーシカやっている感じ?違うな。例えが下手だな私
「俺やユリウスから見れば、レベルの低い奴はお前1人で十分だと話し合いで決まったんだ」
あぅ…ユリウス室長との話し合いで決まった事なら仕方ないか……
いい加減に腹くくって行こうかと思っていると、リドウが続けて言った
「それに、俺もいい加減ガキの面倒は疲れてきてんだ」
「ガキの面倒……!?」
ムッカーー!!それってあたしの事!?
リドウの疲れてうんざりしたような目はあたしを向いているから、そうに違いない!
「あーはいはい。そうですかー!あたしもすぐ人を馬鹿にして、キレて八つ当たりするような上司なんかと一緒は嫌だと思っていたんですよねー!丁度良かったでーす!!」
もう、半キレ気味でベラベラ喋って勢いよく分史対策室から出て行った
分史対策室では、リドウ以外の人はあたしについて心配する声しかないだろうし、リドウは呆れていると思うけど……もう知らない!
見てろ!5分で帰ってきてやる!
驚愕の数値記録を出して驚かせてやる!!
そう意気揚々として、あたしは分史世界へ行った
―――――――――
「ここは……?」
侵入したところは、薄暗い路地裏。
そこには古い服を来て、ただ俯いて座っている人がちらほら…
たしか、ここはドヴォールっていうちょっと治安の悪い街で、前にリドウと来たことある
あの時はこの路地裏の酒場にリドウが用があるって言って来て、情報屋の人から何か買っていたな…
で、その後リドウのファンが彼にサイン求めて来たんだけど、側にいた私に“なんで、あんたみたいなのがいるの?”って目をして……
「(って、余計な事思い出しちゃった!いけない、いけない!またイライラしてしまう)」
気を取り直して、時歪の因子を探す
一通り、街中を見たけど何も無い
人に街の事を聞いても正史世界と違った情報は聞けず、困り果てた私はエラール街道に行き、とりあえずトリグラフも探しに行こうとした
「(魔物も変わってないし、今回の時歪の因子って何だろう?)」
なんて思っていたら、曲がり角で誰かとぶつかってしまった
「痛っ」
ぶつかった相手を見ると……地面に転んだ子供がいた
いけない!この子、私にぶつかって転んだんだ!
「ごめん!」
謝って怪我をしていないか確認するために近づくと…
その子は黒い髪でオレンジ色の瞳をした男の子だった
なんだか…
リドウに似ている
「だ……大丈夫?」
「……大丈夫」
男の子はそう言って立ち上がると、さっさと行ってしまった
あ、けどその行った先は…
「(エラール街道?トリグラフに向かうのかな?でも魔物がいるから心配だ……)」
私はそう思って急いでエラール街道に行った