重なる有耶無耶
「ふぅ……ここは落ち着くな」
書類を直してOKもらった後、昼ご飯を買いに駅にお弁当を買いに行き、そのまま住宅地の公園のベンチで食べる事に。
最近はいつもこの公園でお昼にしている
…なんだか、あの場にいれば気が重いような気がして
「(気分転換にって来てるけど、あまり変わらないかもな…)」
外で日光浴びれば、気持ちが切り替わるって考えは単純過ぎたか
そう思いながら、ブランコで遊ぶ子供達の声や、他のベンチに座って話をするおじさんやおばさんの声を遠くから聞いていると
別の声が私の近くから聞こえた
「隣…いいかな?」
そこにいたのは、ユリウス室長だった
「ユリウス室長っ!あ、は、はいっどうぞ…」
私は予想もしていなかった人に話し掛けられて、驚きながら座っている所をちょっとずれて、ユリウス室長が座れるようにした
「ありがとう」
ユリウス室長はそう私に礼を言って微笑みながら座って、お弁当が入っているであろう包みを出した
「珍しいですね…ユリウス室長も公園でお昼を?」
「いや、実は昼飯を家に忘れてな、さっき取りに戻ったんだ」
「へぇ、ユリウス室長のお宅ってここの近くですか?」
苦笑いしながら話す室長に、私は周りの家を見ながら聞いた
「あぁ、そこのマンションだよ」
そう言って指差した方向には、公園のすぐ隣のマンション
「あっ、すごく近いですね!」
驚いてしまった。まさかここが室長の家だなんて
「で、戻ろうとした時に、君を見つけて声をかけてここにいるんだ」
「なるほど〜」
「最近、昼になると会社内から見かけなくなるな…と思っていたら、ここにいたのか」
「はい、ちょっと気分転換になるかなぁって思いまして…」
実際にはあまりなれなかったけど、笑ってそう話した
すると室長は「気分転換か…」と言ってきた
あれ?もしかして、なっていない事わかってしまったかな?
なんて思っていたら、室長が私に聞いてきた
「唐突な質問ですまないが……リドウと何かあったのか?」
「えっ!?リ、リリッ、リ、リドウ副室長と…ですか!?」
まさかここでリドウの名前が出るなんて思っていなかったから、半テンパりながら聞き返した
「あぁ、そうだが…その様子だと何かあったみたいだな」
「いやっ…あの…」
「どうした?あいつに暴力を振るわれて怪我でもしたのか?それとも…」
「……」
ユリウス室長の問いに違います…としか言えない
思っていた事を言おうか言わないか悩んでいると
「あ、すまない…言いたくないなら、無理に聞かないが…」
と、申し訳なさそうな顔をした。私は自分で勝手に考えて悩んでいるのに、ユリウス室長は聞いてきたせいで私がもっと落ち込んだように見えたみたい
それだと悪いから、私は正直に今考えてることをいう事にした
「いえっ、あの実は……」
思い切って、思っていた事を……ユリウス室長に吐き出した
「そうだったのか…君が1人で行ってきた分史世界で…」
全て話し終わると、ユリウス室長は私の1つ1つの言葉を繰り返し言って、何かを考えていた
「……私がおかしいんですかね?こんな事で悩むなんて」
話してから気付いたが、ユリウス室長も10年以上の経験者。リドウよりもベテランなのに、なんで話してしまったんだろう…思わずなんだか恥ずかしくなったが、ユリウス室長はこう答えた
「いや、君の思考も間違っていないよ。俺やリドウ、そしてあの人は……」
昼食を食べながら、目を細めて遠くを見つめた室長
まるで、あまり思い出したくない過去を振り返っているみたい
「君がそうして悩むのは、当然だ」
「…新人の分史対策エージェントだから?」
「いや、新人でもベテランでも、世界を壊すのは心を痛める。俺も最初は…いや、今でもたまに思う。こんな残酷なシステムがあるのかって」
「ユリウス室長もですか?」
「意外か?」
そう笑って聞く室長にすごく申し訳ないけど、頷いてしまった。てっきり彼くらいになるとベテランの慣れと余裕がありそうだったから
「俺はそんなに強くないし、強くなれない。どんなに分史世界を破壊してもな」
「ユリウス室長…」
「ただ、リドウはどうだろうな…あいつにはあいつなりの信念があると思うが…」
「リドウ副室長なりに考えはあったと思いますけど、私はあまりに冷たくて悲しかったです…」
「君があいつの代わりに悲しむのは、優しいな」
そう言ったユリウス室長は「けど…」と言って続けた
「たしかに分史とは言え、そこにはこの正史と同じく命がある。それを壊すのは責任や背徳感が重くのしかかる…出来れば壊したくないって思うが、自分の最優先は何かを考えて選択をしなければならない」
「最優先を考え…選択…」
それって、分史世界の事以外にも言える
何が大切かを判断して決断する…
やっぱり何だかんだ言いながら、ユリウス室長は立派な心構えで強いな
「ちなみに質問していいですか?」
「なんだ?」
「たまたま行った分史世界の時歪の因子が……ユリウス室長のご家族だったら、どうしますか?」
そう聞くと、室長は真剣な表情になって一言
「…斬る」
「……!」
やっぱり、分史世界は偽物って割り切って正史世界が大事って判断しているんだ…
「……躊躇うけどな」
なんて思っていたら優しい笑みに戻って、そう言った
よかった…ユリウス室長でも一応、躊躇うんだ
そうだよね。家族だもの…
「だが、躊躇うのは……家族を愛していたらな」
「えっ…」
そう言えば…そうなりますよね
家族が好きじゃなかったら、斬るなんて簡単にできない…
そう思っていると、ユリウス室長はGHSを見て私に言った
「……と、もうこんな時間か。戻ろうか」
「あ、はい…」
私も時間を見ると、もう少しで昼休みが終わる。お弁当の空箱を片付けて会社に行かないと
「あの、話を聞いて頂いてありがとうございます」
お礼を言うと、「いやいや」と言いながら、こんなので役に立ったかな?みたいな表情で笑った
「また何かあったら聞くぞ」
「はい。本当にありがとうございます」
私はそう言ってユリウス室長とクランスピア社に戻った