黄昏時に似ている






クロノスが造った魔法陣から入って、無我夢中で走って出た先は


入る前に確認した光景である……クランスピア社内の医療事務室だった

本当にカナンの地から一気にクランスピア社に行けるなんてな……って思っていると




「リドウ室長!一体何処から……」




突然何も無い所から現れた俺達に驚く医療の部下達がわらわらと寄って、何事かと聞いてくるが……

説明してる暇はない




「急患だ……」

「は?」

「急患だって言ってんだろ!この患者は腹部に出血!早く輸血とオペの準備しろ!!」




困惑する部下達に急患だという事と症状だけを言い、急いでオペの準備をさせる




「……悪いがここから先は一般人は立ち入り禁止だ」




ルドガー君達に向かって控え室で待つように言うと、奴らは「わかった」とか「後は任せたぞ」とか言って医療部門室から出て行く

言われなくてもわかっている……!一刻を争う時とはいえ、どんな手術でも慎重にやらねばならない。だが俺は焦りからイラつきが増していく



そして俺は部下からオペの準備が出来た事を聞き、急いで手術着を着て向かった

































――――――――――――――





長時間に渡る手術だったが、なんとか止血をしながら傷ついた血管同士を繋ぎ、開いた傷口を縫合する事に成功した

あれから輸血の拒否反応も出血も無い。後はこのまま安静にして傷口が自身の回復力で塞がれたら、もう問題はないはず



だが





「リル……目を覚まさないね」




なかなか目を覚ます気配を見せないリルは、病室のベッドの中でずっと眠っている

終わるまで待っていたルドガー君達は、今もまだ帰らずリルの周りで様子を見守っていた

その中で新聞記者の少女がぽつりと呟くと、エルが俺の近くに来る




「ねぇ………リルは大丈夫なんだよね?絶対目を覚ますよね……?」




こいつは……カナンの地に行く時もそうだったが、俺がちゃんと答えるはずがないとわかっておきながら、心配でいちいち聞いてくる




「………体質で麻酔の効果がまだ続いて長時間眠る患者もいる。だから大人しく待て」




前回はリルがどうなるか俺にも不明だった為奴の質問をはぐらかして答えたが、今回は医療での事だから考えられる原因を話し納得させた

どうせこいつは自身だけのせいでリルがこんな事になってしまったと思っているはずだ

ったく、ガキが。一人前に一人で責任を抱えるなっつーの。これはあくまで………リルが望んだ選択なんだから奴に敬意を払うものだろ




「この様子じゃあ、もしかしたらしばらく目を覚まさないかもしれねぇな」




俺はいまだに静まりかえる病室の中でそう伝えると、ガイアス王と側近のローエンは一旦国に帰り、ルドガー君とユリウスはクランスピア社の今後についてヴェルと話してくると言い、病室から出て行った




「私はもう少し残るよ。リルが何の素振りも見せずにいきなり目を覚ますかもしれないし」

「私も残りますね」

「俺も。か弱い子達を残して行くのも心配だしな」




微かに希望を持ってまだ様子を見てると残ったのは少女達とスヴェント家の子息だった

その時スヴェント家の子息が言った言葉に、少女の傍らにいたぬいぐるみが「心配しすぎだなー」と言うと皆は軽く笑い少しばかり空気が和む




「……まぁいいだろう。あまりうるさくするなよ?」




俺はそう言い残し、ルドガー君達と合流する事にした


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