1人任務




「どうしたんですか?」




名前を聞いて黙ってしまった私に男の子……幼いリドウは首をかしげて聞いてきた




「あ、ううん。ただかっこいい名前だなぁって」




そう言った時、複雑な気持ちになる

かっこいい名前って言ったのはこの子に対してだけど、正史世界のリドウにも言っているみたいで…

いや、実際この子はあのリドウの過去の姿。同一人物だから…


あぁ、もう!またわからなくなってきた!




「ねぇ、リルさん」




頭の中でごちゃごちゃしていると、幼いリドウは私に話し掛けてきた




「さっき、何をしたの?」

「え?」

「魔物の倒し方……火でも持ってたの?」




そっか。ここは過去のエレンピオスだから、精霊術が無いんだった!




「あぁ、あれね……偶然ライター持っててさ、それを何とかして倒したんだ」

「ふ〜ん」




咄嗟に嘘を言って誤魔化した。危なかった……見られていたら、恐がられてたし逃げてしまっていたかもね

バレずによかったと内心ホッとしたら


幼いリドウはいきなり咳き込んだ!




「ゲホッ!ゴホッ!」

「だ、大丈夫!?水飲む?」




私は水筒を取り出して幼いリドウに渡すと

彼は持っていた紙袋から小さいカプセルを取り出して、水筒の水と一緒に飲んだ




「……ありがとうございます。また助けられちゃった」

「いいけど…今、何を飲んだの?薬?」




私が聞くと、幼いリドウはゆっくり話してくれた


彼は、生まれた時から心臓に病を患っていてかなり危険な状態で、6歳の時に手術を受けて一命を取りとめたされたそうだけど…




「僕の心臓はね、もうダメだからって取って代わりに黒匣を使っているんだって」

「嘘……!」




衝撃的な事を聞いてしまった

まさか、人体にも黒匣を……

あ、でもアルヴィンの従兄弟のバランもたしか義足で黒匣を使っていたような……


更に幼いリドウは話を続けた




「たまにこうしてドヴォールから薬を買わないと、さっきみたいに発作が止まらないんだ」

「薬?もしかして、酒場で待ち合わせしている情報屋から?」

「うん」




これでようやくわかった。

いくら違うところがある分史世界とはいえ、だいたいは同じ

つまり、この幼いリドウが正史世界のリドウと同じなら


あの人がドヴォールで買ったのは、病気の発作を抑える薬


そんな事……誰も噂しないし、本人からも聞いた事無い

まさか、そんな大きな秘密を抱えていたなんて


なんだかすごく意外だったし衝撃的




「でね、僕の将来の夢は医者になる事なんだ!」

「えっ…」

「僕を助けてくれた先生のようになって、難病を治したいんだ」

「……」




今、あの人が医者になってるのは、この時から頑張っていた成果だろうと一人で納得してると、幼いリドウは私の顔を覗き込みながら聞いてきた




「変かな…?」

「……ううん、素敵な夢よ。君ならその夢叶えられるよ」

「そう思う?」




私の言葉で嬉しそうに笑う彼を見て、また正史世界の彼を思い出した



……あの人が医療エージェントになった理由はさっきの言葉通りなの?

助けてくれた医者のようになりたいってすごく立派だけど、あの金額と借金の作らせ方は許せない

なんであんな風になったんだろう?

少なくとも、この時点の彼はそんな感じしない

て、言うか金絡みの性格以外の嫌なところも、今ここにいる幼い彼からは感じられない




「(まさか…この子が時歪の因子?)」




ドキっとして、彼をよく見たけど黒い光に憑依されてない

そうだよね。もしもこの子が時歪の因子なら私に近づいただけで黒い光が溢れ出すもの


この子には悪いけど、早く時歪の因子を破壊しないと…

そう思いながら、トリグラフへ歩く足を休めなかった




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