選んだ道
オリジンは周りから光を出現させるとそれが辺り一面に広がり、消える際にはまるで光の海のように優しく空間を満たしていった
効果はまだ現れてないけど、多分ルドガー達の願いが叶った後だろう
「最後にルドガーとエル。君達の願いは……分史世界の消去かい?」
オリジンは最後にルドガー達に問いかける
ルドガーはエルと顔を見合わせ、次に私の方を見た
私は笑顔で頷く。これで分史世界を全て消しても皆は死なない……いや、死なせないって
「ああ。分史世界の消去を―――!」
ルドガー達の願いを聞いたオリジンは先ほどと同様に光を出すが、時歪の因子化を止める時と違って光は龍のように上空へ飛び、空間の天井に当たると、光の雨のように降り注いだ
「君達のおかげで、再び使命を果たす事が出来た。感謝するよルドガー・ウィル・クルスニク、そしてリル」
ミラが私とルドガーに感謝の言葉を言う
「リル、大丈夫だからね!たとえ傷が深く出ててきても、病院に運ぶまで私とエリーゼが回復術を唱え続けるから……だから……!」
「絶対に見殺しになんてさせません……!」
「リルも怖いだろうけど、僕たちも不安なんだからねー!」
涙を堪えた声で私を励ますレイア、エリーゼ、ティポ
「君はすごいよ。リル」
「ああ。男の俺達も尊敬するくらいだ」
「最善の選択の為にお前が払った代償や生きる意志は、しかと見せてもらった」
「リルさん。貴女はご自分で思っているより、ずっと強く立派ですよ」
「見ているこっちがハラハラしちゃうくらいに。ね」
ジュードやアルヴィン、ローエンは今までの私のやってきた事を絶賛すると、ミュゼは危なっかしい所が難点だけどねってからかうように言ってきたけど、表情は皆の言葉に賛同してるみたいに微笑んでいた
「リル、俺からも……本当に感謝している。兄さんやエル、そして俺までもが救われた」
「全くだ……感謝しきれないくらいだ」
「リル、リル……」
ルドガーとユリウスさんがお礼を言い終わると、エルが私の名前を呼びながら近付いて来る
目線を合わせるようにしゃがむと、エルはゆっくりゆっくり手を伸ばし、私に抱き付いた
「ありがとう……ありがとう。リル」
涙を目に溜めながらエルは誰よりも私にお礼を言う
………まだ全て解決したわけじゃないけど、エルの顔の右側に現れた時歪の因子化が僅かに薄くなっているのが見え、それだけで安心してしまう
だから………
「そんな、今生の別れみたいにしんみりしないでよ。私が死ぬなんて決定した事じゃないんだから」
皆にも安心してもらいたくて、私は冗談を交えて笑ってみせた
とりあえずは世界的な問題も解決して、今ここに存在してるクルスニク一族の命は保証されたんだからね
だから………私がもし死んでも、これ以上は悲しい事は起こらない
つい、悲観的な事を考えてしまったけど諦めたわけではない。勿論、生きたいって願ってるから
私は言葉にはしなかったけど、そういう気持ちを含めて一人一人に笑顔を向ける
すると、その仲間の中である人達に動きがあった
ミラとミュゼだ
ミラは一歩二歩と皆から静かに離れ、ミュゼは俯いたままだ
どうしたんだろう?とその様子を見ていると、どこか寂しさを堪えながら毅然と振る舞っているように見えて……
まさか……精霊界に帰る時が……!?
その予想は的中する。エリーゼはミラ達の様子に気付いてジュードに知らせようとしたら、それをレイアが止めた
…多分、ミラ達が黙って行く意志や理由を察したんだろう
ジュードは振り向かずミラが去っていくのを背中で感じ、ガイアスもミュゼが微かに触れた温もりを……目を閉じながら受け止める
それぞれ最後の挨拶が済むと、彼女達は宙に浮いて飛び立とうとした
……こんなお別れの仕方でいいの?と私は言い表せない寂しい気持ちで見ていると、ミラ達と目が合う
私の目を通して訴えるように「心配するな」と頷くミラと、寂しさを堪え微笑みながら軽く手を振るミュゼ
その様子を見て、あの二人はまたいつか会えるのを信じているから別れは告げないのかな。って思った
こういうのも……仲間として信頼してる証なんだろうな
それに気付いた時だった。ミラ達だけでなくオリジンとクロノスにも動きがあった。願いを叶え終えた彼らもまた……在るべき場所に戻ろうとしている
その証拠にゆっくりと審判の門が閉じていく
「さようなら、人と精霊たち……また会う日が、今日より少しだけいい日でありますように」
オリジンは最後に私達にそう言い、それに合わせてミラとミュゼは空を舞うように精霊界へと戻って行った
私は彼女達が見えなくなるまで見守っていると、審判の門がガシャンッと重い音を立て閉じる
すると門の隙間から光が溢れ、たちまち眩しさで何も見えなくなった
………これで分史世界は全て無くなり、エル、ルドガー、ユリウスさん、そしてリドウは助かる
不思議と私はそう安心した気持ちになり、自分がまた危うくなる恐怖はだんだん感じなくなった。何度も危ない事してきたから感覚がおかしくなったのかな?
なんて一人で笑っていると
腹部が一気に熱くなるのを感じた瞬間、意識が遠退いた