黄昏時に似ている
光が止むと、エルは自分の手を見て時歪の因子化が消えてるのを確認する
「……ルドガー!」
もう大丈夫だよ。と言うように俺の名前を呼びながら振り返った
その顔も手と同様に黒く痣のように広がるものは無くなっている
「………リルっ!」
微笑みかけたエルだったが俺の横にいたリルを見て青ざめ、慌てて彼女に駆け寄った
「リルっ!」
リルは腹部から血が滲み出し、口からも微量に吐き出すと意識が遠退いて地に崩れた
「そんな……すぐに傷口が開いてしまうなんて」
「みんなー!早くリルを病院に運ぶんだー!」
すかさずリルを支えるリドウと、その近くにいたエリーゼが回復術を唱え、ティポは皆にそう叫んだ
出血はいくらか抑えられたようだが、これはあくまで一時凌ぎの生命維持だ。早く………ここから出て病院に行かなければ……!
すると
俺達の近くに時空間が捩れ、大きく穴の開いた魔法陣が現れた
あれはたしかクロノスが転移をする時に使うものだ……まさか
「(まさか……クロノスが?)」
すでに閉ざされた審判の門を見たが、何の様子も窺えない
「あの先見て!」
「あれは……どっかの事務室か?」
レイアとアルヴィンが言ったとおり魔法陣の先をよく見ると、パソコンやら書類やらが沢山置かれた机が並ぶ一室が見えた
あれは見たことがある。たしか……
「クランスピア社の医療事務室……」
リドウがそう呟いて確信した。あれはまさしくクランスピア社内にある医療部門の事務室
これは……偶然そこに通じたのか?
「罠なのか……?」
兄さんが怪しむように先に見える医療事務室が本物かじっと見ていると
「悩んでる暇はねぇだろ!!行くぞ!!」
リルを抱えたリドウが先陣切って魔法陣の中に突っ走っていく
……たしかに考えてる暇はない。とにかくここから移動しなければ!
俺もリドウの後に続くと、兄さんや他の仲間も次々と続いた
「ありがとう、クロノス」
「何のことだ?我はただ、これ以上人間が精霊の領域に居ては困ると思い、早々に立ち去ってもらったまでだ」
「ふふふ。そういう事にしておくよ……さて、僕も“本当の最後の選択”を見守らなきゃね」