暖かな風と共に
外に出る……と言っても、クランスピア社内にあるバルコニーに行くだけ
でも、高い階層から眺める街並みや風が気持ち良くて過ごしやすい
そこで私とリドウは自販機で買ったコーヒーを飲みながらゆったりとベンチに座る
「……何も変わらねぇな」
「え?何がですか?」
「こうして世間を見るとよ……本当に前までこの世の中が危機になってたか?って思うんだ。審判もあくまで一族の一部にしか知られてないのもあるが」
たしかに……こういっちゃあれだけど、他のテイルズや冒険系の物語では世界の全体にわかりやすい危機が迫ったり、全てはわからなくても不穏な雰囲気を感じて世界中の人達が一致団結する
だけど、この世界に迫った危機は………知らない人が多いかも
マクスバードに現れたカナンの地を見た人でさえも、クランスピア社のイベントの広告だと思って特には気にしてなかったらしい
「たしかに世の中を見ると、私達がした事は本当に必要だったか?なんて変に考えてしまうけど…」
そんな中で、確実に変わったものは私には見える。それは……
「時歪の因子化が無くなってクルスニク一族が平穏に生きてる。これは私が見て一番変化あった事だと思う」
あの時、苦しみながら死を受け入れるしかなかった運命を変える事が出来た
私が戻らない選択をしてなかったら……分史世界消去のために多くの命を見殺しにしていたかもしれない
別に私は完全な善人ではない。ただ大好きな仲間やお世話になった人を放っておけなかった。それだけだったけど……この選択をして本当に良かったと、日々実感している
「そうか」
リドウは私の言葉を聞いて「相変わらず良い子ちゃんだな」とか言うんだろうって思っていたのに、そのまま頷いた
そんな彼の姿を珍しく思ったけど、そういえば前よりは私の言葉に同意してくれる事が多い気がする
最初の頃はいちいちの事に否定的だったり、いちゃもん付けたりで言い合いになったな………まぁ今もたまにおふざけ混じりで軽く喧嘩みたいな茶番したりしてるけど
それほど、私もこの社の一員として実力を認められてるのかな?
肩を並べる。とまではいかないけど、一緒に働いてる中でそう思われてるのは素直に嬉しい事だ
「――――っくしゅ!」
そこにヒュウ……と風が吹いて、くしゃみが出てしまった
朝と昼はあんなに日差しが良くて暖かった空が、だんだんオレンジ色に染まって涼しい風を運んできた
「夕方は冷えますね」
当たり前ながら夏でも夜は涼しく感じる時もあるように、こうして日の光が入らないと早くに寒くなる
コーヒーも無くなったし、休憩終わって作業に戻りますか
そう言おうとした時に
「ん?」
リドウが私の右手に自分の左手を重ねてきた
え?どうしたんだろう?って何も言わずに彼を見ていると「たしかに寒いな」って空を見てばかりで、私の方は向かない
これは……さり気なく暖を取ろうとしてんのかな?って言っても全然さり気なくないけどね
訳がわからず、私はリドウと重ねてる手を交互に見るしかない
たしかに、重ねてる手のおかげで私は包まれた暖かさを感じる。でも彼はこれでいいのか?
一向にこっちを向かないリドウの瞳を何気なく横から見ると、まるで空の色を取り込んで染まってるみたいでいつもより綺麗に思った
まぁ彼の瞳の色はもともと綺麗なオレンジ色だけどね。宝石のシトリンみたいで………
ん?宝石…………包む………?
「…………そうだ!」
私はこのキーワードで思い付いた!
さっきの色素を包むものとして……美容成分の代わりに宝石はどうだろう?
いや、高価な宝石は使わず安価で手に入りやすいものがいいな………今日採取してきた材料の中に数種類の鉱石があったはず
それで肌に良いか悪いか徹底的に調べて試しに作ってみよう!
「リドウ先生ありがとう!おかげで思い付いた!だから早速……」
立ち上がった私はすぐに続けて「開発室に戻りますよ!」と、言いかけたら……
「ちょっと待て――――!」
急にリドウから呼び止められ
背後から抱き締められた